お母様が私の恋路の邪魔をする

ものくろぱんだ

文字の大きさ
上 下
38 / 58

新しい生活が幸せすぎる

しおりを挟む
「お嬢様、起きてくださいまし」
「うーん・・・あと五分・・・ステフ、もうちょっとねかして・・・」
「おほほお嬢様ったら、私はトートですわ?」
「うん・・・とーと・・・すてふじゃなくて・・・トート!?」

やだ一気に覚醒したわ。
恥ずかしすぎて顔を覆う。
そんな私をニヨニヨ眺めるんじゃありません。

「お着替えしましょうお嬢様」
「うん・・・」

視界に入るのは見慣れた黒と青ではなく、暖かな光が満ちる白と陽だまりのような優しい黄色の空間。

風が吹き込むカーテンがふわりと揺れ、小鳥の囀りが軽やかに歌われる。

やだ、ここは天国!?

まじまじと再び見つめていると、用意された服がすごかった。

やだ語彙力が消滅しちゃったわ。

明るいミントグリーンのドレスにはピンクの糸で愛らしい薔薇の刺繍が施されている。
レースのリボンは上品だし、何より青と黒が使われていないのが素晴らしいわね。

しかも!
これは凄いのだけれど、なんと朝から髪を結ってもらえるし、髪飾りや首飾りまで選ばせてくれるの!
あっちじゃ何もつけずに髪をといただけが普通だったのに!

もうこれが三週間続いているんだから日常と言っていいわよね?

正直ここまで世話されるのは落ち着かない。
いくらステフでも着替えやお風呂までは着いてこなかったから・・・。

あ、でも髪を結ぶのはあいつ得意よ。

それにしても本当に素敵なドレス・・・妃殿下にお礼を言わないと。

「じゃあ食堂に行きましょう」
「ええ・・・その、ごめんなさいね?・・・ステフだと思って・・・」
「おほほ、よろしいのですよお嬢様、それより未婚の男女が同じ部屋にいることを許す生家の方がおかしいですわ」

刺がある嫌味をあの家につくと、優しげな眼差しで扉を開けてくれた。

「「あ」」

やだばったり。
ステフと顔を見合せた。

ちなみにステフの部屋は一部屋跨いだ向こうの部屋だ。
つまり隣の隣だ。

そんなステフの後ろには明らかに寝癖のある、欠伸をしている男性。

トートそっくりの従者服の男が、ステフの従者のモートだ。

「・・・なんか明らかにモートの方が寝坊してない?」
「そうなんだよ、なかなか起きてくれなくて」
「・・・モート?」
「いや、だってさトート、若様すげえ早起きなんだよ?無理無理起こせないよ、逆に起こされてんもん」

それは従者なのかしら?

まあステフは私の元従者、とんでもなく主を主と思わない態度だけど仕事は優秀だったわ。
遅寝早起きが基本の生活を送っていたステフは多分モートより従者らしい。

トートに怒られるモートを背景に、私たちは食堂へと向かった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね

江崎美彩
恋愛
 王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。  幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。 「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」  ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう…… 〜登場人物〜 ミンディ・ハーミング 元気が取り柄の伯爵令嬢。 幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。 ブライアン・ケイリー ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。 天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。 ベリンダ・ケイリー ブライアンの年子の妹。 ミンディとブライアンの良き理解者。 王太子殿下 婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。 『小説家になろう』にも投稿しています

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

【完】瓶底メガネの聖女様

らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。 傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。 実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。 そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

処理中です...