えっ!? こんなスキルって嘘でしょ!?

鴻上 紫苑

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本編

27話『約束』

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目を覚ました千隼は、真っ先に康煕を探した。
不思議と気持ち悪さはなく、後処理を彼に任せたまま寝落ちしてしまったのだろう。


「・・・康煕・・・?」


静まり返る室内の中で、じつは異世界に来たのが夢だったんじゃ・・・と思いながら見回してみると、彼がスキルで作りだした豪華なテントだった。
落胆もあるけれど、ここには幼馴染みがいる。不安でも一人じゃない。


「それにしても、変な夢?ううん、懐かしい夢を見たなぁ。あれって、何の約束だったんだろう」


独り言のように呟いていると、パサッと入口から彼が戻ってきた。
康煕は、僕が目を覚ましたことに安堵し隣に座り額にキスを落とした。


「おはよう、ゆっくり眠れたか?」


最初の時と同じように気遣ってくれる優しさに、嬉しさが込み上げてきて心がじんわり温かくなった。


「康煕、おはよう。どこに行ってたの?」
「ん?夜風に当たってた。寂しかったのか?」
「ぅん・・・。起きたら、康煕いなくて怖かった・・・」


強制招待された時に戻った気がして、不安で堪らなかった。
千隼の変なスキルのせいで康煕に迷惑をかけてるというのに、それでもこの世界に二人きりという贅沢に慣れてしまうと、どうしても彼を手放さなければいけないのではという恐怖が付き纏う。
そんな千隼の心を察したのか、康煕は彼の首筋に紅い花びらを印した。


「んっ・・・」


チリっとした小さな痛みの後に、リップ音が聞こえてきた。


「千隼から離れないという印だ」


真っ赤になりながら気になったことを康煕に聞いてみることにした。


「ねぇ、康煕。さっき懐かしい夢を見たんだけど・・・」
「懐かしい夢?」
「うん、小さい頃に康煕の家に初めて泊まりに行った時のことなんだけど」
「ああ、アレか。懐かしいな」
「僕、そのとき康煕と何か約束したようなんだけど思い出せなくて・・・」


眉を八の字にして落ち込む千隼を見て、康煕は頭をポンポンと優しく撫でてくれた。


「内容は覚えてるが、それは大事なことだから頑張って思い出してくれると嬉しいかな」


謎解き気分に言葉を紡ぐが、どれも当たらず、また一日が過ぎていくのだった。













〔なぁ、そろそろ千隼のスキルでレベル上げようぜ・・・。このままだと、康煕と共に草原で年単位で物語終わりそうな気がするんだが・・・〕



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