異世界出身の魔導士は、夢がない

皐月 遊

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二章 見習い魔導士編

17話 「いざ初任務へ」

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「よーし!今日はようやく任務を受けられる日だぞ!早く行こうぜ!!」

次の日、虎太郎達は宿を出て、魔導士協会に向かって歩いていた。

「元気すぎでしょあんた…昨日は朝元気なかったのに…」

「いっぱい食べてぐっすり寝れたからな!」

フランとは別のベッドに寝たため、昨日は快眠が出来たのだ。

宿屋から大分歩くと、魔導士学校と同じ大きさの建物が見えてきた。
入り口の前には門番が立っており、かなり厳重な作りになっている。

「ついたわよ。 ここが魔導士協会。 私達がこれから何度も来る場所よ」

「でっけー…」

シエルについて行き、中に入る。

中はかなり広く、1階は大広間兼受付スペース。2階は下から見た限り、図書館兼酒場のように見えた。

1階にも飲み食いするスペースは多くあり、かなりの人数がいた。

「迷子にならないように、2人とも私から離れちゃダメよ。 特に虎太郎」

こういう事はシエルに任せた方が良いと分かっている虎太郎は、はぐれないようについて行く。

シエルは、受付のお姉さんに話しかけた。

「はじめまして。私達、今日から魔導士になる者です」

そう言うと、受付のお姉さんは笑顔になった。

「お待ちしておりました! えーっと…シエルさんと、虎太郎さんですよね?」

2人は頷く。
その際にフランの事も聞かれたが、付き添いと答えた。

「はい。 では、魔導士証明書を見せて下さい」

虎太郎とシエルは、言われた通りにカードを出す。

お姉さんは、そのカードに書いてある番号をとあるノートに書き記した。

「はい。 これでドラグレア王国魔導士協会への登録は完了致しました。
次に、任務の受注についてお教えしますね」

お姉さんは席から立ち上がると、とあるボードの前に移動した。

そのボードはかなり大きく、ボードにはさまざまな紙が貼られていた。

「ここは依頼ボード、いただいた依頼を貼ってある場所です。
ここはDランクのボードで、他のランクのボードはあちらにあります」

お姉さんの指の方を見ると、確かに同じボードが複数あった。

「ここで自分が受けたい依頼の紙を取り、受付に持ってきてもらえば、依頼受注完了です」

(なるほど…本当にゲームみたいだな…えっと依頼内容は…)

虎太郎は、試しに近くにあった紙をみる。

そこには、
《森に住む巨大熊の討伐。 報酬銀貨5枚》
と書いてあった。

(クマ倒すだけで銀貨…!?)

「ほかに何か質問はありますか?」

「いいえ、特にないです。 ありがとうございました!」

シエルが笑顔でお礼を言うと、お姉さんは戻って行った。

「さて、何を受けましょうかね~」

シエルは、紙を見て悩む。

「ほら、あんたも選びなさいよ。 なるべく簡単かつ報酬が美味しい依頼を選ぶのよ」

「お、おう」

数分程ボードの前で悩んでいると、シエルが決まったのか、笑顔で3枚の紙を取った。

「決まったわ。 これにしましょ」

「お、早いな。 じゃあ、頑張ってこいよー」

虎太郎はそう言うと、またボードとにらめっこを始めた。

すると、シエルに脇腹をつつかれた。
急なくすぐったさに身を捩り、シエルの方を見ると、シエルはジト目で虎太郎を見ていた。

「な、なんだよ」

「いや、ここまで来て一緒に行かないとかいう選択肢ある?」

「え、一緒に行っていいのか? てっきり任務は別にやるものかと」

虎太郎としては、魔導士の事に詳しいシエルが一緒にいてくれる事にはメリットしかない。

だが、シエルにとって虎太郎といる事には対してメリットはないはずだ。

そんな事を考え、虎太郎は別行動を取るつもりだったのだが、シエルは違ったらしい。

「当たり前でしょ。 なんならパーティー組んでもいいわよ。 っていうか組みましょう」

「パーティー?」

「パーティーっていうのは、簡単に言うと、一緒に行動する仲間って意味」

(本当にゲームみたいだな)

「なんか申請とかいるのか?」

「高ランクになると、他に誘われない為に教会に公表してもらう事はあるけど、私達のランクなら必要ないわね」

「なるほどな」

シエルは、近くにあったテーブルに移動し、テーブルの上に紙を3枚並べる。

「今日はこの任務を受けるわよ」

「3枚も受けて大丈夫なのか?」

虎太郎が言うと、シエルはふふんっと自慢げに笑った。

「よーく依頼内容を見てみなさい」

「なになに…?」

虎太郎は依頼内容をみる。

依頼1
【シガド村付近に生息する、クマ型魔獣4体の討伐
報酬・金貨1枚】

依頼2
【クマ型魔獣の魔石の納品依頼。 
報酬・魔石1つにつき銀貨2枚】

依頼3
【クマ型魔獣の肉を3つ納品。
報酬・銀貨4枚】

「クマ型魔獣ばかりだな…」

「そう! つまり、私達はシガド村の近くにいるクマ型魔獣を4体倒すだけで、自動的に3つの依頼が達成できるってわけ」

「なるほどなぁ…」

(だからシエルはあんなにボードと睨めっこしてたのか。
こんな選び方があるとはなぁ…)

「シエル様。 質問がごさいます」

フランが手を挙げる。

「どうしたの?」

「この、魔石というのは何なのでしょうか?」

「あ、確かに俺も気になった」

「あぁそっか。 虎太郎と魔導士じゃないフランは知らないわよね。
魔石はね、教会から特殊な魔法をかけてもらった人が魔獣やデストを倒すと、魔獣やデストからドロップするのよ」

「特殊な魔法…ですか?」

「えぇ。 魔石は武器の精錬や、アクセサリーなどに使われる貴重な物なの。
倒す相手が強ければ強い程、ドロップする魔石の純度も価値も上がるわ」

「特殊な魔法ってのは?」

「今からかけてもらいに行くのよ」

そう言うと、シエルは依頼書を持って受付に行った。

先程のお姉さんは虎太郎達の事を理解している為、すんなりと処理は終わった。

「はい。 では次に、魔石摘出の魔法をかけますね」

お姉さんは手を前に出すと、虎太郎達3人の身体が光った。

「はい。 これで貴方達はこれから魔獣を倒すと、同時に魔石がドロップするようになりましたよ」

「…私にも魔法がかかったのですか?」

フランが首を傾げると、お姉さんは笑顔で頷いた。

「見たところ、貴女も同じパーティーメンバーのようでしたので、同じくかけさせていただきました」

これで虎太郎達の準備は整った。

虎太郎達は、シエルに続いて魔導士教会を出て、シガド村へと向かった。
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