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15.試練を与えよ!

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「エレオノーラ、おまえより強い人とは、いったいどういうことだ?」
「それはね、父さん。こういうことだよ」
 わたしが詠唱すると、あらわれたのは、サラマンダーのムドー。
「ぎゃあ、モンスター!」
「王、王女! 竜倒公爵も! お逃げください!」
 周りにいた兵士たちが、あわてて動き出す。
「みんな、ストップ。大丈夫、このサラマンダーは、わたしの言うことを聞くから」
 その通り、ムドーはおとなしくしている。
 下にしかれた絨毯がぶすぶすと焦げてるけど、気にしない。絨毯の下は大理石だから、燃え広がることはないでしょ。
「わたし、魔物使いになったの。今契約している魔物たちと、アンダーソンと戦ってもらうから。それで、わたしが勝ったら、この結婚はナシってことで。これは、結婚の試練よ」
「そ、そんなこと、許されるとでも思っておるのか!」
 父さんは王座から立ち上がって、叫んだ。温厚な父さんがここまで怒るとは珍しい。
「後継ぎはどうなる⁉ この国の行く末を考えろ!」
 カッチーン。
 この後におよんで、「後継ぎ」ですか。
 わたしの気持ちなんて、どうでもいいんですか。
 ああ、もう、こうなったら、今まで思ってたこと、全部言ってやる!
「なーにが後継ぎよ! そんなの、わたしでもいいじゃない! こうなったら、女王になってやるわよ!」
「女王はいかん! これはいにしえの竜倒公爵の願いであり……。あの、『愚かな女王』の事件を、繰り返してはならんのだ!」
「あんなの、悪竜が選んだのが、たまたま女王だっただけでしょ⁉ その時在位してたのが王だったら、絶対悪竜は女に化けて、王をたぶらかしてたって!」
 ぶふっとなにか吹き出すような声が聞こえた。
 パッと見ると、不愛想な竜倒公爵の顔。
 気のせい?
「どうです? 竜倒公爵。あなたたちは悪竜を倒す力でもって、公爵の位をあたえられた。……それなら、今でも竜を倒すくらいの鍛錬たんれんをつんでいるのでは?」
 今度は竜倒公爵に話をもちかける。
「確かに。王女の言う通りです。竜倒公爵の名に恥じぬよう、日々修業をしております」
「では、結婚の試練として、わたしがアンダーソンと手合わせしてもよろしくて?」
「こら! エレオノーラ!」
「……いいでしょう」
 えっ、アッサリ承諾⁉
 びっくりしていると、竜倒公爵はふんと鼻で笑った。
「王女のわがままくらい聞いてあげる度量がなければいけませんからな。なーに、うちのアンダーソンなら、きっと勝ちますよ。もしアンダーソンが負けたら、エレオノーラ王女が次期女王になるという推薦もしましょう。この竜倒公爵、ウォルツ家の名にかけてね」
 ふうん。強者の余裕ってやつ?
 なんだかうまくいきすぎなするけど……。
 正直、アンダーソンはともかく、その取り巻きの強さは未知数だし。
 でも、これで竜倒公爵の了解も得た!
 竜倒公爵の発言の重さは、だれよりも父さんが理解しているはず。
 じろっと父さんを見ると、はあ、とため息をついた。
「分かった、エレオノーラ。おまえの言う通りにしよう。アンダーソン公子には、結婚するにあたって、試練を与えると言おう」
 や、やったー! 認められた!
 マオとみんなで立てた計画の第一歩――結婚の試練を王に認めさせること――は、大成功だよ!
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