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本編

14話『驚異のバッグ』

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康煕のバッグから円匙が取り出され、適度な広さの穴を作り始め、広大な草原に石なんてものが転がってるはずもなく、またバッグに手を突っ込み取り出したのは適当な大きさの石だった。


「ねぇ・・・、何でバッグから円匙や石が出てくるの・・・?さっき荷物チェックした時、そんなの無かったよね?」


遭難した時に最低限必要な物しか入っていなかったのだから、疑問に思うのも仕方のないことだと思う。
康煕は、その疑問には答えず黙々と飯盒の準備を進めていた。


「よし、これで準備できた。あとは、米が出来上がるのを待つだけだな」


千隼は、少しだけ康煕が知らない人に思えて寂しい気持ちになっていた。
その寂しい気持ちを千隼がどんなに隠していても彼は見逃さない。


「千隼、どうした?今にも泣きそうな顔して」


そう言うと、康煕は千隼の顔を覗き込んできた。

・・・そう別な意味で顔面凶器と言える端正な顔を・・・

女なら恋に落ちたように惚けてしまい、時には鼻血を出して倒れる者もいるだろう。
また、男なら一部のファン以外は諦めモードになるほど顔面もスタイルも全てにおいて偏差値が高すぎるのだ。
そんな男から大事にされ大切に扱われる千隼は、常に女性から恨み辛みを浴びせられて過ごしてきた。


「康煕、僕に隠し事するの・・・?僕・・・」


大抵の男が陥落する理由は、低身長から繰り出すウルウル上目遣い。

・・・・・・俗に言う男殺しである・・・・・・


「千隼、俺のことを知りたいと思うのは構わない。だが、今は駄目だ。二人しかいないとは限らないだろう?」


軽く窘めるような困った顔で言われてしまい、千隼は涙が止まらず零れ落ちた雫を見られたくなくて俯くと彼が抱き寄せて隠してくれる。
その優しさが千隼には苦しかった。


「ご飯食べるか?」


聞かれ、千隼は返事の代わりに彼の背に回した手に力を籠めるのだった・・・















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