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二章 新学期、新たな出会い編

50話 「エンカウント」

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「おー…いっぱい服がありますね~」

「そーだな」

柊は男物の服を見て目を輝かせる。

「如月君はどういう服が好きなんですか?」

「こういう奴」

そう言って俺はブカブカのパーカーを手に取った。
柊ははぁ…と溜め息を吐く。

「あのですね如月くん。 パーカーを悪いとは言いませんが、流石に如月君はパーカーを着すぎです」

「んな事言われてもなぁ…何が似合うかとかわかんねぇし」

俺は春樹や八神みたいにオシャレなわけじゃないしなぁ…

「如月くんは意外と背が高いですし、細いので似合う服は多いと思うんですよね」

確かに俺の身長は175cmで平均より少し上だが、春樹は178cmだし八神に至っては180cm超えてるし、あんまり自分が大きいって言う自覚はない。

俺の前では柊がいろんな服を手に取り悩んでいる。

「如月君はジャケットとかカーディガンとか似合いそうなんですよね」

柊は黒のジャケットと濃いグレーのロングカーディガンを手に取る。
どちらも七部丈なので夏でも暑くなさそうだ。

「パンツは黒が合いそうなので、あとはこれに白いインナーを合わせれば…」

柊がジャケットとロングカーディガンに合いそうなインナーを選ぶ。

「あまり派手な色だと違和感が出ちゃうので、如月くんなら大人っぽい服の方が似合うと思います! どうでしょう?」

柊は俺に服を見せてくる。

確かにどちらも俺が着ない服だ。

「分かった。 んじゃ買ってくる」

「え…!? し、試着は…!?」

「いつもしてないから良いかなって」

「さ、流石に初めて買う系統の服は試着した方がいいと思いますよ…?」

「そうか? じゃあ試着してくるか」

俺が言うと、柊は嬉しそうに頷いた。

「はい!じゃあまずはこっちから着てみてくださいっ」

柊は白いインナーと濃いグレーのロングカーディガンを渡してくる。

2枚の服を受け取り、カーテンを閉める。
試着室の中って意外と狭いんだな…

そう思いながら着替える。
上着だけだからそんなに時間はかからず、着替え終えて鏡を見ると、そこには知らない人間が映っていた。

顔も髪型も俺なのに、服だけがオシャレになるってへんな感じだな…と思いながらカーテンを開けると、目の前で柊が目を見開いた。

「良いじゃないですか!似合ってます!」

「そうか?」

柊は何度も頷く。

「如月君じゃないみたいです!」

「それはなんか複雑だな…」

「褒め言葉ですよ! はいっ!じゃあ次はこっちです! 白いインナーは同じ物を2枚買うので、ジャケットだけを着て下さい」

「はいよ」

柊はそう言って黒のジャケットを渡してくる。

カーテンを閉めて着替えると、ジャケットという事でカーディガンとは違い、やはり動きやすさは激減した。

だが、鏡に映る俺はパーカーを着ている俺とはまるで別人だった。

服ってすげぇなぁ…と思いながらカーテンを開ける。

「おぉ…」

柊は俺の姿を見て固まっていた。

「…似合わなかったか?」

俺が言うと、柊は何度も首を横に振って否定する。

「あまりに似合いすぎてるので…ちょっとびっくりしちゃって」

「やっぱりそんなに違うのか」

「はい…! とてもカッコいいです!」

「…ありがとな」

柊に面と向かって言われ、流石に照れてしまう。

逃げるようにカーテンを閉め、元の服に着替えると、柊は俺からジャケットとインナーを奪い取った。

「では、お会計してきますね?」

「…は!? いやいや、俺が…」

「日頃のお礼ですっ」

柊はそう言って俺を置いてレジに行ってしまった。

いや…今日お前への感謝のつもりで来たんだけどな…

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「いい買い物が出来ましたね~」

「…なぁ、やっぱり金払わせてくれ」

「言ったでしょう? 日頃のお礼ですって」

「俺がお前に感謝する事はあっても、お前が俺に感謝するような事はないだろ」

「何を言ってるんですか。 良いから素直に受け取って下さい」

「はぁ…訳わかんねぇ」

そう言うと、柊は笑顔になった。

「さて、もう17時ですし帰りましょうか」

「食材は買わなくていいのか?」

「はい。 金曜日に土日の分も買ったので」

「了解。 今日夕飯何?」

「肉野菜炒めにします」

「お~いいな」

「ふふ…最初の方は肉野菜炒めと聞くと一瞬顔を顰めていたのに、如月くんも成長しましたねぇ」

「まぁ美味いからな」

「如月君好みの味付けを見つけられて良かったです」

そう言って俺達デパートを出る。 17時でもう暗くなり始めていたが、流石は夏という事で全然寒くなった。

「さて、遅くなる前に帰りましょうか」

「だな。 …っと、その前に…柊」

「はい?」

俺はデパートを出て少し歩いた所で柊に声をかける。
流石にデパートで渡すのは目立つし、かと言って家で渡すのも恥ずかしい。
だったら帰り途中に渡してしまった方が都合が良い。

「渡したい物がある」

「渡したい物…?」

俺は頷き、バッグを開く。
そして、ラッピングされたネックレスの箱を取り出そうとした時…

「やーっぱり、何かあると思ってたんですよねぇ~」

俺と柊の後ろから、聞き覚えのある声が聞こえた。
その瞬間、俺と柊は一瞬で固まった。

ゆっくり後ろを振り向くと、そこには白いブラウスに灰色の短いチェック柄のスカートを履いた桃井が立っていた。

「如月先輩、渚咲先輩。 こんばんは~♪」
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