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1.水晶の精霊!?
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しおりを挟む「みんな見てみて~! 注目、なんだぞ!」
チカチカと動画が流れ続ける。
くるくるといろんな光が回って、とんで、はねて……。
甘い、少年の声。
不思議に点滅する動画。
あれ、なんだろ……。
なんか、頭がぼんやりして……。
「ヒカリ、しっかりして!」
鋭い声に、ハッとする。
「どうやら、ジュエル・プリンスが目覚めたみたいだね……」
真剣な顔で、クリスはつぶやいた。
ジュエル・プリンス。……宝石王子?
どこかで聞いたような?
「これ、何?」
わたしはおそるおそる、クリスに動画が流れ続けているスマホを向けた。
チラ見してみると、動画はあのヘンな光から、
どこかのステージに映像が変わっていた。
もう正面から見ても大丈夫みたい。
クリスと一緒になって、画面をのぞきこむ。
ノリのいい音楽が流れだした。
今はやりの音楽グループ、スウィートウェザーの曲だ。
ステージの上には、男の子? かな。
わたしも通ってる、私立宝珠(ほうじゅ)学園の
初等部(しょとうぶ)(小学校のことね)の
ブレザーとスラックスを着ている。
その子は、曲に合わせて、歌いながら、ダンスをしだした。
うわ、歌もダンスもめちゃくちゃ上手!
この曲を歌って、しかもダンスまでもこなすなんて。
カメラがどんどん男の子の顔に寄ってきて……。
って、え⁉
「ライガ⁉」
そう、踊っていたのはわたしの幼馴染の男の子、
天寺(あまでら)雷牙(らいが)だった。
「この子と知り合い?」
「うん、同じクラスの子、なんだけど……。ありえないよ、こんなの」
「どうして?」
「だって、ライガは……。
オンチなの。
それに加えて、運動オンチ。
歌もダンスもこんなにできるはずないよ!」
ふむ、とクリスはあごに手をあてた。
「ヒカリ、ここがどこかわかる?」
クリスは、トン、と画面を指でたたく。
ええと、どこか見覚えがあるなあ……。
あ!
「宝珠学園の初等部の体育館。
そこのステージだ。
この位置に校章あるし、幕の色も見覚えあるし、間違いないよ」
「それって、どこにある?」
「……このアパートのすぐ近くだけど。あっちの方」
何が何だかわからないまま、とりあえず宝珠学園の方向を指さす。
行き慣れた場所。
わたしはこの春進級して、この宝珠学園の初等部の五年生になったところだ。
まあ、ワケあってひとり暮らしをしてるんだけど……。
「ちょっと失礼」
そう言うと、クリスはわたしを横抱きにした。
……いわゆる、お姫さま抱っこだ。
「案内頼むよ、ヒカリ!」
わたしをかかえたまま、クリスはベランダからとびだした!
ここ、三階なんですけど⁉
「えっ⁉ えええぇぇぇっ!」
かろやかに、とんっ、とんっと家の屋根から屋根へとびうつるクリス。
まるでジェットコースターみたいで、心臓バクバクだよ!
「そういえばヒカリ」
「な、に?」
うっ、着地の衝撃が!
舌、かんじゃうって!
「マリはジュエル・プリンスたちをかなり集めてたよね?
その子たちは、ちゃんと保管してある?」
「は、い?」
「だから、ジュエル・プリンスだよ。宝石たち」
「うぐっ。いっ、たん、と、めて」
わたしの必死のうったえに、クリスはどこかの屋根の上でぴた、と足をとめた。
うう、まだゆれてる気がする。キモチワルイ……。
「『双子彗星が近づく時、ジュエル・プリンスたちはときはなたれ、災いをよぶ』……。
マリから聞いてないの?」
「全然、聞いてない」
クリスは目を見開いた。
「ウソ。じゃあ、今、マリはどこに?
ジュエル・プリンス、いや、宝石たちは?」
「ええと……、母さんは、行方不明」
「行方、不明……。
えっ、ちょっと待って、ぼくが寝てる間に何があったの?」
「ちょ、近い、近い!」
クリスはぐいーっとわたしに顔を近づけてきた。
ひええっ、美形がこんなに近くに!
まつ毛なが~い。銀色だ。
瞳もキレイ。うすーい灰色。
なんて、現実逃避してる場合じゃない!
「えっと、父さんも母さんも、行方不明。
あと、宝石はぜ~んぶヤクザさんにとられちゃったの!」
わたしの声が、星空の下に響きわたった。
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