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11.中等部での流行りごと
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「だから、風花。
すごいのはわかったから、ウソつかないの」
あきれたようにひなちゃんが苦笑いする。
……って、ウソ?
「やー、ごめんごめん。
ヒカリの反応がおもしろくて。な、のん」
「そーそー。
魔法じゃなくて、コレ、特殊メイクなの」
「特殊メイク?」
特殊メイクって、スゴイ技術のアレだよね?
テレビや映画で使われてるやつ。
傷や傷跡を描いたり、
すごいのだとモンスターみたいな顔にしたり。
若見えさせたり、逆に歳をとってるようにみせる、
あのメイクのこと?
「顔の上からマスクをはってるんよ。
驚いたっしょー?」
にしし、とのんちゃんが笑う。
「すっごく驚いたよー!
ふたりとも、しゃべらないと見分けつかない!」
マスクとか、本格的!
わー、こんなこともできるんだ。
「でしょでしょ!」
「いやー、楽しいねぇ」
ふたりは満足そうだ。
「どこでしてもらったの?
お店屋さん?」
わたしが聞くと、ふたりは同時に首を振った。
「ううん。
中等部の人にやってもらった。
外部生で、今年からこの学園に来たんだって」
「今、中等部の女子の間で、
その人にやってもらうメイクがすごく流行ってるらしいよ」
「ウチらは、部活の中等部の先輩に紹介してもらったんだ」
「その人、いろーんなメイクができるんだよー。
例えば、目を大きくしたり、鼻を高くしたり」
「へえ、そうなんだ。
中学生なのに、もうそんなメイクができるなんてスゴイね」
じいっとふたりの顔を見ても、
マスクがはってあるなんて、全然わからない。
その中等部のメイクアーティストさんて、
技術的に、プロ並みなんじゃ……。
そう考えてると、朝のHRを告げるチャイムが鳴った。
「はーい、席について~」
先生が教室に入って来た。
担任の吉野先生は、若い女の先生。
普段はライガみたいないやし系なんだけど、
怒るととってもコワイ。
先生は、ふたりを見てきょとんとした。
「あれ? ええと、風花さんに、花音さん?
え? ホクロは?」
ふたりはくすくす笑っている。
「先生、どっちがどっちかわかる?」
「当てたら、席につくよ~。
名付けて、どっちでShow!」
教室が笑いに包まれる。
「また、困らせて……」と、ひなちゃんがため息をついた。
「さあ、先生は当てられるのでしょうか!?
実況は、あなたの隣に音鳴さんこと
音鳴広がお送りします!」
放送部の音鳴くんが、
こぶしをマイクがわりに実況を始めた。
教室のみんなが、いいぞーっと盛り上がる。
うん、ウチのクラス、
ライガの時といいこういうの好きだよね。
先生は、いつもならおろおろするんだけど……。
「それ、中等部ではやってる、特殊メイクね……」
地の底から響くような、低ーい声。
こ、これはやばい。
どうやらメイクのこと、把握してたみたい。
「学校でのメイクは禁止です!
さあ、マスクを取りなさい!」
ピシャーンっと先生の雷が落ちた。
ふーちゃんとのんちゃんは、ふたりですくみあがる。
「わーん、ごめんなさい先生!」
「でも、ウチら取り方わかんないの!」
「ウソおっしゃい! どこかにさかい目があるでしょ。
さ、顔をこっちに向けて」
ふたりはしぶしぶと顔を向ける。
先生はじいっとのんちゃんを見つめて……。
「あら?」
不思議そうに声を上げた。
「花音さん、ちょっと顔を触っていい?」
「ウチは風花だよ」
「あ、ごめんなさい」
「うっそー。
花音であってるよ」
「コラ!」
あはは、と再び教室内が笑いに包まれる。
でも……、わたしはなんだかイヤな予感がした。
先生は、優しくのんちゃんの顔の輪郭(りんかく)をなぞったり、
いつもならホクロがある位置をこすってみたりしている。
「……おかしいわね」
つるつるしていて、全くさかい目がわからない。
本当にマスクなんてかぶってるの?
肌と一体化してるみたいだ。
「ほら、わかんないでしょ」
一連の行動を見ていたふーちゃんが言うと、
先生は困った顔をした。
「じゃあ、そのメイクをした子にとってもらいなさい」
「えー、しばらくはムリだよ」
「そうそう。中等部優先だし、予約いっぱいだし……」
詳しく話を聞くと、その子に会うのにも手順が必要らしい。
(ヒカリちゃん)
頭の中でライガの声がした。
クリスやデンジくんさえ持っていれば、
私とライガもテレパシーでつながれるんだよね。
(なんだか、変だと思わない?
おれ、モデルの撮影でメイクさんに聞いたことあるけど、
かなりの修行をつまないと、
一人前のメイクアップアーティストにはなれないんだって。
この特殊メイクを、本当に中等部の子がしたのかな?)
(そんなにスゴイの?
ぼくも見たいんだぞ~)
(だーめ。がまんな、デンジ)
途中で乱入してきたデンジくんに注意するライガがほほ笑ましい。
……でも、そうだよね。
これは、本当におかしな特殊メイクだ。
(ヒカリ、ぼくも見えないからすごさがわからない。
ヒカリは、どう思う?)
クリスが聞いてきた。
(わたしは……、宝石王子のしわざか調べてみる価値があると思う。
それくらい、変だよ)
(OK。中等部なら、あの人の出番かな?)
(クリス、わかってるじゃない)
シロ兄に、中等部がどうなってるか、聞いてみよう。
すごいのはわかったから、ウソつかないの」
あきれたようにひなちゃんが苦笑いする。
……って、ウソ?
「やー、ごめんごめん。
ヒカリの反応がおもしろくて。な、のん」
「そーそー。
魔法じゃなくて、コレ、特殊メイクなの」
「特殊メイク?」
特殊メイクって、スゴイ技術のアレだよね?
テレビや映画で使われてるやつ。
傷や傷跡を描いたり、
すごいのだとモンスターみたいな顔にしたり。
若見えさせたり、逆に歳をとってるようにみせる、
あのメイクのこと?
「顔の上からマスクをはってるんよ。
驚いたっしょー?」
にしし、とのんちゃんが笑う。
「すっごく驚いたよー!
ふたりとも、しゃべらないと見分けつかない!」
マスクとか、本格的!
わー、こんなこともできるんだ。
「でしょでしょ!」
「いやー、楽しいねぇ」
ふたりは満足そうだ。
「どこでしてもらったの?
お店屋さん?」
わたしが聞くと、ふたりは同時に首を振った。
「ううん。
中等部の人にやってもらった。
外部生で、今年からこの学園に来たんだって」
「今、中等部の女子の間で、
その人にやってもらうメイクがすごく流行ってるらしいよ」
「ウチらは、部活の中等部の先輩に紹介してもらったんだ」
「その人、いろーんなメイクができるんだよー。
例えば、目を大きくしたり、鼻を高くしたり」
「へえ、そうなんだ。
中学生なのに、もうそんなメイクができるなんてスゴイね」
じいっとふたりの顔を見ても、
マスクがはってあるなんて、全然わからない。
その中等部のメイクアーティストさんて、
技術的に、プロ並みなんじゃ……。
そう考えてると、朝のHRを告げるチャイムが鳴った。
「はーい、席について~」
先生が教室に入って来た。
担任の吉野先生は、若い女の先生。
普段はライガみたいないやし系なんだけど、
怒るととってもコワイ。
先生は、ふたりを見てきょとんとした。
「あれ? ええと、風花さんに、花音さん?
え? ホクロは?」
ふたりはくすくす笑っている。
「先生、どっちがどっちかわかる?」
「当てたら、席につくよ~。
名付けて、どっちでShow!」
教室が笑いに包まれる。
「また、困らせて……」と、ひなちゃんがため息をついた。
「さあ、先生は当てられるのでしょうか!?
実況は、あなたの隣に音鳴さんこと
音鳴広がお送りします!」
放送部の音鳴くんが、
こぶしをマイクがわりに実況を始めた。
教室のみんなが、いいぞーっと盛り上がる。
うん、ウチのクラス、
ライガの時といいこういうの好きだよね。
先生は、いつもならおろおろするんだけど……。
「それ、中等部ではやってる、特殊メイクね……」
地の底から響くような、低ーい声。
こ、これはやばい。
どうやらメイクのこと、把握してたみたい。
「学校でのメイクは禁止です!
さあ、マスクを取りなさい!」
ピシャーンっと先生の雷が落ちた。
ふーちゃんとのんちゃんは、ふたりですくみあがる。
「わーん、ごめんなさい先生!」
「でも、ウチら取り方わかんないの!」
「ウソおっしゃい! どこかにさかい目があるでしょ。
さ、顔をこっちに向けて」
ふたりはしぶしぶと顔を向ける。
先生はじいっとのんちゃんを見つめて……。
「あら?」
不思議そうに声を上げた。
「花音さん、ちょっと顔を触っていい?」
「ウチは風花だよ」
「あ、ごめんなさい」
「うっそー。
花音であってるよ」
「コラ!」
あはは、と再び教室内が笑いに包まれる。
でも……、わたしはなんだかイヤな予感がした。
先生は、優しくのんちゃんの顔の輪郭(りんかく)をなぞったり、
いつもならホクロがある位置をこすってみたりしている。
「……おかしいわね」
つるつるしていて、全くさかい目がわからない。
本当にマスクなんてかぶってるの?
肌と一体化してるみたいだ。
「ほら、わかんないでしょ」
一連の行動を見ていたふーちゃんが言うと、
先生は困った顔をした。
「じゃあ、そのメイクをした子にとってもらいなさい」
「えー、しばらくはムリだよ」
「そうそう。中等部優先だし、予約いっぱいだし……」
詳しく話を聞くと、その子に会うのにも手順が必要らしい。
(ヒカリちゃん)
頭の中でライガの声がした。
クリスやデンジくんさえ持っていれば、
私とライガもテレパシーでつながれるんだよね。
(なんだか、変だと思わない?
おれ、モデルの撮影でメイクさんに聞いたことあるけど、
かなりの修行をつまないと、
一人前のメイクアップアーティストにはなれないんだって。
この特殊メイクを、本当に中等部の子がしたのかな?)
(そんなにスゴイの?
ぼくも見たいんだぞ~)
(だーめ。がまんな、デンジ)
途中で乱入してきたデンジくんに注意するライガがほほ笑ましい。
……でも、そうだよね。
これは、本当におかしな特殊メイクだ。
(ヒカリ、ぼくも見えないからすごさがわからない。
ヒカリは、どう思う?)
クリスが聞いてきた。
(わたしは……、宝石王子のしわざか調べてみる価値があると思う。
それくらい、変だよ)
(OK。中等部なら、あの人の出番かな?)
(クリス、わかってるじゃない)
シロ兄に、中等部がどうなってるか、聞いてみよう。
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