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二章 新学期、新たな出会い編

33話 「正反対の2人」

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「柊さんじゃん、如月もいるし。 何?やっぱり付き合ってんの?」

「他に七海さんと海堂さんが居るのが見えませんか? 相変わらず思い込みが激しい方ですね?」

神崎と柊が笑顔で言い合う。
2人とも笑顔だが、2人の背後には鬼神が見える程に怖い。

なんなのこの威圧感。 柊さっきまで笑顔だったじゃん。

「…ごめん、話しかけるべきじゃなかったね…」

「…今更遅いだろ…」

八神が小声で謝ってくるが、もう始まってしまったから仕方がない。

「加奈には昨日ちゃんと言ったんだけどな…」

「まぁ…あの2人は正反対だからな。 根本的に合わないんだろう」

柊達を見ると、未だに笑顔で睨み合っていた。
柊があそこまでなるのは本当に珍しいからな…余程神崎の事が気に入らないんだろう。

「てか、柊さんもゲーセンとか来るんだ? 真面目ぶってるけど、意外とそうでもない感じ?」

「私が何処に居ようが私の勝手でしょう? 」

「ふ~ん…?」

神崎は柊から視線を外し、今度は七海を見る。
七海はビクッと身体を震わせて神崎から目を逸らし、春樹の後ろに隠れた。

七海は神崎みたいな陽キャが苦手だからな…

「あんた知ってるよ。 青葉七海でしょ。 横にいるのは海堂春樹。 柊さんに青葉さんに海堂。 3人とも有名人じゃん?」

その後、神崎は俺の方を見てニヤリと笑う。

「如月あんたさ、この3人と釣り合ってなくない? 何?荷物持ちかなにか?」

「加奈。 それは言い過…」

「いい加減にして下さい」

八神が言い返す前に、柊が言い放った。
柊からは笑顔が消え、今は神崎を睨みつけている。

「貴方は容姿でしか人を判断できないんですか? 良くも悪くも高校生らしい考え方ですね」

「はぁ?」

「まず、如月さんに謝って下さい。 前回の事と、今回の事も含めて」

「なんで私が謝らなきゃ…」

「謝って下さい」

神崎の言葉を遮り、柊が言う。
神崎は急に雰囲気が変わった柊に押されている。

「私は本当の事を言っただけじゃん? 
ていうか、本当はあんたら3人も、如月の事を引き立て役くらいにしか思ってないんでしょ?」

早口で捲し立てる神崎に、とうとう柊がブチギレた。

「貴女は…!いい加減に…!!」

「柊、やめろ」

今にも怒鳴りだしそうな柊を止める。
柊は俺を見て目を見開く。

「なんですか…また我慢ですか…?」

悲しそうな顔をする柊に、俺は小さく笑い、柊を神崎から離し、七海達の近くに連れて行く。
そして、俺は神崎と向かい合う。

「…別に俺はさ、周りの奴らに自分がどう思われようが興味ないんだよ。
人それぞれ考え方は違うからな」

「…はぁ?」

俺の言葉に、神崎は顔をしかめる。

「だけど、俺が悪口を言われる事で、俺の友達は辛い思いをするらしい。
正直、俺にはその気持ちは分からなかった。
だけど、今なら分かる」

俺は、神崎を睨みつける。

「俺の事はボロクソに言っても良いけどな、俺の友達を悪く言うのは辞めろ。
コイツらは引き立て役とか、そんな事を考えるような奴らじゃねぇ」

そう言うと、神崎は鼻で笑った。

「そんなの、なんで分か…」

「分かる。 コイツらの顔を見たら分かるんだよ」

柊だけじゃない。言い返さないだけで、七海も春樹も怒っていた。

そして、八神でさえも怒っていた。

「別に謝れとは言わねぇよ。 ただ、根拠もなく人を馬鹿にするのは辞めろ」

「…俺からもいいか?加奈」

八神が言うと、神崎はビクッと身体を震わせた。

「…さっきから黙って聞いてたけど、流石に度が過ぎるよ。 前に俺が言った事、もう忘れたか?
如月は俺の友達。 俺はそう言ったよな?」

神崎は震えながら頷く。

「じゃあ、俺が友達を馬鹿にされたらどう思うかも、知ってるよな」

神崎は泣きそうになる。

八神って怒るとこうなるんだな…
冷静に捲し立てて行くタイプか…

「なら、どうすればいいと思う?」

八神は笑顔で言う。
すると、神崎は俺達に頭を下げてきた。

「ご…ごめん…なさい…」

あの女王様でも、王子様には勝てないらしい。
素直にいう事を聞いて謝罪をする神崎に、俺達4人は苦笑いをする。

「俺からも謝るよ。 今回こうなった原因は俺が話しかけたせいだしね。
本当にすまない」

神崎と共に、八神も頭を下げる。

その後、八神は神崎を連れて何処かへ去って行った。

「ふぅ…疲れた」

俺は力無く自動販売機の前に置いてある休憩用の椅子に座る。

「…如月くん」

柊は、不安そうな顔で俺を見る。

「柊、今回も言い返してくれてありがとな」

「…こちらこそ、言い返してくれてありがとうございました」

柊はペコリと頭を下げてくる。

「正直、また言い返さずに我慢するのかと思ってました」

「私も思った」

「僕も同じだね」

「お前ら…どんだけ信用されてないんだよ俺は」

落ち込む俺を見て、柊は笑った。
そして、柊は元気よく立ち上がる。

「もう少しだけ遊んで行きましょう? 私、あの車のゲームやってみたいです!」

柊の提案に賛同し、俺達は柊と共に歩き出した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

あれから時間が経ち、今、俺は新しく飲み物を買いに行き、春樹はトイレに行っているのだが、飲み物を買って2人が待つ場所に戻ると、俺は先程の選択を後悔した。

柊と七海はかなりの美少女だ。
そんな奴らを、2人きりにするべきじゃなかった。

「良いじゃん俺達と遊ぼうよ!ね?」

「ですから…私達には待っている人が…」

ゲーセンという事で、かなり柄の悪い男2人にナンパされていた。
柊はなんとか拒否しているが、人見知りの七海は完全にびびってしまっている。

春樹もいないし、ここは俺が行くしかないだろう。

「柊、七海」

2人に声をかけると、2人の顔が明るくなった。
それとは真逆に、ナンパしていた男2人は俺を睨みつけた。

「何、お前がこの子達のツレ?」

「何この地味な奴。 こんなのより俺達と遊ぼーよ」

男達は無理矢理柊達の手を掴む。
マズイな、ここは強引にでも2人の手を引いて走るしか…

「ナンパとかキモすぎんだけど。 目障りだから他所でやってくんない?」

突然、神崎が声をかけてきた。
どうやらまだゲーセン内に居たらしい。

「あと、そこ邪魔だからどいて。 私そのクレーンゲームやりたいから」

「おぉ、君も可愛いじゃん! 3人とも一緒に…」

めげずに神崎にもナンパする男に、俺は素直に感心してしまう。
神崎は鼻で笑う。

「あんたらみたいな男、私に釣り合わないでしょ。 柊さん達にも釣り合ってないから、とっとと帰れば?」

煽るように言うと、男達はイラついたのか、顔をしかめる。

「店員さんこっちです」

近くで八神と春樹の声が聞こえたのでそちらを見ると、2人が店員をつれてきていた。

ナンパ男2人は店員に何処かへ連れて行かれ、その場には先程の6人が残る。

「柊さんさ、ああいう時はもっと強く拒否んなきゃダメっしょ? 青葉さんもびびってないで、強気に構えなきゃ」

「は、はい」

「…はい」

神崎にダメ出しをされ、柊と七海は頷く。
そして、次に神崎は俺の胸を叩く。

「アンタは1番しっかりしなきゃダメっしょ男なんだから。 さっき私に言い返したみたいに強気に行かないと」

「お、おぉ…?」

なんだ…?なんか神崎の雰囲気がさっきと違う気が…

そんな事を思っていると、八神が察したのか、小さく笑った。

「本来ならね、加奈はとても良い子なんだ。 ただ周りに流されやすいのと、プライドが高すぎる所があってね。
だから今回の件もヒートアップしちゃっただけなんだ」

なるほど、だからヒートアップして柊との口論をやめられなくなってしまったのか。

「加奈はずっと自分が悪いんだって分かってたんだよ。 ね?加奈」

「……」

諭すように言う八神に、神崎は顔を背ける。

嫌な奴だとは思ったが、ただ素直になれない奴だったらしい。

さっきも助けてくれたしな。

「ナンパされてるのを見て、俺は店員を呼びに行こうとしたんだけど、加奈はすぐに走っていったもんね」

「ちょ…! 天馬それは…!」

恥ずかしそうに顔を赤らめる神崎に笑うと、神崎に睨まれた。

こっわ…

「…神崎さん。 私、貴女の事嫌な人だと思ってました」

ゆっくりと、柊が喋る。
そして、神崎に頭を下げた。

「先程は助けてくれてありがとうございます。 そして、色々言いすぎました。ごめんなさ…」

「謝んないで」

謝ろうとする柊の言葉を、神崎は遮った。

「最初に言っとくけど、私あんたの事嫌いだから。 今回助けたのは今までのお詫び。 だから頭なんて下げないでよ気持ち悪い」

神崎が言うと、柊がムッとした顔になる。

「き、気持ち悪いとはなんですか…! 」

「実際にそう思ったから言っただけだけど? 1回助けただけで掌返すとか単純すぎない?」

「な…! やっぱりあなたは嫌な人です!」

「嫌な人で結構~」

また言い合いが始まってしまったが、今回の言い合いは先程の言い合いとは違い、笑いながら見れた。

性格も考え方も正反対な2人だが、柊にとって、七海とは違うタイプの知り合いになれるのかもしれないなと、2人を見て思った。
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