上 下
16 / 58

狂ったお茶会の後に

しおりを挟む
「・・・やっぱり謝罪に行くべきだわ・・・」

ポツリと呟いた言葉を拾ったステフが重々しく頷く。

「いくらなんでもあれはなかったっすわ」

どういう風の吹き回しなのか、ステフはお母様を避難し始めた。

「ステフ・・・風邪でも引いた?熱がある?寝てていいのよ、後で看病したげる」
「いや別にいつも通りっすけど?失礼!」

だってこんなのステフじゃないもの。

「うーん・・・最近思うことがあったんですよ」

つーんと窓の外を向いてそう呟いたステフの顔は、ちっとも幸せそうじゃなかった。






茶会の日からしばらく経って、またしくも私は城にいた。

いつも着ているようなドレスで、王家の使用人たちも案内はしてくれない。
あれはお母様がいたからこその処置なのである。

王宮の簡易的な地図を貰ったのでそれでステフと四苦八苦する。

「あっちじゃないすか?」
「いえ、このまま真っ直ぐでいいはずよ・・・あら?」
「ほらやっぱりー、あっちじゃんあっちじゃん」

黙らっしゃい!



そうこうしながら辿り着いたのはステンランド帝国の皇帝夫妻が泊まっているらしい部屋・・・普通夫婦の部屋でも別々の部屋を用意しない?なんで一部屋にまとめるのよ。
お母様とお父様が泊まる時は意地でも一緒にはしないくせに!やばい時には王宮の端と端に置くのよ!?ありえないでしょ!

まあだいたいはお父様が魔力にものを言わせて潜り込んで朝発見されるけどね。

ちなみに皇太子殿下の部屋はこの隣だ。
うーん、バカにしている。
というかここは貴族用の貴賓室であって他国の重鎮を通す部屋じゃないのよ。

やばいわね、頭が湧いてるとしか思えない所業だわ。
私は無事に帰ることができるかしら。

ステフもそっとまぶたを下ろして祈り始めた。
ステフ、それはステンランド帝国の神に捧げる祝詞よ、うちの神様とは違うわ。

それにしてもステフも神に祈る時があるのね、おほほ、新発見だわ、私はこれがあの世への土産にならないことを祈るわ。

はあ・・・気が重い。

覚悟を決めてステフと目配せ、そしてついに私はこんこんと扉をノックした。



「・・・はい」

しばしの沈黙の後、メイドらしき無表情の女性がでてきた。
着ている服からしてうちの国では無い・・・と、言うことは。

「あら、可愛いお客さんじゃない、サメナ、通してちょうだい」

絹糸のように真っ直ぐサラサラな真紅の髪、深い深い鮮やかな紫の瞳。
赤いくちびるは完璧な弧を描き、大きな胸とくびれた腰、形のいいお尻・・・。
ステンランド帝国のメイドが開いてくれた扉の先には、ゆうゆうとソファーに腰掛ける部屋着の女神がいた。

え、ここは天国ですか?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私はただ一度の暴言が許せない

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。 花婿が花嫁のベールを上げるまでは。 ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。 「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。 そして花嫁の父に向かって怒鳴った。 「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは! この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。 そこから始まる物語。 作者独自の世界観です。 短編予定。 のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。 話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。 楽しんでいただけると嬉しいです。 ※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。 ※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です! ※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。 ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。 今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、 ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。 よろしくお願いします。 ※9/27 番外編を公開させていただきました。 ※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。 ※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。 ※10/25 完結しました。 ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。 たくさんの方から感想をいただきました。 ありがとうございます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、 今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきます。

夫の不貞現場を目撃してしまいました

秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。 何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。 そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。 なろう様でも掲載しております。

目が覚めました 〜奪われた婚約者はきっぱりと捨てました〜

鬱沢色素
恋愛
侯爵令嬢のディアナは学園でのパーティーで、婚約者フリッツの浮気現場を目撃してしまう。 今まで「他の男が君に寄りつかないように」とフリッツに言われ、地味な格好をしてきた。でも、もう目が覚めた。 さようなら。かつて好きだった人。よりを戻そうと言われても今更もう遅い。 ディアナはフリッツと婚約破棄し、好き勝手に生きることにした。 するとアロイス第一王子から婚約の申し出が舞い込み……。

伝える前に振られてしまった私の恋

メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。 そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

はずれのわたしで、ごめんなさい。

ふまさ
恋愛
 姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。  婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。  こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。  そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...