70 / 90
15.試練を与えよ!
2
しおりを挟む
「エレオノーラ、おまえより強い人とは、いったいどういうことだ?」
「それはね、父さん。こういうことだよ」
わたしが詠唱すると、あらわれたのは、サラマンダーのムドー。
「ぎゃあ、モンスター!」
「王、王女! 竜倒公爵も! お逃げください!」
周りにいた兵士たちが、あわてて動き出す。
「みんな、ストップ。大丈夫、このサラマンダーは、わたしの言うことを聞くから」
その通り、ムドーはおとなしくしている。
下にしかれた絨毯がぶすぶすと焦げてるけど、気にしない。絨毯の下は大理石だから、燃え広がることはないでしょ。
「わたし、魔物使いになったの。今契約している魔物たちと、アンダーソンと戦ってもらうから。それで、わたしが勝ったら、この結婚はナシってことで。これは、結婚の試練よ」
「そ、そんなこと、許されるとでも思っておるのか!」
父さんは王座から立ち上がって、叫んだ。温厚な父さんがここまで怒るとは珍しい。
「後継ぎはどうなる⁉ この国の行く末を考えろ!」
カッチーン。
この後におよんで、「後継ぎ」ですか。
わたしの気持ちなんて、どうでもいいんですか。
ああ、もう、こうなったら、今まで思ってたこと、全部言ってやる!
「なーにが後継ぎよ! そんなの、わたしでもいいじゃない! こうなったら、女王になってやるわよ!」
「女王はいかん! これはいにしえの竜倒公爵の願いであり……。あの、『愚かな女王』の事件を、繰り返してはならんのだ!」
「あんなの、悪竜が選んだのが、たまたま女王だっただけでしょ⁉ その時在位してたのが王だったら、絶対悪竜は女に化けて、王をたぶらかしてたって!」
ぶふっとなにか吹き出すような声が聞こえた。
パッと見ると、不愛想な竜倒公爵の顔。
気のせい?
「どうです? 竜倒公爵。あなたたちは悪竜を倒す力でもって、公爵の位をあたえられた。……それなら、今でも竜を倒すくらいの鍛錬をつんでいるのでは?」
今度は竜倒公爵に話をもちかける。
「確かに。王女の言う通りです。竜倒公爵の名に恥じぬよう、日々修業をしております」
「では、結婚の試練として、わたしがアンダーソンと手合わせしてもよろしくて?」
「こら! エレオノーラ!」
「……いいでしょう」
えっ、アッサリ承諾⁉
びっくりしていると、竜倒公爵はふんと鼻で笑った。
「王女のわがままくらい聞いてあげる度量がなければいけませんからな。なーに、うちのアンダーソンなら、きっと勝ちますよ。もしアンダーソンが負けたら、エレオノーラ王女が次期女王になるという推薦もしましょう。この竜倒公爵、ウォルツ家の名にかけてね」
ふうん。強者の余裕ってやつ?
なんだかうまくいきすぎなするけど……。
正直、アンダーソンはともかく、その取り巻きの強さは未知数だし。
でも、これで竜倒公爵の了解も得た!
竜倒公爵の発言の重さは、だれよりも父さんが理解しているはず。
じろっと父さんを見ると、はあ、とため息をついた。
「分かった、エレオノーラ。おまえの言う通りにしよう。アンダーソン公子には、結婚するにあたって、試練を与えると言おう」
や、やったー! 認められた!
マオとみんなで立てた計画の第一歩――結婚の試練を王に認めさせること――は、大成功だよ!
「それはね、父さん。こういうことだよ」
わたしが詠唱すると、あらわれたのは、サラマンダーのムドー。
「ぎゃあ、モンスター!」
「王、王女! 竜倒公爵も! お逃げください!」
周りにいた兵士たちが、あわてて動き出す。
「みんな、ストップ。大丈夫、このサラマンダーは、わたしの言うことを聞くから」
その通り、ムドーはおとなしくしている。
下にしかれた絨毯がぶすぶすと焦げてるけど、気にしない。絨毯の下は大理石だから、燃え広がることはないでしょ。
「わたし、魔物使いになったの。今契約している魔物たちと、アンダーソンと戦ってもらうから。それで、わたしが勝ったら、この結婚はナシってことで。これは、結婚の試練よ」
「そ、そんなこと、許されるとでも思っておるのか!」
父さんは王座から立ち上がって、叫んだ。温厚な父さんがここまで怒るとは珍しい。
「後継ぎはどうなる⁉ この国の行く末を考えろ!」
カッチーン。
この後におよんで、「後継ぎ」ですか。
わたしの気持ちなんて、どうでもいいんですか。
ああ、もう、こうなったら、今まで思ってたこと、全部言ってやる!
「なーにが後継ぎよ! そんなの、わたしでもいいじゃない! こうなったら、女王になってやるわよ!」
「女王はいかん! これはいにしえの竜倒公爵の願いであり……。あの、『愚かな女王』の事件を、繰り返してはならんのだ!」
「あんなの、悪竜が選んだのが、たまたま女王だっただけでしょ⁉ その時在位してたのが王だったら、絶対悪竜は女に化けて、王をたぶらかしてたって!」
ぶふっとなにか吹き出すような声が聞こえた。
パッと見ると、不愛想な竜倒公爵の顔。
気のせい?
「どうです? 竜倒公爵。あなたたちは悪竜を倒す力でもって、公爵の位をあたえられた。……それなら、今でも竜を倒すくらいの鍛錬をつんでいるのでは?」
今度は竜倒公爵に話をもちかける。
「確かに。王女の言う通りです。竜倒公爵の名に恥じぬよう、日々修業をしております」
「では、結婚の試練として、わたしがアンダーソンと手合わせしてもよろしくて?」
「こら! エレオノーラ!」
「……いいでしょう」
えっ、アッサリ承諾⁉
びっくりしていると、竜倒公爵はふんと鼻で笑った。
「王女のわがままくらい聞いてあげる度量がなければいけませんからな。なーに、うちのアンダーソンなら、きっと勝ちますよ。もしアンダーソンが負けたら、エレオノーラ王女が次期女王になるという推薦もしましょう。この竜倒公爵、ウォルツ家の名にかけてね」
ふうん。強者の余裕ってやつ?
なんだかうまくいきすぎなするけど……。
正直、アンダーソンはともかく、その取り巻きの強さは未知数だし。
でも、これで竜倒公爵の了解も得た!
竜倒公爵の発言の重さは、だれよりも父さんが理解しているはず。
じろっと父さんを見ると、はあ、とため息をついた。
「分かった、エレオノーラ。おまえの言う通りにしよう。アンダーソン公子には、結婚するにあたって、試練を与えると言おう」
や、やったー! 認められた!
マオとみんなで立てた計画の第一歩――結婚の試練を王に認めさせること――は、大成功だよ!
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
【完結】カミサマの言う通り
みなづきよつば
児童書・童話
どこかで見かけた助言。
『初心者がRPGをつくる時は、
最初から壮大な物語をつくろうとせず、
まず薬草を取って戻ってくるという物語からはじめなさい』
なるほど……
ということで、『薬草を取って戻ってくる』小説です!
もちろん、それだけじゃないですよ!!
※※※
完結しました!
よかったら、
あとがきは近況ボードをご覧ください。
***
第2回きずな児童書大賞へのエントリー作品です。
投票よろしくお願いします!
***
<あらすじ>
十三歳の少年と少女、サカキとカエデ。
ある日ふたりは、村で流行っている熱病の薬となる木の葉をとりにいくように、
カミサマから命を受けた。
道中、自称妖精のルーナと出会い、旅を進めていく。
はたして、ふたりは薬草を手に入れられるのか……?
***
ご意見・ご感想お待ちしてます!
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
『空気は読めないボクだけど』空気が読めず失敗続きのボクは、小六の夏休みに漫画の神様から『人の感情が漫画のように見える』能力をさずけられて……
弓屋 晶都
児童書・童話
「空気は読めないけど、ボク、漫画読むのは早い方だよ」
そんな、ちょっとのんびりやで癒し系の小学六年の少年、佐々田京也(ささだきょうや)が、音楽発表会や学習発表会で大忙しの二学期を、漫画の神様にもらった特別な力で乗り切るドタバタ爽快学園物語です。
コメディー色と恋愛色の強めなお話で、初めての彼女に振り回される親友を応援したり、主人公自身が初めての体験や感情をたくさん見つけてゆきます。
---------- あらすじ ----------
空気が読めず失敗ばかりだった主人公の京也は、小六の夏休みに漫画の神様から『人の感情が漫画のように見える』能力をさずけられる。
この能力があれば、『喋らない少女』の清音さんとも、無口な少年の内藤くんとも話しができるかも……?
(2023ポプラキミノベル小説大賞最終候補作)
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
訳あり新聞部の部長が"陽"気すぎる
純鈍
児童書・童話
中学1年生の小森詩歩は夜の小学校(プール)で失踪した弟を探していた。弟の友人は彼が怪異に連れ去られたと言っているのだが、両親は信じてくれない。そのため自分で探すことにするのだが、頼れるのは変わった新聞部の部長、甲斐枝 宗だけだった。彼はいつも大きな顔の何かを憑れていて……。訳あり新聞部の残念なイケメン部長が笑えるくらい陽気すぎて怪異が散る。
魔法少女はまだ翔べない
東 里胡
児童書・童話
第15回絵本・児童書大賞、奨励賞をいただきました、応援下さった皆様、ありがとうございます!
中学一年生のキラリが転校先で出会ったのは、キラという男の子。
キラキラコンビと名付けられた二人とクラスの仲間たちは、ケンカしたり和解をして絆を深め合うが、キラリはとある事情で一時的に転校してきただけ。
駄菓子屋を営む、おばあちゃんや仲間たちと過ごす海辺の町、ひと夏の思い出。
そこで知った自分の家にまつわる秘密にキラリも覚醒して……。
果たしてキラリの夏は、キラキラになるのか、それとも?
表紙はpixivてんぱる様にお借りしております。
月神山の不気味な洋館
ひろみ透夏
児童書・童話
初めての夜は不気味な洋館で?!
満月の夜、級友サトミの家の裏庭上空でおこる怪現象を見せられたケンヂは、正体を確かめようと登った木の上で奇妙な物体と遭遇。足を踏み外し落下してしまう……。
話は昼間にさかのぼる。
両親が泊まりがけの旅行へ出かけた日、ケンヂは友人から『旅行中の両親が深夜に帰ってきて、あの世に連れて行く』という怪談を聞かされる。
その日の放課後、ふだん男子と会話などしない、おとなしい性格の級友サトミから、とつぜん話があると呼び出されたケンヂ。その話とは『今夜、私のうちに泊りにきて』という、とんでもない要求だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる