お母様が私の恋路の邪魔をする

ものくろぱんだ

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私の従者が突然私より偉くなった時の対応方法

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そもそもステンランド帝国の正統な後継者は皇后である、というのはみんな知っていることだ。

そう、あの男の色気がヤバすぎる皇帝は婿養子なのである。

なんでかって言うと元々妃殿下には立派なお兄様がいた。
それでも妃殿下こそ皇帝に・・・と言われるほど妃殿下は優秀な方であったのだけど、平民の冒険者の男と恋に落ちてしまった妃殿下は駆け落ち同然で継承権を蹴り、妻と息子を得たばかりの兄に祝儀的な感じで皇帝位をプレゼントしたそうな。

それが、十数年前に起きた反乱により皇帝夫妻が死去、一人息子のアスタナイト殿下は行方不明になってしまい、そのことを知った妃殿下は皇室を取り戻すため冒険を切り上げ夫共々城に入った。
真なる皇帝夫妻としてね。

その後立派に国を治めるも行方不明の皇太子は一向に見つからない。
その上生まれてきた子供たちに皇帝の血を受け継いでいる証たる、紫の瞳の持ち主が生まれてこなかった。

仕方なく貴族たちは青緑の瞳・・・平民に多いその色を持つ皇子皇女たちを皇族として迎え入れ、けれども行方不明の従兄皇太子を探しながら虎視眈々と反逆の機会を伺っているそうな。  
 
・・・何を隠そう、うちの従者でした。  






「私の従者が突然私より偉くなった時の対応方法教えてくださいませ」
「落ち着けお嬢」
「無礼──────────じゃなくなるのね、今後は」

むしろ私が無礼?
この掛け合い結構好きだったのにな・・・。

「いや、このままあんたの従者だから無礼ッスよ」
「そう・・・そうな────────いや待ちなさいよ?」
「何か言いたいことでも?」

色々言いたいことはあるわ。
いや従者のままかよとか私の哀愁返せよとか結局無礼なのねとか。
それ以前に自分で言うなよもあるけど?

「な、ななななんで!」

そう、これが一番言いたかったのよ。

「何が?」

首かしげるなこてんとするな可愛いわね。

「・・・あんた」
「はい・・・なんかどっかの平民のおばちゃんが亭主に対する呼びかけみたいですね、それ」
「そう、さようならステフ、あっちの国でも元気でね?」
「ごめんなさいもう言いません」

出鼻をくじかれてイラッとしたわ。

改めてこいつをよく見てみる。

・・・私の好きな人。
いつもなんだかんだ言って助けてくれる。

馬鹿だし記憶飛ぶし無礼な態度だけど、唯一いつも私のそばにいてくれた。

あのひとりぼっちの屋敷の中で、お兄様にすら置いていかれた私の、唯一のすがり所。

たとえお母様を愛していても、私はこいつが好き。

・・・まさかの出自には、驚きだったけど。

なんで私はこんなやつを好きになったのかしら。

顔?髪?瞳?

外見的な理由だけならいくらでもあげられるのに、何故かそれだけ出てこない。

あの時、初めて見たこの目は私を滑って、お母様を見つめた。
その瞬間に、確かに痛んだ心があって。
分からない。
分からないけど。

それでもやっぱり、私はこいつが好きなのだ。

私は、こいつに好かれていると胸を張っていいのだ。

分からないなりに足掻いて見せよう。

何故ならステファーニエという男は、私の従者なんだから・・・。

まあ、何をしたのか知らないけどその必要は無さそうだ。
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