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プロローグ

二度目の人生 5

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その日記は、俺への愛で詰まっていた。



俺に一目惚れしたこと。

俺にハンカチを拾ってもらったこと。

そのハンカチを大事に持っていること。

俺の名前が分かった時のこと。

俺の武勇に惚れ惚れしたこと。

俺が英雄になったこと。

それを喜んだこと。

俺の趣味のこと。

俺を近衛にしたこと。

俺がかっこいいこと。

俺が素晴らしいこと。

俺が王女を好きでないこと。

俺が誰かを探していること。

俺が王女を好きにならないこと。

俺の剣を振るう姿が素晴らしいこと。

俺の事を友人に自慢した時のこと。

俺が護衛では無いこと。

俺に早く帰ってきて欲しいこと。

俺に渡したいものがあること。

俺にまだ渡せないこと。

俺が······今日も、目を見てくれないこと。

赤い瞳が、見たいこと。

その声が、聞きたいということ。



気が付いたら泣いていた。

ぼろぼろと涙が零れる。
結婚相手だったはずの隣国の貴族のことなんか欠けらも無い。
ただひたすらに純粋に、俺への愛で詰まっている。

それに、あまりに見覚えがあって。

莉緒の日記も、こうだったと。

「りお······莉緒······」

王子は何も言わなかった。
王女の名前はりおじゃないとも、俺を責めることも、しない。

ただ微笑んで、「ノワは妹が好きだったから」と、そんな、俺でさえ認めなかったことを言った。

「いつもいつも、妹のそばにいたのは君だったから」

「いつもいつも、妹の見つめる先に君がいたから」

「そして君も、妹を見ていたから」

「だから、君に見せたんだよ」

王女······いいえ、ソフィーリア様。

あなたが、莉緒だった。

ソフィーリア様は、ソフィーリア様だったけれど、確かにあなたは莉緒だった。
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