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17.キヨコの思い

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「ぐぬぬ! 生意気なやつめ!」
 ムドーが力をこめると、新しいしっぽが、ずりゅんっと生えてきた。
 そのしっぽは、体の炎よりも、より大きな炎をまとっている。いままでのしっぽよりも、細くて長い。
 そのしっぽをムチのようにしならせ、ケルベロスに向かって攻撃した。
 だが、ケルベロスは素早すぎた。
 次々とかわし、ムドーに向かってくる。
 ムドーが噛みつかれる! と思った瞬間、ケルベロスの三つの頭全体を水のかたまりが包みこんだ。
 キヨコの魔法だ!
 ケルベロスはいったんムドーから距離をとり、前足でもって顔の水のかたまりをとろうとした。
 しかし、水には形がないから、前足でおさえてとろうにも、取れない。
 キヨコが水をそこに留めるように念じている限り、水のかたまりは外れないのだ。
 このまま、ケルベロスがおぼれてしまえば、こっちの勝ちだ!
 しかし、水のかたまりに、変化があらわれ始めた。
 ぐにょぐにょとした不定形が、だんだんと固まっていき、周りに白い霜が降りてきている。
 とうとう、水のかたまりは、氷になってしまった。
 そうか、ケルベロスのやつ、氷の息を吐いたんだね。
 それで、水が凍っちゃったんだ。
 ケルベロスは固まった氷を床に打ちつけ、氷は割れてしまった。
 これで、ケルベロスは息ができるようになる……!
 ケルベロスは、今度はキヨコに向かってきた。
 キヨコが水の防御膜をはっても、無駄だった。
 その水の膜に向かい、再びケルベロスは氷の息を吐き、水の膜は完全に凍ってしまった。
 ガラスのようになった膜に向かって、ケルベロスは突っこんできた。
 ガシャンッ!
 氷の膜は粉々に砕けてしまった。
 そのままのいきおいで、ケルベロスはキヨコの腕に噛みつく。
「キヨコ!」
 ケルベロスは、キヨコの上にのしかかり、するどい爪でもって、キヨコの体を次々と傷つけていった。
 ひどい傷! 早く、キヨコをダンジョンにもどさないと!
「エートの名において、友の、キヨコの……」
「まだよ!」
 キヨコの声に、詠唱を中断する。
 その間に、ケルベロスに向かって、ムドーがしっぽを思い切り振り切った。
「ギャンッ!」
 ケルベロスは、悲鳴を上げてふきとんだが、空中でバランスを立て直すと、すたっと着地した。
 グルルルッとうなり、こちらの様子をうかがっている。
「キヨコ、もう、無理だよ。今、帰還の魔法を……」
「だって、エートちゃん、これに負けたら、愛のない結婚をしないといけないんでしょ? そんなの、絶対に嫌!」
 キヨコは叫んだ。そして、よろよろと立ち上がる。
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