お母様が私の恋路の邪魔をする

ものくろぱんだ

文字の大きさ
上 下
18 / 58

◇それがどういうことなのかという単純な質問

しおりを挟む


ああ、そう呼ばれたのはいつだったろうか──────。



「マクシミリアン・ステンランドだ」
「・・・ステファーニエと申します」

お嬢の好きそうな真っ黒な髪に、深い青緑の瞳の美しい少年に手を差し出され、身分差を理解しながら手を握る。

彼は・・・まあ、本人の申告通りマクシミリアン・ステンランド。
ステンランド帝国の皇太子殿下。

ちなみにこの国の王太子の名前はアルベルト・シュウェッツだ。

謝罪に来たはずがお嬢の一言で上へ下への大騒ぎになるとは誰が想像したことか。
少なくとも目の死んだ俺の横で目を白黒させるお嬢は考えてもみなかったろう。

謝罪に来たはずが妃殿下には篭絡されその後やっと会えた皇帝にはスルーされ(そのあと皇帝に肩を掴まれたのは俺だった)今皇太子と直に面会してるのも俺、お嬢は俺の斜め後ろで微妙に皇太子を見ずに固まってる。
うん、これこそお嬢だな。

・・・今、俺の目にはそれすらお嬢にとっては「あ、なんか輝きが増したわ」で終わったのだから一体いつから紫に見えてたのか・・・。 

本人に言わせたら「その瞳に一目惚れしたのよ」と返ってくるような(口には出せないだろうが)質問である。

鏡に映るのは滑らかな灰銀の髪の下に紫水晶の瞳を煌めかせる美少年・・・。

自分で言うのもなんだがお嬢が見惚れる程度には顔がいい自覚はあった。

・・・自分だって、本当の目の色なんて思い出せなかった。
小さい頃は灰色じゃなかった気がするな、と思う程度で。
魔法なんて気がついたこともない、病気で変わったのかと思っていたくらいだった。

「あの・・・この目の色、なんかやばいですか?」
「うむ・・・それについて話があるのだ・・・すまないがエルメロージュ公女、従者を借りる」
「・・・あっ、はい!?あ、どうぞ、煮るなり焼くなりお好きにどうぞ!?!?」

おい。

「ちょっと煮るなり焼くなりは酷くないすか?」
「あら、私は困らなくてよ?」
「おほほ、二人は本当に仲がいいのねぇ・・・あなた、わたくしやっぱりもう一人欲しいわ・・・」
「はは、メイディア、この間アンジュリアを産んだばかりじゃないか」

・・・そういや皇帝夫妻っておしどり夫婦子沢山だったっけ?

何故か他国の皇帝夫妻のイチャイチャを見せつけられつつ、お嬢がサメナとかいうメイドに連れてかれて、ようやく本題に入った。

「ステファーニエ、君はおそらく俺の従兄だ」
「・・・はい?」

まあさすがに皇太子からのこの一言は予想してなかったけどさ?
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームのヒーローやってます

かべうち右近
恋愛
ここは乙女ゲーム「聖女物語」の世界。 私ことミヒャエル・アーネストは、聖女物語のメインヒーローとして、ループし続けるこの世界の中で、今日も役割をこなしている。 新しく来たヒロインは、「カナエ」というらしい。 どうせ他のヒロインのように、逆ハーレム含む一通りのルートを周回して去っていくのだろう。 ………そう思っていたのに、彼女は私のルートばかりを選ぶ?? なぜ??? カナエはどうして、私のルートばかり来るんだ? 好き好き伝えてくるカナエには、何か訳があるようで…? ループする乙女ゲームの世界にやってきたヒロイン・カナエが何度周回しても、ミヒャエルを溺愛し続ける!何かおかしくない――?! ※小説家になろうで同時掲載です。 2/28追記 次回「【番外編】ifアレン急展開恋愛ルート」を更新予定 次回更新で、「乙女ゲームのヒーローやってます」の更新は終了予定です。 (気が向いたら別の番外編も書くかもしれません) お付き合いいただきありがとうございました。 もしよろしければ、好きなシーンなどございましたら教えていただけると嬉しいです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。

さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。 忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。 「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」 気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、 「信じられない!離縁よ!離縁!」 深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。 結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?

両親や妹に我慢を強いられ、心が疲弊しきっていましたが、前世で結ばれることが叶わなかった運命の人にやっと巡り会えたので幸せです

珠宮さくら
恋愛
ジスカールという国で、雑草の中の雑草と呼ばれる花が咲いていた。その国でしか咲くことがない花として有名だが、他国の者たちはその花を世界で一番美しい花と呼んでいた。それすらジスカールの多くの者は馬鹿にし続けていた。 その花にまつわる話がまことしやかに囁かれるようになったが、その真実を知っている者は殆どいなかった。 そんな花に囲まれながら、家族に冷遇されて育った女の子がいた。彼女の名前はリュシエンヌ・エヴル。伯爵家に生まれながらも、妹のわがままに振り回され、そんな妹ばかりを甘やかす両親。更には、婚約者や周りに誤解され、勘違いされ、味方になってくれる人が側にいなくなってしまったことで、散々な目にあい続けて心が壊れてしまう。 その頃には、花のことも、自分の好きな色も、何もかも思い出せなくなってしまっていたが、それに気づいた時には、リュシエンヌは養子先にいた。 そこからリュシエンヌの運命が大きく回り出すことになるとは、本人は思ってもみなかった。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...