4 / 7
一章 シガナ村での日々
4話 「ただいま日本」
しおりを挟む
水車が完成してから3日が経った。
水路が完成してからは、水に泥が混じり、とても飲み水には使えなかったが、何回も排水を繰り返し、ようやく透明で綺麗な水になった。
これなら飲み水に使えるだろう。
「さて、次は畑ですね。 種はありますか?」
「はい!あちらの小屋に保管しています!」
ソニアさんに言われ、小屋を見ると、中には種が入った袋とクワが置かれていた。
初めて小屋に来た時は焦っていたのと、夜で暗かったからよく見えなかったからな。
…あれ…?
「あの…ソニアさん、肥料ってどこにあります?」
「ひりょう…?」
あらあらマジかこりゃ。
肥料も知らないパターンか。
「肥料っていうのは、土をいい土に変えてくれる物の事です。これを使うと、いい植物が育つんです」
「そんな物があるんですね! えっと、その肥料はどうやって…」
それが分からないんだな。これが。
いや、糞が混ざってるって事くらいは知ってるんだが、ほかに何が入ってるのかが分からん。
困ったな…肥料が無くても育つっちゃあ育つが、やはり畑をするなら肥料があった方が役に立つし…
んー…日本から色々持って来れたら良いんだけどな…
そう頭の中で考えていると、突然、俺の身体が光だした。
「な、なんだ…!?」
「え!?ヨウタさん…!?」
「ちょっ…!」
その瞬間、俺の視界が真っ白になった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
目が覚めると、俺は日本の自室に居た。
「……は?」
周りを見るが、そこには村なんてものはなく、あるのは一人暮らしに必要な最低限の家具のみだった。
「は…はは…おいおい…マジか…?」
俺は思わず乾いた笑い声を出す。
まさか、今までのは全部夢だってのか…?
あの村での生活も、達成感も、ソニアさんも…全部夢…?
「ふ…ふざけんな…!!」
俺は目の前にあったテーブルを殴る。
せっかく変われてきたと思ってたんだ。
あの村で…あの世界で、俺は誇らしく生きようって…そう思ってたのに…
「はぁ…あほくさ…コンビニ行くか」
コンビニという単語を発して、ある事を思い出した。
唐揚げ弁当と野菜ジュースだ。
もしあの世界の事が全部夢だったなら、弁当が残っているはず。
部屋を探すが、どこにも弁当はなかった。
つまり…
「俺はあの世界から日本に帰ってきたって事か…? でもなんで急に…?」
何かトリガーがあるはずだ。
こっちから異世界に行った時と、向こうからこっちに来た時、どっちにも条件があるはずなんだ。
少し考えると、それらしい答えに辿り着いた。
だが、これはいくらなんでも簡単すぎる。
まぁ、やってみるか。
"異世界に行きたい"
俺は、頭の中でそう思った。
すると、先程のように身体が光で包まれた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
目を開けると、先程までいた小屋だった。
思った通り、どうやら、俺の願いがトリガーだったらしい。
そしてどうやら、俺のこの部屋と、あの村の小屋は繋がっているらしい。
って事は、これからはいつでも日本と異世界を往復出来るってわけか。
これは便利だ。
「よ、ヨウタさん…!!」
ソニアさんの声で振り向くと、俺は目を見開いた。
ソニアさんが地面に座り込み、泣いていたのだ。
「急に消えたから…!もう会えないのかとっ…!」
確かに、目の前で人が消えたらびっくりするよな…
ソニアさんには悪い事をしてしまった。
「驚かせてしまってすみませんソニアさん。もう会えないなんて事はないから、大丈夫ですよ」
「ほ、本当ですか…?」
俺は頷いた後、頭を撫でる。
数分間撫で続けていると、ようやくソニアさんが泣き止んだ。
そして、恥ずかしくなったのか、さっきから目を合わせてくれない。
「あの…ヨウタさん…?」
「はい?」
「あの…貴方は、何者なんですか…?」
…やっぱりきたか。
目の前で消えて、また帰ってくるなんて普通じゃないもんな…
仕方ない。全て話すか。
「すみませんソニアさん。実は俺、旅人っていうのは嘘なんです。信じられないかもですが、此処とは別の世界からやってきたんです」
「別の世界…」
「はい。正直、何故俺が急にこの世界に来たのかは分かりませんが…」
「なるほど…」
「あ、あれ…驚かないんですか…?」
「いえ、驚いてますよ?でも、やっぱりか。っていう気持ちの方が大きいです。
正直、ずっと考えていたんです。 旅人にしては、文明の知識が違いすぎるし、服装だって全然違うし…」
なるほど、疑われてはいたわけか。
ソニアさんは頭がいいしなぁ…
「この事は2人だけの秘密にしましょう。村の皆に言うと混乱させちゃうかもですし」
ソニアさんが言う。
確かにそうだな、こんな事は言いふらす事でもないし。
「分かりました。じゃあ、秘密で」
「はい!」
日本と異世界を往復出来るとなると…出来る事が増えるな。
向こうの物をこっちに持ってくる事が出来るし、なんなら設計図なんかもネットに載ってるから、それをコピーすればより正確な物が作れるだろう。
「よし。じゃあソニア俺ちょっともう一回向こうの世界に行ってきます」
「えっ…」
ソニアさんがビックリした表情をし、俺の服の袖をぎゅっと掴む。
袖を掴んだ手は震えていた。
「向こうで肥料を買って持って来るだけですよ。大丈夫。すぐに帰ってきますから 」
「ほ、本当ですか…? 」
「大丈夫。信じて下さい」
「分かりました…」
「はい。じゃあ行ってきます」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
日本に行きたいと願うと、本当にまた日本に来ていた。
よし。まずは肥料を買いに行くか。
手に持っている物も一緒に転移するのは確認済みだ。
さて…えっと今の全財産は…家賃や生活費を抜いて5万円程。
ほぼ異世界で生活するから、食費などはかからないから、この5万円は全て異世界の為に使おう。
俺はなけなしの5万円を財布に入れ、ショッピングセンターへ向かった。
ふむ…肥料と言ってもいっぱいあるんだな…
全くの素人だし、店員に聞いてみるか。
「すみません、肥料が欲しいんですけど、おすすめってあります?」
「肥料ですね!何に使うかにもよりますね!食物なのか、花なのか!」
「食物ですね。 あと、その畑は全く肥料を使っていない畑でした」
「でしたらこちらがおすすめです! 栄養をたっぷり含んでいますし、量も十分かと!
使い方も、土に混ぜるだけなので簡単ですよ」
内容量は20kg。値段は3000円か。
「肥料はどのくらいの頻度で撒けばいいんですか?」
「そうですね…初めて肥料を使うお客様はつい多く与えがちですが、じつはそれは逆効果なんです。最悪の場合作物が枯れてしまう。なんて事も考えられます。
ですので、1度目は少なく与え、約1か月くらいしたら、もう一度肥料を与えます。 これを追肥(ついひ)と呼びます」
「追肥…なるほど…」
「追肥のやり方はシンプルで、作物が栄養を吸収しやすいように近くに混ぜるだけで大丈夫です」
「ふむふむ…なるほど、分かりました!」
予想以上に沢山の知識が得られた。
とりあえず肥料は問題ないとして、あとは種だな。
向こうで日本の作物が育つかは分からないから、とりあえず試しておきたい。
そこで候補に上がったのは、
ジャガイモだ。
ジャガイモは調理の幅が広い。 ふかし芋もよし、焼いてもよし、揚げてポテトにするも良し、料理に添えてもよし。
栄養素も高いしカロリーも高い。
俺は種イモと肥料を買い、自宅に帰ってきた。
車があるとはいえ、流石に20kgを持つのはキツかった。
だが、あとはこれを持って村に行くだけだ。
「あ、なんかついでに持っていくか」
向こうでは日本の物は全部初めてのものばかりだ。
だから何かないかなと探してみる。
すると、ポテトチップスを発見した。
これは良いかもしれない。
種イモを育てればこれになるって思えばモチベーションも上がるだろうしな。
俺は備蓄していたポテチを4袋と、肥料と種イモを持ち、異世界に行きたいと願った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…あ!おかえりなさいヨウタさん!」
結構時間が経ったが、どうやらソニアさんはずっと小屋の中で待っていてくれたらしい。
「ただいまです。 肥料とかいろいろ買ってきたので、明日早速実践してみましょう」
「これが肥料なんですね…見た感じ普通の土と変わらないように見えますが…」
「この中にはいろんな物が含まれてるみたいですね」
「なるほど、だから栄養がたっぷりなんですね! この丸いのはなんですか?」
「これは種イモっていって、向こうの世界の食べ物になる前の物です。
これも畑に植えてみようかなって思って」
「ヨウタさんの世界の食べ物…!気になります!」
ソニアさんが目をキラキラさせる。
興味を持ってもらえたみたいで良かった。
俺は肥料と種イモを小屋の中に起き、外に出る。
「あれ、それは置かないんですか?」
「あぁ、これは食べ物です。 皆で食べようかと思って持ってきました」
するとまたソニアさんの目がキラキラと光る。
まず一袋は俺たち3人で食べて、明日村の皆で3袋を食べよう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「これがポテトチップスです」
ソニアさんとガレアさんの前で袋を広げ、中身を見せる。
突然出てきた黄色の物体に、2人ともびっくりしている。
ちなみに、味はコンソメパンチだ。
「こ、これは…初めて見ました…!」
「わしも初めて見ました…これが食べ物…」
俺はヒョイと一個取って、口に運ぶ。
「こうやって食べるんです」
すると、ソニアさんが恐る恐るポテチを一つ手に取り、口に入れる。
その瞬間、目を見開いた。
「お、美味しい…! 味は濃いめなのに、何枚でも食べなくなります…!」
「た、確かにこれは何枚でもいけますな…!」
ソニアさんとガレアさんがそう言い、何枚も食べる。
どうやら気に入ってくれたらしい。
あっという間に一袋食べ終えてしまった。
「残りの3袋は、明日村の皆さんで食べましょう」
「ですね!皆さんにも食べてもらいたいです!」
ソニアさんが賛成し、ポテチの袋を片付ける。
ポテチは手掴みだから手が汚れるので、よく手を洗っておくように伝えたから大丈夫だろう。
「ヨウタ様。ひとつよろしいですか?」
「はい?なんでしょう?」
ガレアさんが話しかけて来る。
「私の記憶では、昨日までヨウタ様は手ぶらでした。今日持ってきていただいた物はどちらから…?」
まぁ来るよなぁこの質問。 ソニアさんも緊張した表情になってるし…
ただ、ここで別の世界の事を話して混乱させるのも違う。
さてどうするか…
「よ、ヨウタさんは魔法が使えるんだって! 物を入れたり出したり出来るらしくて…! 本当はバラしたくなったらしいんだけど、今日私がたまたま見ちゃって…!」
ソニアさんが早口で言う。
ま、魔法って…
いや、ここは異世界だし、魔法とかあるのか…?
にしては、使ってる人1人もいないけども
「なんと!魔法を使える方でしたか!それは凄い!」
あ、魔法あるっぽいわこの世界。
ソニアさんの助け舟でなんとか窮地を脱する事が出来た。
これからはこの質問が来たら魔法です。って言おう。
その次の日、村の皆でポテトパーティーをしたのだが、思った以上に好評だった。
また持って来るかな。
水路が完成してからは、水に泥が混じり、とても飲み水には使えなかったが、何回も排水を繰り返し、ようやく透明で綺麗な水になった。
これなら飲み水に使えるだろう。
「さて、次は畑ですね。 種はありますか?」
「はい!あちらの小屋に保管しています!」
ソニアさんに言われ、小屋を見ると、中には種が入った袋とクワが置かれていた。
初めて小屋に来た時は焦っていたのと、夜で暗かったからよく見えなかったからな。
…あれ…?
「あの…ソニアさん、肥料ってどこにあります?」
「ひりょう…?」
あらあらマジかこりゃ。
肥料も知らないパターンか。
「肥料っていうのは、土をいい土に変えてくれる物の事です。これを使うと、いい植物が育つんです」
「そんな物があるんですね! えっと、その肥料はどうやって…」
それが分からないんだな。これが。
いや、糞が混ざってるって事くらいは知ってるんだが、ほかに何が入ってるのかが分からん。
困ったな…肥料が無くても育つっちゃあ育つが、やはり畑をするなら肥料があった方が役に立つし…
んー…日本から色々持って来れたら良いんだけどな…
そう頭の中で考えていると、突然、俺の身体が光だした。
「な、なんだ…!?」
「え!?ヨウタさん…!?」
「ちょっ…!」
その瞬間、俺の視界が真っ白になった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
目が覚めると、俺は日本の自室に居た。
「……は?」
周りを見るが、そこには村なんてものはなく、あるのは一人暮らしに必要な最低限の家具のみだった。
「は…はは…おいおい…マジか…?」
俺は思わず乾いた笑い声を出す。
まさか、今までのは全部夢だってのか…?
あの村での生活も、達成感も、ソニアさんも…全部夢…?
「ふ…ふざけんな…!!」
俺は目の前にあったテーブルを殴る。
せっかく変われてきたと思ってたんだ。
あの村で…あの世界で、俺は誇らしく生きようって…そう思ってたのに…
「はぁ…あほくさ…コンビニ行くか」
コンビニという単語を発して、ある事を思い出した。
唐揚げ弁当と野菜ジュースだ。
もしあの世界の事が全部夢だったなら、弁当が残っているはず。
部屋を探すが、どこにも弁当はなかった。
つまり…
「俺はあの世界から日本に帰ってきたって事か…? でもなんで急に…?」
何かトリガーがあるはずだ。
こっちから異世界に行った時と、向こうからこっちに来た時、どっちにも条件があるはずなんだ。
少し考えると、それらしい答えに辿り着いた。
だが、これはいくらなんでも簡単すぎる。
まぁ、やってみるか。
"異世界に行きたい"
俺は、頭の中でそう思った。
すると、先程のように身体が光で包まれた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
目を開けると、先程までいた小屋だった。
思った通り、どうやら、俺の願いがトリガーだったらしい。
そしてどうやら、俺のこの部屋と、あの村の小屋は繋がっているらしい。
って事は、これからはいつでも日本と異世界を往復出来るってわけか。
これは便利だ。
「よ、ヨウタさん…!!」
ソニアさんの声で振り向くと、俺は目を見開いた。
ソニアさんが地面に座り込み、泣いていたのだ。
「急に消えたから…!もう会えないのかとっ…!」
確かに、目の前で人が消えたらびっくりするよな…
ソニアさんには悪い事をしてしまった。
「驚かせてしまってすみませんソニアさん。もう会えないなんて事はないから、大丈夫ですよ」
「ほ、本当ですか…?」
俺は頷いた後、頭を撫でる。
数分間撫で続けていると、ようやくソニアさんが泣き止んだ。
そして、恥ずかしくなったのか、さっきから目を合わせてくれない。
「あの…ヨウタさん…?」
「はい?」
「あの…貴方は、何者なんですか…?」
…やっぱりきたか。
目の前で消えて、また帰ってくるなんて普通じゃないもんな…
仕方ない。全て話すか。
「すみませんソニアさん。実は俺、旅人っていうのは嘘なんです。信じられないかもですが、此処とは別の世界からやってきたんです」
「別の世界…」
「はい。正直、何故俺が急にこの世界に来たのかは分かりませんが…」
「なるほど…」
「あ、あれ…驚かないんですか…?」
「いえ、驚いてますよ?でも、やっぱりか。っていう気持ちの方が大きいです。
正直、ずっと考えていたんです。 旅人にしては、文明の知識が違いすぎるし、服装だって全然違うし…」
なるほど、疑われてはいたわけか。
ソニアさんは頭がいいしなぁ…
「この事は2人だけの秘密にしましょう。村の皆に言うと混乱させちゃうかもですし」
ソニアさんが言う。
確かにそうだな、こんな事は言いふらす事でもないし。
「分かりました。じゃあ、秘密で」
「はい!」
日本と異世界を往復出来るとなると…出来る事が増えるな。
向こうの物をこっちに持ってくる事が出来るし、なんなら設計図なんかもネットに載ってるから、それをコピーすればより正確な物が作れるだろう。
「よし。じゃあソニア俺ちょっともう一回向こうの世界に行ってきます」
「えっ…」
ソニアさんがビックリした表情をし、俺の服の袖をぎゅっと掴む。
袖を掴んだ手は震えていた。
「向こうで肥料を買って持って来るだけですよ。大丈夫。すぐに帰ってきますから 」
「ほ、本当ですか…? 」
「大丈夫。信じて下さい」
「分かりました…」
「はい。じゃあ行ってきます」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
日本に行きたいと願うと、本当にまた日本に来ていた。
よし。まずは肥料を買いに行くか。
手に持っている物も一緒に転移するのは確認済みだ。
さて…えっと今の全財産は…家賃や生活費を抜いて5万円程。
ほぼ異世界で生活するから、食費などはかからないから、この5万円は全て異世界の為に使おう。
俺はなけなしの5万円を財布に入れ、ショッピングセンターへ向かった。
ふむ…肥料と言ってもいっぱいあるんだな…
全くの素人だし、店員に聞いてみるか。
「すみません、肥料が欲しいんですけど、おすすめってあります?」
「肥料ですね!何に使うかにもよりますね!食物なのか、花なのか!」
「食物ですね。 あと、その畑は全く肥料を使っていない畑でした」
「でしたらこちらがおすすめです! 栄養をたっぷり含んでいますし、量も十分かと!
使い方も、土に混ぜるだけなので簡単ですよ」
内容量は20kg。値段は3000円か。
「肥料はどのくらいの頻度で撒けばいいんですか?」
「そうですね…初めて肥料を使うお客様はつい多く与えがちですが、じつはそれは逆効果なんです。最悪の場合作物が枯れてしまう。なんて事も考えられます。
ですので、1度目は少なく与え、約1か月くらいしたら、もう一度肥料を与えます。 これを追肥(ついひ)と呼びます」
「追肥…なるほど…」
「追肥のやり方はシンプルで、作物が栄養を吸収しやすいように近くに混ぜるだけで大丈夫です」
「ふむふむ…なるほど、分かりました!」
予想以上に沢山の知識が得られた。
とりあえず肥料は問題ないとして、あとは種だな。
向こうで日本の作物が育つかは分からないから、とりあえず試しておきたい。
そこで候補に上がったのは、
ジャガイモだ。
ジャガイモは調理の幅が広い。 ふかし芋もよし、焼いてもよし、揚げてポテトにするも良し、料理に添えてもよし。
栄養素も高いしカロリーも高い。
俺は種イモと肥料を買い、自宅に帰ってきた。
車があるとはいえ、流石に20kgを持つのはキツかった。
だが、あとはこれを持って村に行くだけだ。
「あ、なんかついでに持っていくか」
向こうでは日本の物は全部初めてのものばかりだ。
だから何かないかなと探してみる。
すると、ポテトチップスを発見した。
これは良いかもしれない。
種イモを育てればこれになるって思えばモチベーションも上がるだろうしな。
俺は備蓄していたポテチを4袋と、肥料と種イモを持ち、異世界に行きたいと願った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…あ!おかえりなさいヨウタさん!」
結構時間が経ったが、どうやらソニアさんはずっと小屋の中で待っていてくれたらしい。
「ただいまです。 肥料とかいろいろ買ってきたので、明日早速実践してみましょう」
「これが肥料なんですね…見た感じ普通の土と変わらないように見えますが…」
「この中にはいろんな物が含まれてるみたいですね」
「なるほど、だから栄養がたっぷりなんですね! この丸いのはなんですか?」
「これは種イモっていって、向こうの世界の食べ物になる前の物です。
これも畑に植えてみようかなって思って」
「ヨウタさんの世界の食べ物…!気になります!」
ソニアさんが目をキラキラさせる。
興味を持ってもらえたみたいで良かった。
俺は肥料と種イモを小屋の中に起き、外に出る。
「あれ、それは置かないんですか?」
「あぁ、これは食べ物です。 皆で食べようかと思って持ってきました」
するとまたソニアさんの目がキラキラと光る。
まず一袋は俺たち3人で食べて、明日村の皆で3袋を食べよう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「これがポテトチップスです」
ソニアさんとガレアさんの前で袋を広げ、中身を見せる。
突然出てきた黄色の物体に、2人ともびっくりしている。
ちなみに、味はコンソメパンチだ。
「こ、これは…初めて見ました…!」
「わしも初めて見ました…これが食べ物…」
俺はヒョイと一個取って、口に運ぶ。
「こうやって食べるんです」
すると、ソニアさんが恐る恐るポテチを一つ手に取り、口に入れる。
その瞬間、目を見開いた。
「お、美味しい…! 味は濃いめなのに、何枚でも食べなくなります…!」
「た、確かにこれは何枚でもいけますな…!」
ソニアさんとガレアさんがそう言い、何枚も食べる。
どうやら気に入ってくれたらしい。
あっという間に一袋食べ終えてしまった。
「残りの3袋は、明日村の皆さんで食べましょう」
「ですね!皆さんにも食べてもらいたいです!」
ソニアさんが賛成し、ポテチの袋を片付ける。
ポテチは手掴みだから手が汚れるので、よく手を洗っておくように伝えたから大丈夫だろう。
「ヨウタ様。ひとつよろしいですか?」
「はい?なんでしょう?」
ガレアさんが話しかけて来る。
「私の記憶では、昨日までヨウタ様は手ぶらでした。今日持ってきていただいた物はどちらから…?」
まぁ来るよなぁこの質問。 ソニアさんも緊張した表情になってるし…
ただ、ここで別の世界の事を話して混乱させるのも違う。
さてどうするか…
「よ、ヨウタさんは魔法が使えるんだって! 物を入れたり出したり出来るらしくて…! 本当はバラしたくなったらしいんだけど、今日私がたまたま見ちゃって…!」
ソニアさんが早口で言う。
ま、魔法って…
いや、ここは異世界だし、魔法とかあるのか…?
にしては、使ってる人1人もいないけども
「なんと!魔法を使える方でしたか!それは凄い!」
あ、魔法あるっぽいわこの世界。
ソニアさんの助け舟でなんとか窮地を脱する事が出来た。
これからはこの質問が来たら魔法です。って言おう。
その次の日、村の皆でポテトパーティーをしたのだが、思った以上に好評だった。
また持って来るかな。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
何者でもない僕は異世界で冒険者をはじめる
月風レイ
ファンタジー
あらゆることを人より器用にこなす事ができても、何の長所にもなくただ日々を過ごす自分。
周りの友人は世界を羽ばたくスターになるのにも関わらず、自分はただのサラリーマン。
そんな平凡で退屈な日々に、革命が起こる。
それは突如現れた一枚の手紙だった。
その手紙の内容には、『異世界に行きますか?』と書かれていた。
どうせ、誰かの悪ふざけだろうと思い、適当に異世界にでもいけたら良いもんだよと、考えたところ。
突如、異世界の大草原に召喚される。
元の世界にも戻れ、無限の魔力と絶対不死身な体を手に入れた冒険が今始まる。
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
異世界楽々通販サバイバル
shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。
近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。
そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。
そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。
しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。
「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる