8 / 47
北の砦の少年兵アトワ
三度目の俺
しおりを挟む
アトワは父親譲りのアイオライトの瞳に、母親譲りの綺麗な顔をしていた。
前世と前前世を彷彿とさせる顔の良さだ。
自分の顔がいいことには既に慣れた。
もしかしたら妻は面食いなのかもしれないし、こっちの方がいい。
······いや、一目惚れをするくらいだ。
多分面食いだろう。
アトワはまだ五歳。
それなのに父の家の物置で、ぼろぼろの服を着て、母と二人ひもじい思いをしながら生活している。
配給されているはずの食事なんてメイドがつまみ食いするせいで全く残ってない。
母さんは美貌を妬まれ下女以下の扱いで、俺の扱いも······まあ、良くはない。
典型的な貴族の庶子だ。
ここまで前前世で読んだ小説のようだといっそ笑いが込み上げる。
確かこういうのはのちのち俺が強くなってざまぁというのをするんだったか、家に留まる場合もあれば追放されることもある······うちの場合父からの愛もないので後者だろう。
······いや、追放される前に、出ていけばいいのだ。
「アトワ?」
······母も連れていこう。
神に頼んで、今度こそ気がつけるようにしてもらったから、決して見逃す訳には行かない。
······それと最近、莉緒と呼べなくなった。
ソフィーリア様と被って、どちらを愛しているのか分からないのだ。
どちらも愛しているはずなのに、この思考がおかしいと思ってしまう。
どちらかを選べと迫られているようだった。
もちろん同じ人物では無いのは、二度目で痛感した。
それでもやっぱり、根本は同じだったのだ。
前世と前前世を彷彿とさせる顔の良さだ。
自分の顔がいいことには既に慣れた。
もしかしたら妻は面食いなのかもしれないし、こっちの方がいい。
······いや、一目惚れをするくらいだ。
多分面食いだろう。
アトワはまだ五歳。
それなのに父の家の物置で、ぼろぼろの服を着て、母と二人ひもじい思いをしながら生活している。
配給されているはずの食事なんてメイドがつまみ食いするせいで全く残ってない。
母さんは美貌を妬まれ下女以下の扱いで、俺の扱いも······まあ、良くはない。
典型的な貴族の庶子だ。
ここまで前前世で読んだ小説のようだといっそ笑いが込み上げる。
確かこういうのはのちのち俺が強くなってざまぁというのをするんだったか、家に留まる場合もあれば追放されることもある······うちの場合父からの愛もないので後者だろう。
······いや、追放される前に、出ていけばいいのだ。
「アトワ?」
······母も連れていこう。
神に頼んで、今度こそ気がつけるようにしてもらったから、決して見逃す訳には行かない。
······それと最近、莉緒と呼べなくなった。
ソフィーリア様と被って、どちらを愛しているのか分からないのだ。
どちらも愛しているはずなのに、この思考がおかしいと思ってしまう。
どちらかを選べと迫られているようだった。
もちろん同じ人物では無いのは、二度目で痛感した。
それでもやっぱり、根本は同じだったのだ。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】
僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。
※他サイトでも投稿中

最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。
ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。
ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も……
※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。
また、一応転生者も出ます。
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

危害を加えられたので予定よりも早く婚約を白紙撤回できました
しゃーりん
恋愛
階段から突き落とされて、目が覚めるといろんな記憶を失っていたアンジェリーナ。
自分のことも誰のことも覚えていない。
王太子殿下の婚約者であったことも忘れ、結婚式は来年なのに殿下には恋人がいるという。
聞くところによると、婚約は白紙撤回が前提だった。
なぜアンジェリーナが危害を加えられたのかはわからないが、それにより予定よりも早く婚約を白紙撤回することになったというお話です。

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

貴方の事を愛していました
ハルン
恋愛
幼い頃から側に居る少し年上の彼が大好きだった。
家の繋がりの為だとしても、婚約した時は部屋に戻ってから一人で泣いてしまう程に嬉しかった。
彼は、婚約者として私を大切にしてくれた。
毎週のお茶会も
誕生日以外のプレゼントも
成人してからのパーティーのエスコートも
私をとても大切にしてくれている。
ーーけれど。
大切だからといって、愛しているとは限らない。
いつからだろう。
彼の視線の先に、一人の綺麗な女性の姿がある事に気が付いたのは。
誠実な彼は、この家同士の婚約の意味をきちんと理解している。だから、その女性と二人きりになる事も噂になる様な事は絶対にしなかった。
このままいけば、数ヶ月後には私達は結婚する。
ーーけれど、本当にそれでいいの?
だから私は決めたのだ。
「貴方の事を愛してました」
貴方を忘れる事を。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる