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幸福な御伽噺を

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お兄様との話を切り上げ、今度こそ全員で屋敷に入った。
お兄様が私のお腹を気遣ってくれる。

「・・・あら、もう来てるみたいね」

夫が待っているはずの部屋の中が酷く騒がしいことに気が付き、私は扉を開いた。

「可愛い!エリスは可愛いなぁラナーシュよ」
「ウェングリン!エリスに近付かないでよっ」
「むう、わらわに意見するでないぞラナーシュ!」
「がるる!」
「お前たちいい加減にせぬか・・・む、夫人」

相変わらず大人びた王家の子供たちと犬のような威嚇をするラナーシュに呆れた笑みをこぼす。

ウェングリン姫は私にものすごく懐いてくれていて、「お義母様♡」と抱き着いてきた。
ラナーシュはそんなウェングリン姫をさらに威嚇する。
でもねラナーシュ、お前が望んでいる騎士の道を行くと、多分歳の近いウェングリン姫の護衛になると思うから、もうちょっと仲良くした方がいいと思うの・・・。

彼らがこちらに来ると同時にエリスが寝ているベビーベッドは他の王女様方に侵食された。

その奥で引きつった笑みをしているのがマクシミリアン殿下と皇太子妃殿下だ。
とりあえずここから挨拶。

そして泣き始めたエリスをあやすため、狼狽える姫様たちの隙間から手を差し込んだ。

小さくてふわふわの私の可愛い宝物。
産まれてくる子はもちろん、私の子供たちはみんな可愛いわ。

エリスのそばにいる時は双子でさえも大人しくなる。
私の両側から覗き込む二人に、「お前たちは本当にエリスが好きねぇ」と笑った。

「・・・うん、だってエリスはお母様たちの子だけど」
「僕らの子でもある・・・から?」

・・・うん??

よく分からずに三人で首を傾げ合う。

そうこうしているとエリスがきゃらきゃら笑い始めた。

その愛らしい笑みに目を奪われる。






「エルメ」
「あっ、ステフ」

エリスが笑っているとステフが背後から近寄ってきた。

大きく成長したステフ。
私との体格差は年々大きくなり、今はもう頭一つ分の差がある。

それでもたまに出てくる奴隷根性が楽しいのよね、子供たちのお気に入りだ。

エリスをベビーベッドに戻すとみんな着いてくから楽だわ~。
まあ、皇太子夫妻とお兄様までついて行っているのは面白すぎるけど。

そんな暖かい空間で、ステフにお腹を気遣われながらソファーに座る。



「どうしたの?」
「うーんとさ・・・」

ちょっと照れたように言うステフ。
私の大好きな鮮やかな紫が私を見た。

なんだか妙に照れくさい。

「・・・この間、見つけたんだ・・・」

秘密を囁くように、上擦った声を出す夫を見上げる。
赤くなった頬が可愛い。

「・・・エルメ、この本好きだったでしょ?」
「・・・あ・・・ああ!」

古い絵本の表紙。

灰色の髪に、紫の瞳の女騎士。
美しい精霊と、かっこいい王子様も一緒に描かれているけど、それよりも目を引くのは、彼女の姿で。

「・・・これ、ステファーニエ」
「そう・・・ずっと、言いたかったんだ」

ステフが、幸せそうに、笑う。

「あの時は、言えなかったけど・・・名前、くれてありがとう」

ああ・・・。

「俺、この名前大好きだよ」

誇らしげに、宝物を見せびらかすように・・・いつか見たかった顔が、私の愛する人が。

「・・・こちらこそ、ありがとう」

ああ、あなたが、私と共に笑ってくれるなら。

「私、今すごく幸せ」

だって、あなたが誓ってくれたんだものね。

絶対に幸せにする。って。



~fin~
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