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夢か現か

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外は風が強く窓硝子がカタカタと音を立てて震えている。

どこからか、ふわりと誰かが忍び込んだ冷たい風が流れ込み心細くなっている僕は浅い微睡みから現実へと引き戻された。


「・・・・・・・ぅ~、さむ・・・・・・・」


僕は寒さに耐えられず布団を引き寄せて寝返りをし、うっすらと目を開けると闇の向こう側、部屋のドアが何故か開いたままになっていた。

あれ? おかしいなぁ・・・。 
寝る時、きちんと閉めたはずなのに・・・

僕は、寝ぼけた頭で執事が言った『お部屋に入りましたら、必ず戸締りするようにお願い致します』という言葉を思い出していた。

(あれ・・・・・・? そういや、僕、ちゃんと閉めたっけ・・・・・・? )

そう思いながらも、また眠りに堕ちていきかけた僕の耳に気の所為かと思えるくらい小さな音が聞こえてきた。

それは、柔らかな絨毯の上を歩いてくるような何者かの足音で とても微かだったけれど確かに近付いてくる音。

僕は危険を感じ驚いて身を起こそうとした途端、何者かが圧し掛かり身動き出来なくされてしまった。

(な、なに・・・・・・!?)

硬直する僕の両手首を誰かの手が拘束しベッドに押し付けられた。

手の大きさやごつごつした感じからして、同じ男だということ以外 情報が得られない中では恐怖しかない。


「だ、誰っ・・・!? ぃ、いやだ・・・! 」


体を捩って逃れようと必死に抵抗するも、しっかりと押さえ付けられては身動き一つままならず僕の全身からサァーッと血の気が引いていく。

怖いという気持ちが膨れ上がりカタカタと震えながら、僕の口は勝手に兄の名を呼んでしまう。


「ぅ・・・、しゅ、柊一しゅういち、兄さん・・・。・・・・・・たすけてっ・・・・・・」


その瞬間、ゆっくりと空気の流れが動き僕の鼻孔に覚えのある香りが過ぎる。

これは・・・

(この香りは・・・、兄さん・・・? )


「・・・紫呉しぐれ・・・」


そして、耳元で囁かれた声は紛れもなく兄の声。


「・・・柊一、兄さん・・・? 」







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