お母様が私の恋路の邪魔をする

ものくろぱんだ

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◇それがどういうことなのかという単純な質問

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ああ、そう呼ばれたのはいつだったろうか──────。



「マクシミリアン・ステンランドだ」
「・・・ステファーニエと申します」

お嬢の好きそうな真っ黒な髪に、深い青緑の瞳の美しい少年に手を差し出され、身分差を理解しながら手を握る。

彼は・・・まあ、本人の申告通りマクシミリアン・ステンランド。
ステンランド帝国の皇太子殿下。

ちなみにこの国の王太子の名前はアルベルト・シュウェッツだ。

謝罪に来たはずがお嬢の一言で上へ下への大騒ぎになるとは誰が想像したことか。
少なくとも目の死んだ俺の横で目を白黒させるお嬢は考えてもみなかったろう。

謝罪に来たはずが妃殿下には篭絡されその後やっと会えた皇帝にはスルーされ(そのあと皇帝に肩を掴まれたのは俺だった)今皇太子と直に面会してるのも俺、お嬢は俺の斜め後ろで微妙に皇太子を見ずに固まってる。
うん、これこそお嬢だな。

・・・今、俺の目にはそれすらお嬢にとっては「あ、なんか輝きが増したわ」で終わったのだから一体いつから紫に見えてたのか・・・。 

本人に言わせたら「その瞳に一目惚れしたのよ」と返ってくるような(口には出せないだろうが)質問である。

鏡に映るのは滑らかな灰銀の髪の下に紫水晶の瞳を煌めかせる美少年・・・。

自分で言うのもなんだがお嬢が見惚れる程度には顔がいい自覚はあった。

・・・自分だって、本当の目の色なんて思い出せなかった。
小さい頃は灰色じゃなかった気がするな、と思う程度で。
魔法なんて気がついたこともない、病気で変わったのかと思っていたくらいだった。

「あの・・・この目の色、なんかやばいですか?」
「うむ・・・それについて話があるのだ・・・すまないがエルメロージュ公女、従者を借りる」
「・・・あっ、はい!?あ、どうぞ、煮るなり焼くなりお好きにどうぞ!?!?」

おい。

「ちょっと煮るなり焼くなりは酷くないすか?」
「あら、私は困らなくてよ?」
「おほほ、二人は本当に仲がいいのねぇ・・・あなた、わたくしやっぱりもう一人欲しいわ・・・」
「はは、メイディア、この間アンジュリアを産んだばかりじゃないか」

・・・そういや皇帝夫妻っておしどり夫婦子沢山だったっけ?

何故か他国の皇帝夫妻のイチャイチャを見せつけられつつ、お嬢がサメナとかいうメイドに連れてかれて、ようやく本題に入った。

「ステファーニエ、君はおそらく俺の従兄だ」
「・・・はい?」

まあさすがに皇太子からのこの一言は予想してなかったけどさ?
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