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一章 女神様と同居編
12話 「女神様のワガママと、夢」
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「…なんで撫でるのやめるんですか」
「いや勉強…」
「いつでも出来るじゃないですか」
「撫でるのもいつでも出来るだろ…?」
「私は今撫でて欲しいです」
勉強をする為に自室に行くと、後ろをトコトコとついてきた柊が不機嫌になった。
プクーという効果音がつきそうなくらい頬を膨らませており、中々に可愛らしい。
「分かった分かった。気がすむまで撫でますよ」
頭を撫でてやると、柊は笑顔になった。
過去の話をする前とは大違いだな本当に…
まぁ可愛いから良いけども。
多分今は過去話をした事と泣いた事もあり、テンションがおかしくなっているんだろう。
だからこの甘えモードが解けた時はどうなるのかを想像しながら、俺は苦笑いをした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あの…ごめんなさい」
あれから30分程経ち、今目の前では柊が顔を真っ赤にしてベッドに座っている。
甘えモードが解け、冷静になったらしい。
「どうした?もう撫でなくていいのか?」
俺がニヤニヤしながら言うと、柊は勢いよく顔を背けた。
「か、からかわないで下さい…! もう最悪です…」
そう言いながらも自室には帰らない柊に、俺は笑みが溢れる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「柊、今日の昼ご飯なに?」
勉強をしながら柊に問う。
今の時刻は11時30分、先程から柊はベッドの上で昨日の漫画の続きを読んでいる。
「ボロネーゼにしようかと思ってます。 嫌いではないですか?」
「パスタ大好きだから大賛成だな」
「それは良かったです。 じゃあ作ってきますね」
「おう。楽しみにしてる」
そう言うと、柊は漫画を本棚に片付け、部屋を出て行った。
さて、勉強頑張るか。
目指せハンバーグ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
12時なり、柊が呼びに来たのでリビングに向かう。
すると、テーブルの上には店で出されるのと遜色がないボロネーゼが置いてあった。
「おぉ美味そう」
「ありがとうございます。粉チーズはお好みでどうぞ」
キッチンのフライパンを見るに、市販のボロネーゼのソースは使わずに、自作で作ったのだろう。
相変わらず手が混んでいる。
「「いただきます」」
口に入れると、ひき肉とたまねぎにソースが絶妙に合わさり、そこにパスタが加わってとても美味しかった。
本当にこんな物を作れる柊を尊敬する。
「美味いなぁ」
「ありがとうございます」
「毎日幸せだわ本当に」
「そ、そこまで言いますか」
実際に幸せだから嘘ではない。
家が全焼した時は自分の運のなさを呪おうかと思ったが、それもこれも今この状況のためだったのかもしれないと思えてきた。
ボロネーゼを食べ終え、皿を洗っていると、柊が隣に来た。
「如月くんもお皿洗いに慣れてきましたね」
「皿洗いに慣れとかあるか?」
「ありますよ? 言ってませんでしたが、最初の方は洗い落とせてない汚れが酷くて、如月くんがお風呂に入っている間に私が洗い直してました」
「え、マジで?」
「まじです」
衝撃の事実に目を見開く。
これからはもっと念入りに洗おうと決意した。
「あ…あの…」
「ん?」
皿を念入りに洗っていると、隣で柊が口を開いた。
「さ、さっき言ってた話…」
「さっき…?」
さっきと言うと、柊の家族の話か…?
「その…趣味とか…特技とか…何も知らないので…」
「あぁ、なるほど」
柊は顔を赤くして言う。
そんなに照れる事でもないだろうに。
皿洗いを終わらせ、2人でソファに座る。
「まずは誕生日からにしましょう」
「分かった。俺の誕生日は10月9日だ」
「ちょっと待ってください」
「なんだ?」
「き、昨日じゃないですか…!!」
俺と柊が初めて会ったのが10月1日。今日は10月10日だ。
俺からしたらどうでもいい事なのだが、何故柊はこんなに動揺しているのだろうか。
「な、なんで言ってくれないんですか!」
「いや、聞かれなかったし、俺が祝ってくれって言うタイプに見えるか?」
「見えないですけど…」
「だろ?」
「でも…誕生日祝いたかったです…その日一緒にいたのに…」
露骨に落ち込む柊に、罪悪感が生まれてしまう。
「…じゃあ来年祝ってくれ」
そう言うと、柊はバッと顔を上げた。
「はい!絶対お祝いします!」
「ん。 んで、次は特技だな。 特技はー…なんだ?」
「知らないですよ…」
改めて考えると俺特技無いな。
柊なら料理、春樹なら機械弄り、七海なら歌…など、他人なら思い浮かぶが、自分となると全く浮かばない。
「んじゃ特技は無しで。 趣味はー…なんだ、漫画読む事?」
「それも疑問系なんですか…」
「すまんな。 適当に生きてきたから趣味特技とか思いつかないんだ」
「じゃあ、これから出来るといいですね」
「だな。 次は柊の番だぞ」
「はい。 まず、私の誕生日は12月25日です」
「お、俺は祝えるな」
そう言うと、柊は驚いた顔をした。
「え、祝ってくれるんですか」
「そりゃ祝えるなら祝うさ。 世話になってるし」
「あ、ありがとうございます」
親からの愛情を知らないと言う事は、誕生日を祝われた事もないのだろう。
その日は盛大に祝ってやろう。
「次に特技ですが、特技は料理ですかね」
「だろうな」
「趣味は…内緒です」
「えっなんだ内緒って」
「恥ずかしいので内緒です」
まぁ、内緒というなら深くは聞かないでおこう。
「…さて、終わったが、あとなんか聞きたい事とかあるか?」
「んー…好きな料理とか?」
「俺はハンバーグだな」
「私は…私、はー…」
柊にしては珍しく歯切れが悪い。
そして、顔を赤くしながら言った。
「目玉焼き…です」
「お前は本当にズルいわ」
そんな事言われたら頭撫でたくなっちゃうだろ。
「次だ次。 なんかないか」
「んー、将来の夢とか」
「将来の夢かぁ。めっちゃやばい事言っていいか」
「ど、どうぞ?」
「優秀な奥さんと結婚して、働かずに暮らしたい」
「うわぁ…」
柊は露骨に顔を引き攣らせた。
「優秀な大学に入ればそれだけ優秀な人間がいるだろ? だからその中で俺を養ってくれそうな神様のような人を見つけるのが夢かな」
「夢ってもっとキラキラした物かと思ってました」
「そういう柊はどうなんだ」
「私は普通ですよ? 本心から愛せる人と結婚して、子供にも恵まれて、ずっと笑顔が絶えない日々を過ごしたいですね」
「お、おぉ…」
柊の過去を聞いた後だからか、その夢が非常に重たい。
話す順番が逆だったら、俺はあんな夢は語らなかっただろう。
「なんか相手に求める物とかあるのか?」
「んー…特にはないですね。 容姿で相手を決める事は絶対に無いですし、最低限の清潔感と、常識のある方なら。
あとは素の私を好きになってくれる人がいいですね」
「…意外と基準低いんだな」
「そうですか? 私かなりめんどくさいタイプだと思うので、中々素の私を認めてくれる人は現れないと思います」
「そういうもんか」
「そういう物ですよ。 如月くんは?」
「俺か、俺は料理上手くて、しっかりしてて、俺より優秀な人が良いかな」
「プライドはないんですか…」
「馬鹿かお前。プライドなんて持ってたらあんな夢語らないだろ」
断言する俺に、柊ははぁ…とため息をついた。
「でも柊が将来結婚したら、その夫は幸せだろうな」
「え、どうしてですか?」
「だって料理は超美味いし、しっかりしてるだろ? あとお前老けても綺麗そうだし」
「そ、そうですか?」
「将来の夫には悪いが、今のうちに柊の料理を沢山食べておく事にしよう」
「私は日々料理本を読んでいるので、きっと数年後は今より数倍美味しくなってると思いますよ」
「うわマジかよ、今より美味しかったらもう金出すレベルだぞ」
そう言うと、柊は笑った。
そして、柊は「あっ」と言葉を漏らした。
「そういえば、もうこの際ハッキリさせちゃいましょう」
「なにを?」
柊は、俺と自分を指さす。
「私と如月くんの関係です」
「あーあれか」
「あれ、私的に結構ショックでした。 私はもう如月くんと友達だと思ってたのに…」
「すまんな、俺がそういうのめんどくさいタイプでな」
「…なるほどです」
柊は、不安そうな目で俺を見る。
「…それで、もうお互い自己紹介はしましたし、私もこれからはなるべく素を如月くんに見せるようにします。 …どうでしょうか…?」
上目遣いで見られ、一瞬たじろいでしまう。
「と、友達なんじゃ…ねぇの…かな」
緊張からか情けない喋り方になってしまった。
柊を見ると、柊は口に手を当て、顔を逸らして笑いを堪えていた。
「おい」
「ご、ごめんなさい。 ちょっと面白くて」
「…勉強してくる」
そう言うと、柊はまた笑った。
「後で漫画読みにいきますね」
「勝手にしろ」
笑っている柊を無視し、俺は部屋に戻った。
「いや勉強…」
「いつでも出来るじゃないですか」
「撫でるのもいつでも出来るだろ…?」
「私は今撫でて欲しいです」
勉強をする為に自室に行くと、後ろをトコトコとついてきた柊が不機嫌になった。
プクーという効果音がつきそうなくらい頬を膨らませており、中々に可愛らしい。
「分かった分かった。気がすむまで撫でますよ」
頭を撫でてやると、柊は笑顔になった。
過去の話をする前とは大違いだな本当に…
まぁ可愛いから良いけども。
多分今は過去話をした事と泣いた事もあり、テンションがおかしくなっているんだろう。
だからこの甘えモードが解けた時はどうなるのかを想像しながら、俺は苦笑いをした。
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「あの…ごめんなさい」
あれから30分程経ち、今目の前では柊が顔を真っ赤にしてベッドに座っている。
甘えモードが解け、冷静になったらしい。
「どうした?もう撫でなくていいのか?」
俺がニヤニヤしながら言うと、柊は勢いよく顔を背けた。
「か、からかわないで下さい…! もう最悪です…」
そう言いながらも自室には帰らない柊に、俺は笑みが溢れる。
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「柊、今日の昼ご飯なに?」
勉強をしながら柊に問う。
今の時刻は11時30分、先程から柊はベッドの上で昨日の漫画の続きを読んでいる。
「ボロネーゼにしようかと思ってます。 嫌いではないですか?」
「パスタ大好きだから大賛成だな」
「それは良かったです。 じゃあ作ってきますね」
「おう。楽しみにしてる」
そう言うと、柊は漫画を本棚に片付け、部屋を出て行った。
さて、勉強頑張るか。
目指せハンバーグ。
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12時なり、柊が呼びに来たのでリビングに向かう。
すると、テーブルの上には店で出されるのと遜色がないボロネーゼが置いてあった。
「おぉ美味そう」
「ありがとうございます。粉チーズはお好みでどうぞ」
キッチンのフライパンを見るに、市販のボロネーゼのソースは使わずに、自作で作ったのだろう。
相変わらず手が混んでいる。
「「いただきます」」
口に入れると、ひき肉とたまねぎにソースが絶妙に合わさり、そこにパスタが加わってとても美味しかった。
本当にこんな物を作れる柊を尊敬する。
「美味いなぁ」
「ありがとうございます」
「毎日幸せだわ本当に」
「そ、そこまで言いますか」
実際に幸せだから嘘ではない。
家が全焼した時は自分の運のなさを呪おうかと思ったが、それもこれも今この状況のためだったのかもしれないと思えてきた。
ボロネーゼを食べ終え、皿を洗っていると、柊が隣に来た。
「如月くんもお皿洗いに慣れてきましたね」
「皿洗いに慣れとかあるか?」
「ありますよ? 言ってませんでしたが、最初の方は洗い落とせてない汚れが酷くて、如月くんがお風呂に入っている間に私が洗い直してました」
「え、マジで?」
「まじです」
衝撃の事実に目を見開く。
これからはもっと念入りに洗おうと決意した。
「あ…あの…」
「ん?」
皿を念入りに洗っていると、隣で柊が口を開いた。
「さ、さっき言ってた話…」
「さっき…?」
さっきと言うと、柊の家族の話か…?
「その…趣味とか…特技とか…何も知らないので…」
「あぁ、なるほど」
柊は顔を赤くして言う。
そんなに照れる事でもないだろうに。
皿洗いを終わらせ、2人でソファに座る。
「まずは誕生日からにしましょう」
「分かった。俺の誕生日は10月9日だ」
「ちょっと待ってください」
「なんだ?」
「き、昨日じゃないですか…!!」
俺と柊が初めて会ったのが10月1日。今日は10月10日だ。
俺からしたらどうでもいい事なのだが、何故柊はこんなに動揺しているのだろうか。
「な、なんで言ってくれないんですか!」
「いや、聞かれなかったし、俺が祝ってくれって言うタイプに見えるか?」
「見えないですけど…」
「だろ?」
「でも…誕生日祝いたかったです…その日一緒にいたのに…」
露骨に落ち込む柊に、罪悪感が生まれてしまう。
「…じゃあ来年祝ってくれ」
そう言うと、柊はバッと顔を上げた。
「はい!絶対お祝いします!」
「ん。 んで、次は特技だな。 特技はー…なんだ?」
「知らないですよ…」
改めて考えると俺特技無いな。
柊なら料理、春樹なら機械弄り、七海なら歌…など、他人なら思い浮かぶが、自分となると全く浮かばない。
「んじゃ特技は無しで。 趣味はー…なんだ、漫画読む事?」
「それも疑問系なんですか…」
「すまんな。 適当に生きてきたから趣味特技とか思いつかないんだ」
「じゃあ、これから出来るといいですね」
「だな。 次は柊の番だぞ」
「はい。 まず、私の誕生日は12月25日です」
「お、俺は祝えるな」
そう言うと、柊は驚いた顔をした。
「え、祝ってくれるんですか」
「そりゃ祝えるなら祝うさ。 世話になってるし」
「あ、ありがとうございます」
親からの愛情を知らないと言う事は、誕生日を祝われた事もないのだろう。
その日は盛大に祝ってやろう。
「次に特技ですが、特技は料理ですかね」
「だろうな」
「趣味は…内緒です」
「えっなんだ内緒って」
「恥ずかしいので内緒です」
まぁ、内緒というなら深くは聞かないでおこう。
「…さて、終わったが、あとなんか聞きたい事とかあるか?」
「んー…好きな料理とか?」
「俺はハンバーグだな」
「私は…私、はー…」
柊にしては珍しく歯切れが悪い。
そして、顔を赤くしながら言った。
「目玉焼き…です」
「お前は本当にズルいわ」
そんな事言われたら頭撫でたくなっちゃうだろ。
「次だ次。 なんかないか」
「んー、将来の夢とか」
「将来の夢かぁ。めっちゃやばい事言っていいか」
「ど、どうぞ?」
「優秀な奥さんと結婚して、働かずに暮らしたい」
「うわぁ…」
柊は露骨に顔を引き攣らせた。
「優秀な大学に入ればそれだけ優秀な人間がいるだろ? だからその中で俺を養ってくれそうな神様のような人を見つけるのが夢かな」
「夢ってもっとキラキラした物かと思ってました」
「そういう柊はどうなんだ」
「私は普通ですよ? 本心から愛せる人と結婚して、子供にも恵まれて、ずっと笑顔が絶えない日々を過ごしたいですね」
「お、おぉ…」
柊の過去を聞いた後だからか、その夢が非常に重たい。
話す順番が逆だったら、俺はあんな夢は語らなかっただろう。
「なんか相手に求める物とかあるのか?」
「んー…特にはないですね。 容姿で相手を決める事は絶対に無いですし、最低限の清潔感と、常識のある方なら。
あとは素の私を好きになってくれる人がいいですね」
「…意外と基準低いんだな」
「そうですか? 私かなりめんどくさいタイプだと思うので、中々素の私を認めてくれる人は現れないと思います」
「そういうもんか」
「そういう物ですよ。 如月くんは?」
「俺か、俺は料理上手くて、しっかりしてて、俺より優秀な人が良いかな」
「プライドはないんですか…」
「馬鹿かお前。プライドなんて持ってたらあんな夢語らないだろ」
断言する俺に、柊ははぁ…とため息をついた。
「でも柊が将来結婚したら、その夫は幸せだろうな」
「え、どうしてですか?」
「だって料理は超美味いし、しっかりしてるだろ? あとお前老けても綺麗そうだし」
「そ、そうですか?」
「将来の夫には悪いが、今のうちに柊の料理を沢山食べておく事にしよう」
「私は日々料理本を読んでいるので、きっと数年後は今より数倍美味しくなってると思いますよ」
「うわマジかよ、今より美味しかったらもう金出すレベルだぞ」
そう言うと、柊は笑った。
そして、柊は「あっ」と言葉を漏らした。
「そういえば、もうこの際ハッキリさせちゃいましょう」
「なにを?」
柊は、俺と自分を指さす。
「私と如月くんの関係です」
「あーあれか」
「あれ、私的に結構ショックでした。 私はもう如月くんと友達だと思ってたのに…」
「すまんな、俺がそういうのめんどくさいタイプでな」
「…なるほどです」
柊は、不安そうな目で俺を見る。
「…それで、もうお互い自己紹介はしましたし、私もこれからはなるべく素を如月くんに見せるようにします。 …どうでしょうか…?」
上目遣いで見られ、一瞬たじろいでしまう。
「と、友達なんじゃ…ねぇの…かな」
緊張からか情けない喋り方になってしまった。
柊を見ると、柊は口に手を当て、顔を逸らして笑いを堪えていた。
「おい」
「ご、ごめんなさい。 ちょっと面白くて」
「…勉強してくる」
そう言うと、柊はまた笑った。
「後で漫画読みにいきますね」
「勝手にしろ」
笑っている柊を無視し、俺は部屋に戻った。
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