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15.試練を与えよ!

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***
 試合は、二週間後、地上のコロッセオ(広い円形の会場のことね。戦いの場以外に、舞台とか儀式とかでつかったりするよ)でおこなうことになった。
 アンダーソンとの結婚の試練にあたっては、竜倒公爵立ち合いのもと、次のことが約束された。
 なるべく、わたしと管理人のみんなの打ち合わせ通りに条件をのんでもらうようにがんばったよ。 

◆◆◆

1.エレオノーラ王女はモンスターを五体までしか召喚してはならない。
また、アンダーソン公子は、自身を含めて五人までの仲間とともに、召喚されたモンスターすべてを倒すこと。
それをもって、戦いに勝利したこととする。  

 わたしが召喚できるのは、ムドー、エルノック、キヨコ、ヴァン。
 だから、五体までじゃなくて、ホントは四体が限界なんだけど……。
 「おれに考えがある」とマオに言われたからそうしたんだ。
 マオはいったい、何を考えてるんだろう? と思ったけど、わたしはマオを信じることにした。
 当然、相手方も五人になるだろうとは思ったけど……。
 アンダーソン公子が、力になるとは思えない。ぶっちゃけ、あんまりいいウワサ聞かないもの。
 だから、実質四対四だね。

2.お互いに、装備品・魔法・アイテムは種類を問わず、すべて使用可能とする。
 
 うんうん、これは予想通り。

3.アンダーソン公子の降参・戦闘不能のいずれかをもって、敗北とする。

 つまり、モンスターたちに命令して、いっせいにアンダーソンに襲いかかってもいいってわけ。
 まあ、アンダーソンが用意する「仲間」ってのが、それを許さないと思うけど。

4.試合は、夕日がソレイユ山のいただき(てっぺんってことね)にかかった時より、審判の合図で開始する。

 これがポイント! ヴァンをモンスターとして召喚するための条件。
 わたしは「モンスター」を召喚して戦うことになっている。
 でも、いつものヴァンは人間モードだから、モンスターとしては認められない。
 だから、ホントは夜から戦闘開始がよかったんだけど……。
 それだと、夜目がきくモンスター側に有利だからダメって言われちゃった。
 そこを、なんとかねばって夕方にしてもらったんだ。
 日が照ってる時間帯は、薄暗いダンジョンに慣れているモンスターたちには不利になるって言ってね。
 まったく。夜になっても、コロッセオにはアカリ石をたくさんつかった、照明設備がバッチリあるのに……。ケチ。
 まあ、お互いにここがおとしどころだね。 
 
5.上述されている1~4を守り、試練に打ち勝った時のみ、アンダーソン公子はエレオノーラ王女との結婚を許可されるものとする。
もしエレオノーラ王女が勝利した場合は、結婚は無効となる。
それにくわえ、エレオノーラ王女が次期女王となることを、竜倒公爵ウォルツ家が推薦するものとする。

◆◆◆

 これを書類にして、ばっちり王印を押してもらったよ!
 だから、わたしは今日から、二週間はお城で過ごす。
 あー、ひさびさのわたしの部屋だー。
 毛足の長い、絨毯。天蓋つきの大きなベッドに、ふかふかのソファ。
 大きな化粧机に、ドレスのたくさん入ったクローゼット。
 ……なんだか広すぎて落ち着かない。
 そこに、ノックの音が響く。
「どうぞ」
 入ってきたのは……、わたしのかわいい妹、フローリアだ!
「フローリア! 久しぶり」
「ひ、久しぶりとか、そういう問題じゃありませんわっ!」
 フローリアは、目にいっぱい涙を浮かべていた。
 両手でドレスのすそをにぎりしめ、顔をくしゃくしゃにしている。
「お姉様がいなくなって、わたくしがどんなに心配したか、分かってまして? お父様と、毎日お祈りしていましたのよ」
 そっか、わたし、一ヶ月くらいいなかったもんね……。
 心配、かけちゃったなぁ。
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