51 / 58
幸福な御伽噺を
しおりを挟む
お兄様との話を切り上げ、今度こそ全員で屋敷に入った。
お兄様が私のお腹を気遣ってくれる。
「・・・あら、もう来てるみたいね」
夫が待っているはずの部屋の中が酷く騒がしいことに気が付き、私は扉を開いた。
「可愛い!エリスは可愛いなぁラナーシュよ」
「ウェングリン!エリスに近付かないでよっ」
「むう、わらわに意見するでないぞラナーシュ!」
「がるる!」
「お前たちいい加減にせぬか・・・む、夫人」
相変わらず大人びた王家の子供たちと犬のような威嚇をするラナーシュに呆れた笑みをこぼす。
ウェングリン姫は私にものすごく懐いてくれていて、「お義母様♡」と抱き着いてきた。
ラナーシュはそんなウェングリン姫をさらに威嚇する。
でもねラナーシュ、お前が望んでいる騎士の道を行くと、多分歳の近いウェングリン姫の護衛になると思うから、もうちょっと仲良くした方がいいと思うの・・・。
彼らがこちらに来ると同時にエリスが寝ているベビーベッドは他の王女様方に侵食された。
その奥で引きつった笑みをしているのがマクシミリアン殿下と皇太子妃殿下だ。
とりあえずここから挨拶。
そして泣き始めたエリスをあやすため、狼狽える姫様たちの隙間から手を差し込んだ。
小さくてふわふわの私の可愛い宝物。
産まれてくる子はもちろん、私の子供たちはみんな可愛いわ。
エリスのそばにいる時は双子でさえも大人しくなる。
私の両側から覗き込む二人に、「お前たちは本当にエリスが好きねぇ」と笑った。
「・・・うん、だってエリスはお母様たちの子だけど」
「僕らの子でもある・・・から?」
・・・うん??
よく分からずに三人で首を傾げ合う。
そうこうしているとエリスがきゃらきゃら笑い始めた。
その愛らしい笑みに目を奪われる。
「エルメ」
「あっ、ステフ」
エリスが笑っているとステフが背後から近寄ってきた。
大きく成長したステフ。
私との体格差は年々大きくなり、今はもう頭一つ分の差がある。
それでもたまに出てくる奴隷根性が楽しいのよね、子供たちのお気に入りだ。
エリスをベビーベッドに戻すとみんな着いてくから楽だわ~。
まあ、皇太子夫妻とお兄様までついて行っているのは面白すぎるけど。
そんな暖かい空間で、ステフにお腹を気遣われながらソファーに座る。
「どうしたの?」
「うーんとさ・・・」
ちょっと照れたように言うステフ。
私の大好きな鮮やかな紫が私を見た。
なんだか妙に照れくさい。
「・・・この間、見つけたんだ・・・」
秘密を囁くように、上擦った声を出す夫を見上げる。
赤くなった頬が可愛い。
「・・・エルメ、この本好きだったでしょ?」
「・・・あ・・・ああ!」
古い絵本の表紙。
灰色の髪に、紫の瞳の女騎士。
美しい精霊と、かっこいい王子様も一緒に描かれているけど、それよりも目を引くのは、彼女の姿で。
「・・・これ、ステファーニエ」
「そう・・・ずっと、言いたかったんだ」
ステフが、幸せそうに、笑う。
「あの時は、言えなかったけど・・・名前、くれてありがとう」
ああ・・・。
「俺、この名前大好きだよ」
誇らしげに、宝物を見せびらかすように・・・いつか見たかった顔が、私の愛する人が。
「・・・こちらこそ、ありがとう」
ああ、あなたが、私と共に笑ってくれるなら。
「私、今すごく幸せ」
だって、あなたが誓ってくれたんだものね。
絶対に幸せにする。って。
~fin~
お兄様が私のお腹を気遣ってくれる。
「・・・あら、もう来てるみたいね」
夫が待っているはずの部屋の中が酷く騒がしいことに気が付き、私は扉を開いた。
「可愛い!エリスは可愛いなぁラナーシュよ」
「ウェングリン!エリスに近付かないでよっ」
「むう、わらわに意見するでないぞラナーシュ!」
「がるる!」
「お前たちいい加減にせぬか・・・む、夫人」
相変わらず大人びた王家の子供たちと犬のような威嚇をするラナーシュに呆れた笑みをこぼす。
ウェングリン姫は私にものすごく懐いてくれていて、「お義母様♡」と抱き着いてきた。
ラナーシュはそんなウェングリン姫をさらに威嚇する。
でもねラナーシュ、お前が望んでいる騎士の道を行くと、多分歳の近いウェングリン姫の護衛になると思うから、もうちょっと仲良くした方がいいと思うの・・・。
彼らがこちらに来ると同時にエリスが寝ているベビーベッドは他の王女様方に侵食された。
その奥で引きつった笑みをしているのがマクシミリアン殿下と皇太子妃殿下だ。
とりあえずここから挨拶。
そして泣き始めたエリスをあやすため、狼狽える姫様たちの隙間から手を差し込んだ。
小さくてふわふわの私の可愛い宝物。
産まれてくる子はもちろん、私の子供たちはみんな可愛いわ。
エリスのそばにいる時は双子でさえも大人しくなる。
私の両側から覗き込む二人に、「お前たちは本当にエリスが好きねぇ」と笑った。
「・・・うん、だってエリスはお母様たちの子だけど」
「僕らの子でもある・・・から?」
・・・うん??
よく分からずに三人で首を傾げ合う。
そうこうしているとエリスがきゃらきゃら笑い始めた。
その愛らしい笑みに目を奪われる。
「エルメ」
「あっ、ステフ」
エリスが笑っているとステフが背後から近寄ってきた。
大きく成長したステフ。
私との体格差は年々大きくなり、今はもう頭一つ分の差がある。
それでもたまに出てくる奴隷根性が楽しいのよね、子供たちのお気に入りだ。
エリスをベビーベッドに戻すとみんな着いてくから楽だわ~。
まあ、皇太子夫妻とお兄様までついて行っているのは面白すぎるけど。
そんな暖かい空間で、ステフにお腹を気遣われながらソファーに座る。
「どうしたの?」
「うーんとさ・・・」
ちょっと照れたように言うステフ。
私の大好きな鮮やかな紫が私を見た。
なんだか妙に照れくさい。
「・・・この間、見つけたんだ・・・」
秘密を囁くように、上擦った声を出す夫を見上げる。
赤くなった頬が可愛い。
「・・・エルメ、この本好きだったでしょ?」
「・・・あ・・・ああ!」
古い絵本の表紙。
灰色の髪に、紫の瞳の女騎士。
美しい精霊と、かっこいい王子様も一緒に描かれているけど、それよりも目を引くのは、彼女の姿で。
「・・・これ、ステファーニエ」
「そう・・・ずっと、言いたかったんだ」
ステフが、幸せそうに、笑う。
「あの時は、言えなかったけど・・・名前、くれてありがとう」
ああ・・・。
「俺、この名前大好きだよ」
誇らしげに、宝物を見せびらかすように・・・いつか見たかった顔が、私の愛する人が。
「・・・こちらこそ、ありがとう」
ああ、あなたが、私と共に笑ってくれるなら。
「私、今すごく幸せ」
だって、あなたが誓ってくれたんだものね。
絶対に幸せにする。って。
~fin~
0
お気に入りに追加
243
あなたにおすすめの小説
私はただ一度の暴言が許せない
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。
花婿が花嫁のベールを上げるまでは。
ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。
「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。
そして花嫁の父に向かって怒鳴った。
「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは!
この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。
そこから始まる物語。
作者独自の世界観です。
短編予定。
のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。
話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。
楽しんでいただけると嬉しいです。
※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。
※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です!
※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。
ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。
今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、
ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。
よろしくお願いします。
※9/27 番外編を公開させていただきました。
※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。
※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。
※10/25 完結しました。
ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。
たくさんの方から感想をいただきました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、
今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきます。
夫の不貞現場を目撃してしまいました
秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。
何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。
そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。
なろう様でも掲載しております。
伝える前に振られてしまった私の恋
メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。
そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。
目が覚めました 〜奪われた婚約者はきっぱりと捨てました〜
鬱沢色素
恋愛
侯爵令嬢のディアナは学園でのパーティーで、婚約者フリッツの浮気現場を目撃してしまう。
今まで「他の男が君に寄りつかないように」とフリッツに言われ、地味な格好をしてきた。でも、もう目が覚めた。
さようなら。かつて好きだった人。よりを戻そうと言われても今更もう遅い。
ディアナはフリッツと婚約破棄し、好き勝手に生きることにした。
するとアロイス第一王子から婚約の申し出が舞い込み……。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
はずれのわたしで、ごめんなさい。
ふまさ
恋愛
姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。
婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。
こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。
そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる