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望まれた幸福を

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「いやぁ、ついにこの日が来ましたねお嬢様!」
「お母様、モートのようなことを言ってお嬢様をこれ以上気負わせないでくださいませ」
「お嬢様、よくお似合いになられております」
「ちょっとレベッカ、今日からは奥様よ」
「あらあら、そうでしたわっ!」
「レベッカ、クラリス、いい加減になさいな・・・お嬢様、大丈夫ですか?」
「・・・緊張する」

顔を青ざめさせならも、純白のドレスに身を包む自分に目線を送る。

古いもの・・・アニーから貰った、アニーが祖父母の時から代々受け継いできた手袋。
新しいもの・・・ステフに貰った真珠の首飾り。
借りたもの・・・妃殿下に貸していただいたベール。
ブーケの花は青いもの・・・は嫌だったので紫にして新しい意味を付けることにした。

新しいサムシングフォー。

・・・これで銀貨を靴に入れる・・・んだっけ?
これってお兄様から貰った知識だからよく分からないけど、靴の中に入れて転んでも嫌なのでやめた。

お金に困らせないって意味だったかしら?残念だけど一生遊んでも使い切れない財産があるのよ。

ああ、あと手袋だが私が譲ってもらっていいのかと聞くと、既にトートは使っていて、子供たちには新しいものを作るから平気なのだそう。
・・・トート、結婚していたの?

そう思っていたら庭師の熊のような男性と貴賤結婚していたそうな。
ちなみに貴族なのが熊のような庭師で、トートが平民だ。
庭師は趣味が高じていつの間にか跡目争いから追い落とされていたそうな。

えー・・・まあ、その、なんて言うか・・・はい。
結婚式、です。

ええっ、待って、私まだ覚悟が・・・。
そうごにょごにょ言っていたら、初夜の前にガツンと言ったれとハッパをかけられた。

ぅぅ、頑張るしかないのね。

参列者は結構すごい。

すごいったらすごい。

語彙力が消し飛んでしまったもの。
なんで各国の要人を招くのよ、皇族じゃないんだけど?

そう言いたいところだが、なんということでしょう。

とっくのとうに私とステフは皇室の戸籍に入っておりました。

妃殿下の企てです。

これを知った時の私たちの顔をぜひ見せたいわ。
もちろん継承権はないんだけどね?

沢山いる皇太子殿下の弟妹にはあねさまと好かれているわ。
嬉しい。



バージンロードを共に歩いてくれるのは、なんとお兄様だ。

着飾った姿のお兄様を目にして、お母様を愛おしげにエスコートしていたお父様を思い出した。

本当に、嫌になるほどそっくりな親子ね。

傷つけられたこともあったけど、結局心の底から嫌いになんてなれなかったわ。

「お兄様」
「エル・・・すごいな、綺麗だ・・・涙が出てきた」
「全く・・・お兄様が泣いてどうするのですか」

ちなみにこの結婚式にはお兄様のお友達と・・・想い人も参加される。

「お兄様、行きましょう?」
「ああ・・・ちょっと待ってくれ」

ハンカチで涙を拭いたお兄様の差し出した腕に、手を添える。

ふふ、バージンロードをお兄様と歩くなんて、世界で私だけじゃないかしら。
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