13 / 41
6.それは、優しさ?
6-2
しおりを挟む★★★
「かわいそうだよねえ、大地さん」
「お父さんもお母さんも、行方不明になったんでしょ?」
「なんか、ウチの学園の理事長が面倒見てあげてるんだって」
ヒソヒソとかわされる会話。
四月。
五年生になったころには、私の置かれてる状況はもうクラス中、
いや、学年中……学園中? に知れわたっていた。
「普段着るお洋服とか、あるのかな?」
「ゲームとか、スマホとかもなかったりするかも」
ありますよー。大丈夫。
理事長さんから一通りのものは用意してもらってます。
って言いたいけど、
普段はあまり関わらない女子グループの子たちだから、
なかなか話しかけづらい。
「あ、じゃあさ、みんなで寄付しない?
お洋服とか、文房具とか!」
……え?
「いい考え!」と、賛同の声が聞こえる。
ちょ、ちょっと待って!
「河田(かわだ)さん!」
寄付を提案した子に、私はあわてて声をかけた。
「あ、ちょうどよかった。
大地さん、何か、欲しいものある?」
「そうそう。
お父さんの会社が倒産しちゃって、たいへんなんでしょ?」
「私たち、大地さんに寄付しようと思って」
河田さんグループの子たちは、
口々にそんなことを言いながらニコニコと笑みを浮かべている。
その笑みが、なんだか怖かった。
胸に苦い思いが広がっていく。
苦手なブラックコーヒーを、
無理やり口をこじ開けて、流しこまれたみたい。
「えっ……っとね、寄付とかは、大丈夫だよ。
わたし、理事長さんから色々とお世話してもらってるから。
必要なものとかは、全部あるし」
そう言っても、河田さんたちの温かい眼差しは変わらない。
みんな、同じ表情をしている。
笑顔の仮面をかぶっているみたいに。
「遠慮しなくていいんだよ、大地さん」
「そうだよ。困った時はお互いさまって言うじゃない」
優しい声。優しい言葉。優しい顔。
それなのに、なんで?
モヤモヤと胸やけがして、みじめで、悲しくて、むなしい。
「ホントに大丈夫だから!」
自分でもビックリするほど、突き放すような声色になってしまった。
ハッキリとしたわたしの拒絶に、河田さんたちは驚いて目を見開く。
それから、すうっと空気が冷えていくのがわかった。
河田さんたちの瞳が怖い。
一斉に向けられた瞳たちが言う。
「どうしてわたしたちの好意を、善意を受け取ってくれないの?」と。
「わたしたちは、こんなにもあなたのことを……、
思ってやっているのに」。
また、胸がむかむかする。
ふと周りを見ると、いつの間にか、
教室中の注目が集まっていたことに気づいた。
「あ……、その……。
河田さんたちの気持ちはうれしいけど……、ごめんなさい」
なんとか声をしぼり出した、その時だった。
「ヒカリちゃん、なんで謝るの?」
ふわ、と春風のように優しい声が響いた。
声の主は……、ライガ。
「寄付が必要ないって、いいことじゃない。
ヒカリちゃんは、今の時点では自分でやっていけるってことでしょ」
こてん、と首を傾げるライガに、ぴんと張りつめていた教室の空気がゆるむ。
「ね、河田さんたちも、寄付が必要ない方がうれしいよね」
にこにこ、ほわほわしているライガに、河田さんたちは気まずそうにしている。
……すごいなぁ、ライガは。
さっきまでむかむか、いらいらしていたわたしの心が、
あっという間にポカポカした気持ちになっちゃったよ。
ライガは、優しいね。
このひだまりみたいな心が、わたしは大好きだ。
「だーいじょうぶ! ヒカリにはわたしたちがついてるし」
「そーそー、寄付が必要なら、とっくにウチらが相談受けてるよ」
「これで、この話は終わりね」
いつメンのみんなもそう言ってくれて、寄付の話はなくなったのだった。
★★★
11
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
【完結】アシュリンと魔法の絵本
秋月一花
児童書・童話
田舎でくらしていたアシュリンは、家の掃除の手伝いをしている最中、なにかに呼ばれた気がして、使い魔の黒猫ノワールと一緒に地下へ向かう。
地下にはいろいろなものが置いてあり、アシュリンのもとにビュンっとなにかが飛んできた。
ぶつかることはなく、おそるおそる目を開けるとそこには本がぷかぷかと浮いていた。
「ほ、本がかってにうごいてるー!」
『ああ、やっと私のご主人さまにあえた! さぁあぁ、私とともに旅立とうではありませんか!』
と、アシュリンを旅に誘う。
どういうこと? とノワールに聞くと「説明するから、家族のもとにいこうか」と彼女をリビングにつれていった。
魔法の絵本を手に入れたアシュリンは、フォーサイス家の掟で旅立つことに。
アシュリンの夢と希望の冒険が、いま始まる!
※ほのぼの~ほんわかしたファンタジーです。
※この小説は7万字完結予定の中編です。
※表紙はあさぎ かな先生にいただいたファンアートです。
左左左右右左左 ~いらないモノ、売ります~
菱沼あゆ
児童書・童話
菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。
『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。
旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』
大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。

【奨励賞】花屋の花子さん
●やきいもほくほく●
児童書・童話
【第2回きずな児童書大賞 『奨励賞』受賞しました!!!】
旧校舎の三階、女子トイレの個室の三番目。
そこには『誰か』が不思議な花を配っている。
真っ赤なスカートに白いシャツ。頭にはスカートと同じ赤いリボン。
一緒に遊ぼうと手招きする女の子から、あるものを渡される。
『あなたにこの花をあげるわ』
その花を受け取った後は運命の分かれ道。
幸せになれるのか、不幸になるのか……誰にも予想はできない。
「花子さん、こんにちは!」
『あら、小春。またここに来たのね』
「うん、一緒に遊ぼう!」
『いいわよ……あなたと一緒に遊んであげる』
これは旧校舎のトイレで花屋を開く花子さんとわたしの不思議なお話……。
化け猫ミッケと黒い天使
ひろみ透夏
児童書・童話
運命の人と出会える逢生橋――。
そんな言い伝えのある橋の上で、化け猫《ミッケ》が出会ったのは、幽霊やお化けが見える小学五年生の少女《黒崎美玲》。
彼女の家に居候したミッケは、やがて美玲の親友《七海萌》や、内気な級友《蜂谷優斗》、怪奇クラブ部長《綾小路薫》らに巻き込まれて、様々な怪奇現象を体験する。
次々と怪奇現象を解決する《美玲》。しかし《七海萌》の暴走により、取り返しのつかない深刻な事態に……。
そこに現れたのは、妖しい能力を持った青年《四聖進》。彼に出会った事で、物語は急展開していく。
オオカミ少女と呼ばないで
柳律斗
児童書・童話
「大神くんの頭、オオカミみたいな耳、生えてる……?」 その一言が、私をオオカミ少女にした。
空気を読むことが少し苦手なさくら。人気者の男子、大神くんと接点を持つようになって以降、クラスの女子に目をつけられてしまう。そんな中、あるできごとをきっかけに「空気の色」が見えるように――
表紙画像はノーコピーライトガール様よりお借りしました。ありがとうございます。
黒地蔵
紫音
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。
※表紙イラスト=ミカスケ様
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる