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*貴方だけを愛し続ける
しおりを挟む気が付いたら、誰もいなかった。
あんなに沢山いたのに。
あんなに沢山あったのに。
私はまた一人ぼっちだ。
一人は嫌だ。
一人は怖い。
ああ、女神であった頃も、いつもこうだった。
私には、親がいなかった。
親のいない女神として、周りの神々から馬鹿にされていた。
いつもいつもとても辛くて、悲しくて、彼らの中でも特に、兄に守られる愛らしい妹の神が嫌いだった。
兄神の優しい瞳には、いつも天真爛漫に笑う妹神の笑顔だけが映っていて、私が近づく度にその瞳を警戒で染めるのだ。
それがとてもとても悲しくて、一緒に遊びたいだけだなんて言うことも出来なくて。
いつも蹲って震えていたけれど。
容姿だけは人並み外れて優れていたから、私は彼らを見返すことに決めたら、瞬く間に存在感を大きくした。
気が付いたら、誰もが私の言いなりになった。
私が笑えば誰もが笑い、私が嫌えば誰でも潰された。
一番最初に消したのは、あの兄弟神。
嫌悪と憎悪の表情に、胸が空くほど高揚した。
そうやって生きてきたから、そんな私が、あんなにも美しい人に見初められるなんて思ってもみなくて。
他の誰にも目をくれず、私だけを見つめ続けて、私の足元に膝をついたこの世で一番美しく強いその神は、ミルクティーブロンドの髪に、うっとりするような紫水晶の瞳を持っていたから。
その唇から囁かれる愛の言葉にすっかり浮かれきった幼い私は、その求愛の言葉に一も二もなく飛びついた。
ああ、私は愛されていた。
愛されていると、思っていた。
だから、気を抜いていて。
その罰が下されてしまったのだ。
可愛い娘に夢中になって、あの人が尋ねてくれないことも気にしていなかった。
愛は冷めるものだって、みんな教えてくれたのに。
他でもない、浮気をして母に刺殺された父に、そのまま私をおいて自殺した母に、教えられたはずなのに。
永遠の愛など、存在しないと知っていたのに。
見覚えのあるあの女神が、あの人に愛されている。
そのくちびるに、口付けを送られている。
その姿を、消したはずの男に見せられた。
ああ、潰したんじゃない。
匿われていたのだ、彼らは。
私の取り巻きたちに、他でもない夫に、私から隠され、助けられていたのだ。
私という、害悪から。
「・・・わたしは」
いつも騒がしく、暖かく、私に優しかった屋敷は、寂れ、もう誰もいない。
使用人も、夫も、子供たちも。
もう、誰も。
「わたしは・・・」
女神じゃなくなって、母親じゃなくなって、ついには妻でも無くなった。
元々誰の娘でもなかった私に、これ以上なんの名があるのだろう。
奪い取った聖女の肩書きすら、今はもうない。
「・・・だれか、たすけて」
まるで幼子のように、天に救いを求めた。
だから、だろうか。
一筋の、光が零れたと思った。
それが、私にかかった瞬間、強く光を放ち始めたそれは、全てを覆い尽くして。
その、あまりに懐かしい力に、私は意識を飛ばした。
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