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19.ビックリな真実
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なんていうか、もう、開いた口がふさがらない。
まんまと、はまっちゃったってわけね。
わたしの行動が、完全にみすかされていたなんて。
確かに、城をアッサリと抜け出せたこととか、うまくいきすぎだよねー!
偶然わたしが入った木箱が、超偶然にひとつだけ路地裏に置かれるなんて!
「もし、わたしが別の行動をとったら、どうするおつもりだったんですか?」
「とらなかったじゃないか。いや~、ヒヤヒヤしたね!」
はっはっはと笑う竜倒公爵に、力が抜ける。
「わたし、完全に父さんとアナタの手のひらの上で踊ってたんですね」
うらみがましくそう言うと、竜倒公爵はいきなり真剣な顔になった。
「いや、違うよ。エートちゃんが、努力しなければ、この計画はすべて終わっていた。自由を手にしたのは、エートちゃん自身の力だ。それは、保証する。きみは……、本当に、よくやった。すばらしいよ」
「そうだ。おまえの努力が、みんなを動かした。おまえが頑張ってると、みんなが力を貸したくなるんだ。もちろん、おれもな。そんな魅力をおまえはもっている。それは、誇れることだぞ」
竜倒公爵に続き、マオもそんなことを言ってくれる。なんだか、ほめられて照れくさい。
わたしたちの話を黙って聞いていた他の管理人も、モンスターのみんなも、「そうだ、そうだ」、「エートちゃん、頑張り屋さんだもの!」、「いつでも力を貸すぞ」とマオに同意してくれた。それに、胸が温かくなる。
……そっか、そうだよね。
わたしも、みんなも、頑張ったもん! その結果なんだ!
……あれ? でも、マオはなんで父さんと、竜倒公爵のふたりと知り合いなんだろ?
国王と、竜倒公爵だよ?
普通、接点なんてないよね?
「そうだ。言い忘れてたが……、おれとエートは遠い親戚でもあるんだ」
「はあ⁉」
わたしは何回マオの言葉に驚けばいいんだろう……。
「おれは……、『愚かな女王』であるカルラと、『悪竜』レイモンドの息子なんだ。母は追放されたが、実はナイショで王と竜倒公爵とはずっと連絡をとり続けていた。母が死んだあとは、おれが代々の王と竜倒公爵と連絡をとりあっている」
「えっ、マオって何歳なの?」
「……百から数えるのを忘れたな」
……あはは、もう乾いた笑いしか出ない。
マオのこと、お兄ちゃんみたいって思ってたけど、まさか本当に親戚のお兄ちゃんだったなんて。いや、お兄ちゃんていうか、年齢的にはおじいちゃん? もう、なんでもいいか。
……うん。でも、全部わかった。
「竜倒公爵、わたしを自由にする計画を立ててくれたこと、感謝いたします。父さん……、お父様にも、そうお伝えください」
わたしは深々と礼をし、竜倒公爵も「確かに、伝えよう」と約束してくれた。
「いいかい、エートちゃん、いや、エレオノーラ王女。近々、教会が動き出す。なにしろ、このお試しダンジョンには魔王がふたりもいることが『結婚の試練』でわかったからね。……教会に『ふたりの魔王に悪意はなし』と認めさせることができるか。それが、きみの手にかかっていると思ってくれ」
「……はい」
うう、身が引き締まる。
わたしも、きっと教会の調べが入ると思ってた。だから、ここで修業をするって言ったんだ。
王族側はどうやらマオとヴァンのことを認識してたみたいだけど……。
教会側からしたら、魔王がふたりも王都の近くにいるなんてことは見過ごせないよ。
国民の皆様も、落ち着かないと思うし……。
魔王は普通、ダンジョンから出たら人を襲うものだからね。
わたしが魔王を召喚して、魔王たちはわたしの言うことを聞いていたって事実は、コロッセオにいた人々しか知らない。
試合での魔王のウワサが広まるうちに、事実がねじまがって伝わってしまうことだってありうるのだ。
だから、教会に魔王のことをしっかりと調べてほしいって感じてる人は多いと思う。
……頑張ろう。
マオにもヴァンにも悪意がないってことを証明しなきゃ。
女王になるって、決めたんだもん。
マオもヴァンも、そして、ここの管理人も、モンスターも……。わたしの、国民。
国民を守れなくて、何が女王だ!
やるぞーって気持ちになっていると、「さて」と、マオがパンと手をたたいた。
「エート、昼飯がまだだろう? おまえの帰還祝いにたくさん料理をつくったんだ。一緒に食べよう」
マオのご飯! そうだね、まずは、腹ごしらえしなきゃ。
「やったー、食べる、食べる!」
わたしは一気に明るい気分になって、返事をした。
久々のマオの料理だよー。お城の料理よりも、マオの料理の方が好きだな。
マオを筆頭に、ぞろぞろと管理人も、モンスターも食堂へ移動していく。
竜倒公爵も「ぼくもいただこうかな」と、つけぼくろをつけて、メルダさんになった。
「エート、もたもたしてっと、おまえの分も全部食っちまうぞ!」
いつものように、ヴァンがニヤッと笑って、走り出す。
優しい笑みも好きだけど……、ヴァンのこのいじわるな笑みも、好きなんだよね。実は、怒ってる時の凶悪な笑みも……、好き、です。なんていうか、クセになるっていうか。
そうだ、ヴァンにも、わたしの気持ちをきちんと伝えなきゃ!
うーん、やることがいっぱいだ!
でも、わたしは幸せ。
だって、わたしは帰ってきたんだもん。
わたしの大切な、居場所。もうひとつの、わたしの家族のもとに。
わたしは改めて、挨拶した。
「ただいま、みんな! これからも、よろしくね!」
なんていうか、もう、開いた口がふさがらない。
まんまと、はまっちゃったってわけね。
わたしの行動が、完全にみすかされていたなんて。
確かに、城をアッサリと抜け出せたこととか、うまくいきすぎだよねー!
偶然わたしが入った木箱が、超偶然にひとつだけ路地裏に置かれるなんて!
「もし、わたしが別の行動をとったら、どうするおつもりだったんですか?」
「とらなかったじゃないか。いや~、ヒヤヒヤしたね!」
はっはっはと笑う竜倒公爵に、力が抜ける。
「わたし、完全に父さんとアナタの手のひらの上で踊ってたんですね」
うらみがましくそう言うと、竜倒公爵はいきなり真剣な顔になった。
「いや、違うよ。エートちゃんが、努力しなければ、この計画はすべて終わっていた。自由を手にしたのは、エートちゃん自身の力だ。それは、保証する。きみは……、本当に、よくやった。すばらしいよ」
「そうだ。おまえの努力が、みんなを動かした。おまえが頑張ってると、みんなが力を貸したくなるんだ。もちろん、おれもな。そんな魅力をおまえはもっている。それは、誇れることだぞ」
竜倒公爵に続き、マオもそんなことを言ってくれる。なんだか、ほめられて照れくさい。
わたしたちの話を黙って聞いていた他の管理人も、モンスターのみんなも、「そうだ、そうだ」、「エートちゃん、頑張り屋さんだもの!」、「いつでも力を貸すぞ」とマオに同意してくれた。それに、胸が温かくなる。
……そっか、そうだよね。
わたしも、みんなも、頑張ったもん! その結果なんだ!
……あれ? でも、マオはなんで父さんと、竜倒公爵のふたりと知り合いなんだろ?
国王と、竜倒公爵だよ?
普通、接点なんてないよね?
「そうだ。言い忘れてたが……、おれとエートは遠い親戚でもあるんだ」
「はあ⁉」
わたしは何回マオの言葉に驚けばいいんだろう……。
「おれは……、『愚かな女王』であるカルラと、『悪竜』レイモンドの息子なんだ。母は追放されたが、実はナイショで王と竜倒公爵とはずっと連絡をとり続けていた。母が死んだあとは、おれが代々の王と竜倒公爵と連絡をとりあっている」
「えっ、マオって何歳なの?」
「……百から数えるのを忘れたな」
……あはは、もう乾いた笑いしか出ない。
マオのこと、お兄ちゃんみたいって思ってたけど、まさか本当に親戚のお兄ちゃんだったなんて。いや、お兄ちゃんていうか、年齢的にはおじいちゃん? もう、なんでもいいか。
……うん。でも、全部わかった。
「竜倒公爵、わたしを自由にする計画を立ててくれたこと、感謝いたします。父さん……、お父様にも、そうお伝えください」
わたしは深々と礼をし、竜倒公爵も「確かに、伝えよう」と約束してくれた。
「いいかい、エートちゃん、いや、エレオノーラ王女。近々、教会が動き出す。なにしろ、このお試しダンジョンには魔王がふたりもいることが『結婚の試練』でわかったからね。……教会に『ふたりの魔王に悪意はなし』と認めさせることができるか。それが、きみの手にかかっていると思ってくれ」
「……はい」
うう、身が引き締まる。
わたしも、きっと教会の調べが入ると思ってた。だから、ここで修業をするって言ったんだ。
王族側はどうやらマオとヴァンのことを認識してたみたいだけど……。
教会側からしたら、魔王がふたりも王都の近くにいるなんてことは見過ごせないよ。
国民の皆様も、落ち着かないと思うし……。
魔王は普通、ダンジョンから出たら人を襲うものだからね。
わたしが魔王を召喚して、魔王たちはわたしの言うことを聞いていたって事実は、コロッセオにいた人々しか知らない。
試合での魔王のウワサが広まるうちに、事実がねじまがって伝わってしまうことだってありうるのだ。
だから、教会に魔王のことをしっかりと調べてほしいって感じてる人は多いと思う。
……頑張ろう。
マオにもヴァンにも悪意がないってことを証明しなきゃ。
女王になるって、決めたんだもん。
マオもヴァンも、そして、ここの管理人も、モンスターも……。わたしの、国民。
国民を守れなくて、何が女王だ!
やるぞーって気持ちになっていると、「さて」と、マオがパンと手をたたいた。
「エート、昼飯がまだだろう? おまえの帰還祝いにたくさん料理をつくったんだ。一緒に食べよう」
マオのご飯! そうだね、まずは、腹ごしらえしなきゃ。
「やったー、食べる、食べる!」
わたしは一気に明るい気分になって、返事をした。
久々のマオの料理だよー。お城の料理よりも、マオの料理の方が好きだな。
マオを筆頭に、ぞろぞろと管理人も、モンスターも食堂へ移動していく。
竜倒公爵も「ぼくもいただこうかな」と、つけぼくろをつけて、メルダさんになった。
「エート、もたもたしてっと、おまえの分も全部食っちまうぞ!」
いつものように、ヴァンがニヤッと笑って、走り出す。
優しい笑みも好きだけど……、ヴァンのこのいじわるな笑みも、好きなんだよね。実は、怒ってる時の凶悪な笑みも……、好き、です。なんていうか、クセになるっていうか。
そうだ、ヴァンにも、わたしの気持ちをきちんと伝えなきゃ!
うーん、やることがいっぱいだ!
でも、わたしは幸せ。
だって、わたしは帰ってきたんだもん。
わたしの大切な、居場所。もうひとつの、わたしの家族のもとに。
わたしは改めて、挨拶した。
「ただいま、みんな! これからも、よろしくね!」
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