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本編

25話『懐かしい思い出』その③

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谷仲父の運転で一緒に帰った千隼は、彼に手を繋がれたまま康煕の部屋へ移動した。
彼の部屋は僕の部屋と違い、黒を主張した寝具などが置いてあるシックな部屋だった。


「うわあ、すっごくカッコいい部屋だね!」
「そうか?結城君の部屋は、どんな感じなんだ?」


途端、言葉に詰まる千隼は俯いて答えた。


「僕の部屋は、ママが好きなピンクが多い部屋なの・・・。僕、男の子なのに・・・」
「・・・そうか」


一言だけの返事にぎゅっと服を握ると、ふわっと抱きしめられた。
彼は、帰国子女か何かなのかな。ほとんど初対面なのにも関わらず、さっきも抱きしめられキスをされた。
テレビで見たことがある、外国での挨拶なのだろうか。


「あ、あの・・・」
「ん?」
「どうして、僕のこと抱きしめたり、その・・・」


千隼は疑問に思ったことを口にしたのだが、『キス』という単語がどうしても言えなかった。

(・・・う~、恥かしいよ・・・)

真っ赤になりながら、涙目で一生懸命伝えようとしてることが分かったのだろう。


「あぁ、キス?」


さらに真っ赤になってコクコクと首を振る千隼を見て、本当にこの生き物可愛いなと内心呟いてるとは目の前の彼は気づかないだろう。


「キスも抱きしめも、俺は結城君が好きだからするんだよ。特別な人にしかしちゃいけないんだって、父さんが言ってた」


目が点になるとは、このことだろう。
学校でも近所でも老若男女構わず、彼を好きだとアプローチしてくる人が大勢いる中で、ただのお向かいさんの僕を好きだという。


「えええええ!?」


優しいキスも抱擁も、声をかけてきてくれたのも、全部好きだから・・・?
驚く千隼を見て、彼は喉を鳴らして笑う。


「でもでも、女の子にモテるのにどうして?どうして僕なの?」
「心が綺麗だから」
「え・・・?」


言われた意味が分からなかった。
















〔幼少期に康煕が千隼に挨拶程度のキスなら許されるはず・・・多分・・・〕



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