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北の砦の少年兵アトワ
北へ
しおりを挟む北へ向かおう。
北は、魔物が多い。
危険で、恐ろしい場所。
そっちに行こう。
そうすれば、この人たちも気にしない。
しばらく忍んで、妻を探そう。
そのあとに、いなければ更に範囲を広げよう。
少なくとも、この国にはいるはずだから。
そう思って、俺のことが嫌いな長男に北について吹き込んだ。
すっかり騙されたそいつは父に言ってはした金を母に握らせ、俺たちを追放した。
頼りない母を連れ、北へと向かう。
途中で小さな魔物を狩って、金に変えた。
足元を見られそうになったが殺気をぶつけたら大人しくなった。
便利だ。
金を使って、できるだけ馬車に乗る。
母さんのためだ。
寝るところを取るためにも、金が必要。
食事はどうにかなった。
それでもやっぱり金は必要だった。
何日も着替えていないぼろ服の母さんは痛ましい。
似てもいないのに妻に重ね合わせていた。
もしも妻がこんな目にあっていたら、生きていけない。
母さんは歌が得意だった。
天使のように歌うので、広場で歌わせた。
投げ銭が凄まじい。
俺は少し笑った。
相変わらず弱い魔物を狩る。
前世とは違って弱々しい肉体だから死にかけもする。
それでもひたすらに北へ向かった。
そうしているうちに足腰が強く、すばしっこくなった。
金にも余裕が出てきた。
頼りない母に預けるのが心配で、金の管理は自分でしている。
そうしていたら母が怪我をした。
仕方が無いのでその町でしばらくをすごした。
金はある。
時間もある。
それでも辛抱たまらないのは何故だろう。
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