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なんで私はこんな男を好きになったの
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私は、ステファーニエが好き。
それはこの男の灰銀色の髪かもしれないし、鮮やかな紫の瞳になのかもしれない。
もしくはすごく整った顔立ちの可能性もあるけど。
まあ、言ってしまえば一目惚れ。
お母様に憧れて、向う見ずな人助けをして。
薄汚れた子供が、あまりにも欲しかった色彩と、好みど真ん中の顔をしていたと言うだけ。
まあ、子供が恋に落ちる理由としては十分だ。
私の心を映し出したような土砂降りの天候。
時折雷が光る灰色の空を鏡越しに見上げながら、私は後ろで何かを言っているステファーニエをガン無視していた。
・・・まあ、この男が私に対して素っ気ないというか・・・なんかよくわかんないけど明らかに主に対する対応じゃないのはいつもの事だしね。
慣れっこだけどさ。
・・・今日は、本当に楽しみにしてたのよ。
だって初めてステファーニエが誘ってくれたんだもの。
いつもいつも誘っては玉砕して素っ気なく流される私を遂に哀れに思ったのかもしれない。
ココ最近の私は元気がなかったからかな、ステファーニエは仕方なさそうに「一緒に出かけます?」と尋ねてきた。
・・・ものすごく嬉しかった。
お母様に誘われたら時間厳守で、絶対に、何があってもそちらを優先するってわかってたのに。
今日くらいは私と一緒にいてくれるかなってどこかで思ってた。
私はお母様が好き。
でもたまに嫌いなのは、きっとステフがお母様を優先するから。
誰も、お母様を嫌いになれない。
私もそうだから、よくわかってるはずなのに。
それでも思うのだ・・・。
「・・・他はともかく、お前は私を愛しなさいよ」
「え?なんて?」
「なんでもないっ!」
「お嬢はわっかんねーなぁ」と呟きながらお茶をいれるステファーニエ。
うるさいわよ。
「・・・お茶いらないんだけど?」
「あ、これ俺が飲む分っす、奥様から貰ったやつ」
「それ絶対私が飲むべきものよね・・・!?」
軽やかな強奪と主人の前で一人だけお茶を飲もうとする神経に震えたわっ・・・!
・・・なんだか、喜んでた私が馬鹿みたいね。
なんだろう、目の前が歪むわ。
「・・・え?お、お嬢・・・?」
「・・・て」
かすかに絞り出した声はどうやらステファーニエには届かなかったよう。
「出てって・・・今すぐ出てって!」
「えっ、ちょっ・・・わっ」
思い切り押し出し扉を閉める。
結局抵抗ひとつせず、お母様のお茶だけを死守した馬鹿。
・・・本当に、なんでこんな男に惚れたのかしら。
それはこの男の灰銀色の髪かもしれないし、鮮やかな紫の瞳になのかもしれない。
もしくはすごく整った顔立ちの可能性もあるけど。
まあ、言ってしまえば一目惚れ。
お母様に憧れて、向う見ずな人助けをして。
薄汚れた子供が、あまりにも欲しかった色彩と、好みど真ん中の顔をしていたと言うだけ。
まあ、子供が恋に落ちる理由としては十分だ。
私の心を映し出したような土砂降りの天候。
時折雷が光る灰色の空を鏡越しに見上げながら、私は後ろで何かを言っているステファーニエをガン無視していた。
・・・まあ、この男が私に対して素っ気ないというか・・・なんかよくわかんないけど明らかに主に対する対応じゃないのはいつもの事だしね。
慣れっこだけどさ。
・・・今日は、本当に楽しみにしてたのよ。
だって初めてステファーニエが誘ってくれたんだもの。
いつもいつも誘っては玉砕して素っ気なく流される私を遂に哀れに思ったのかもしれない。
ココ最近の私は元気がなかったからかな、ステファーニエは仕方なさそうに「一緒に出かけます?」と尋ねてきた。
・・・ものすごく嬉しかった。
お母様に誘われたら時間厳守で、絶対に、何があってもそちらを優先するってわかってたのに。
今日くらいは私と一緒にいてくれるかなってどこかで思ってた。
私はお母様が好き。
でもたまに嫌いなのは、きっとステフがお母様を優先するから。
誰も、お母様を嫌いになれない。
私もそうだから、よくわかってるはずなのに。
それでも思うのだ・・・。
「・・・他はともかく、お前は私を愛しなさいよ」
「え?なんて?」
「なんでもないっ!」
「お嬢はわっかんねーなぁ」と呟きながらお茶をいれるステファーニエ。
うるさいわよ。
「・・・お茶いらないんだけど?」
「あ、これ俺が飲む分っす、奥様から貰ったやつ」
「それ絶対私が飲むべきものよね・・・!?」
軽やかな強奪と主人の前で一人だけお茶を飲もうとする神経に震えたわっ・・・!
・・・なんだか、喜んでた私が馬鹿みたいね。
なんだろう、目の前が歪むわ。
「・・・え?お、お嬢・・・?」
「・・・て」
かすかに絞り出した声はどうやらステファーニエには届かなかったよう。
「出てって・・・今すぐ出てって!」
「えっ、ちょっ・・・わっ」
思い切り押し出し扉を閉める。
結局抵抗ひとつせず、お母様のお茶だけを死守した馬鹿。
・・・本当に、なんでこんな男に惚れたのかしら。
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