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狂ったお茶会の後に
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「・・・やっぱり謝罪に行くべきだわ・・・」
ポツリと呟いた言葉を拾ったステフが重々しく頷く。
「いくらなんでもあれはなかったっすわ」
どういう風の吹き回しなのか、ステフはお母様を避難し始めた。
「ステフ・・・風邪でも引いた?熱がある?寝てていいのよ、後で看病したげる」
「いや別にいつも通りっすけど?失礼!」
だってこんなのステフじゃないもの。
「うーん・・・最近思うことがあったんですよ」
つーんと窓の外を向いてそう呟いたステフの顔は、ちっとも幸せそうじゃなかった。
茶会の日からしばらく経って、またしくも私は城にいた。
いつも着ているようなドレスで、王家の使用人たちも案内はしてくれない。
あれはお母様がいたからこその処置なのである。
王宮の簡易的な地図を貰ったのでそれでステフと四苦八苦する。
「あっちじゃないすか?」
「いえ、このまま真っ直ぐでいいはずよ・・・あら?」
「ほらやっぱりー、あっちじゃんあっちじゃん」
黙らっしゃい!
そうこうしながら辿り着いたのはステンランド帝国の皇帝夫妻が泊まっているらしい部屋・・・普通夫婦の部屋でも別々の部屋を用意しない?なんで一部屋にまとめるのよ。
お母様とお父様が泊まる時は意地でも一緒にはしないくせに!やばい時には王宮の端と端に置くのよ!?ありえないでしょ!
まあだいたいはお父様が魔力にものを言わせて潜り込んで朝発見されるけどね。
ちなみに皇太子殿下の部屋はこの隣だ。
うーん、バカにしている。
というかここは貴族用の貴賓室であって他国の重鎮を通す部屋じゃないのよ。
やばいわね、頭が湧いてるとしか思えない所業だわ。
私は無事に帰ることができるかしら。
ステフもそっとまぶたを下ろして祈り始めた。
ステフ、それはステンランド帝国の神に捧げる祝詞よ、うちの神様とは違うわ。
それにしてもステフも神に祈る時があるのね、おほほ、新発見だわ、私はこれがあの世への土産にならないことを祈るわ。
はあ・・・気が重い。
覚悟を決めてステフと目配せ、そしてついに私はこんこんと扉をノックした。
「・・・はい」
しばしの沈黙の後、メイドらしき無表情の女性がでてきた。
着ている服からしてうちの国では無い・・・と、言うことは。
「あら、可愛いお客さんじゃない、サメナ、通してちょうだい」
絹糸のように真っ直ぐサラサラな真紅の髪、深い深い鮮やかな紫の瞳。
赤いくちびるは完璧な弧を描き、大きな胸とくびれた腰、形のいいお尻・・・。
ステンランド帝国のメイドが開いてくれた扉の先には、ゆうゆうとソファーに腰掛ける部屋着の女神がいた。
え、ここは天国ですか?
ポツリと呟いた言葉を拾ったステフが重々しく頷く。
「いくらなんでもあれはなかったっすわ」
どういう風の吹き回しなのか、ステフはお母様を避難し始めた。
「ステフ・・・風邪でも引いた?熱がある?寝てていいのよ、後で看病したげる」
「いや別にいつも通りっすけど?失礼!」
だってこんなのステフじゃないもの。
「うーん・・・最近思うことがあったんですよ」
つーんと窓の外を向いてそう呟いたステフの顔は、ちっとも幸せそうじゃなかった。
茶会の日からしばらく経って、またしくも私は城にいた。
いつも着ているようなドレスで、王家の使用人たちも案内はしてくれない。
あれはお母様がいたからこその処置なのである。
王宮の簡易的な地図を貰ったのでそれでステフと四苦八苦する。
「あっちじゃないすか?」
「いえ、このまま真っ直ぐでいいはずよ・・・あら?」
「ほらやっぱりー、あっちじゃんあっちじゃん」
黙らっしゃい!
そうこうしながら辿り着いたのはステンランド帝国の皇帝夫妻が泊まっているらしい部屋・・・普通夫婦の部屋でも別々の部屋を用意しない?なんで一部屋にまとめるのよ。
お母様とお父様が泊まる時は意地でも一緒にはしないくせに!やばい時には王宮の端と端に置くのよ!?ありえないでしょ!
まあだいたいはお父様が魔力にものを言わせて潜り込んで朝発見されるけどね。
ちなみに皇太子殿下の部屋はこの隣だ。
うーん、バカにしている。
というかここは貴族用の貴賓室であって他国の重鎮を通す部屋じゃないのよ。
やばいわね、頭が湧いてるとしか思えない所業だわ。
私は無事に帰ることができるかしら。
ステフもそっとまぶたを下ろして祈り始めた。
ステフ、それはステンランド帝国の神に捧げる祝詞よ、うちの神様とは違うわ。
それにしてもステフも神に祈る時があるのね、おほほ、新発見だわ、私はこれがあの世への土産にならないことを祈るわ。
はあ・・・気が重い。
覚悟を決めてステフと目配せ、そしてついに私はこんこんと扉をノックした。
「・・・はい」
しばしの沈黙の後、メイドらしき無表情の女性がでてきた。
着ている服からしてうちの国では無い・・・と、言うことは。
「あら、可愛いお客さんじゃない、サメナ、通してちょうだい」
絹糸のように真っ直ぐサラサラな真紅の髪、深い深い鮮やかな紫の瞳。
赤いくちびるは完璧な弧を描き、大きな胸とくびれた腰、形のいいお尻・・・。
ステンランド帝国のメイドが開いてくれた扉の先には、ゆうゆうとソファーに腰掛ける部屋着の女神がいた。
え、ここは天国ですか?
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