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北の砦の少年兵アトワ

お祭り

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(ハイネが)待ちに待った······祭りの日。

俺は可愛くめかしこんだハイネを見て、外に出していいのか深く深く悩んだ。

······母さんに思い切り頭をはたかれ、しぶしぶ外に出たけど。

ハイネは可愛い。

ふんわり揺れるワンピースの裾や、フリルの縫い付けられた袖、髪を結ぶリボン、全てが付属品でしかない。

レベルが違う。
存在が違う。
何もかもが段違い。
愛してる。

キャラキャラ笑うハイネを連れ、出店を回ることにした。

出店と言っても前前世のような本格的な屋台や、前世の誕生祭のような豪華絢爛なものでは無い。
地べたにシートを敷いて小物を売ったり、借りた屋台でこの日限りの特別メニューを出したり、大抵はそんなものだ。

だが最も目立っているのは、通りを歩いているのが家族や恋人、友人であり、独り身のものがいないこと。

先輩たちは今頃涙を飲んで砦からこちらを眺めているだろう。

可愛いハイネと歩くことに優越感を覚えながら、ハイネと久々に過ごす二人きりの時間(通りの人々は数えない)は過ぎていった。

まさかこれが、ハイネと過ごした最後の日だとは思わずに。

その日は、ゆっくりと終わっていった。
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