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8. メロウの帽子
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「マオ、今、キヨコはどうなっているの?」
「ああ、その冒険者につきしたがって、地上へ向かっているそうだ」
キヨコがいたのは地下三階の水のエリアだから……。
今ふたりがいるのは、地上に近い、地下二階の火のエリアか、地下一階の風のエリアってことだよね?
早く、助けに行かなくっちゃ!
「あわてんな、エート。まずは当時の状況の確認と、その冒険者についての情報をマオから聞くべきだろ」
思わずイスから立ち上がったわたしの腕を、ヴァンがつかんだ。
「だって、もしかしたら脱出魔法を使われるかもしれない! 街に出たら、もう追えなくなっちゃうよ!」
居ても立っても居られない。
もう、キヨコに会えなくなっちゃうの? そんなの、嫌だ。
「落ち着けっての。脱出魔法に関しては大丈夫だ。よく考えろ」
ヴァンはゆっくりと、言い聞かせるようにわたしに向かってそう言った。
ええと、脱出魔法は、空間魔法の一種。本来なら、使うのは超難しい。
でも、このお試しダンジョンでは、脱出魔法サービスをおこなっている。
マオは空間魔法が得意だからね。
お客様は、専用の魔法陣に、ダンジョンへ入る前に魔力をきざみこむ。
で、ダンジョン内で呪文を唱えたら、ちょっとの魔力と引き換えに、地上に戻れるようになってるんだ。
ひとりにつき、ひとつの魔法陣を描かないとダメ、なんだよね。
お試しダンジョンだから、拾った素材とかは持って帰れるけど、生き物ーーつまり、モンスターは持ち出せないようにしてるって、マオが言ってた。
……そうだよ、そんなことも忘れるくらい、わたしはあせってたのか。
ということは。
「その冒険者は、階段を上って地上に戻る以外、キヨコを連れては脱出できないってこと?」
「そういうことだ」
ヴァンの言葉に、ひとまずは安心する。
「……ただし、階段をのぼって、地上に戻った場合は、すべての持ち物は冒険者のものになるという決まりがある。キヨコを取り戻せるのは、犯人がダンジョン内にいる間だけだな」
マオはそう言って、管理人たちに捜索場所の割り振りを始めた。
静かな声の中にも、キヨコを救いたいっていう熱い心が伝わってくる。
さすがは管理人長。緊急時には、こんな風に支持を出してくれるんだね。
他の管理人たちの意見も取り入れながら、次々と持ち場を決めていく。
うん、これなら、大丈夫。
待っててね、キヨコ。絶対助けてあげるから!
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「あわてんな、エート。まずは当時の状況の確認と、その冒険者についての情報をマオから聞くべきだろ」
思わずイスから立ち上がったわたしの腕を、ヴァンがつかんだ。
「だって、もしかしたら脱出魔法を使われるかもしれない! 街に出たら、もう追えなくなっちゃうよ!」
居ても立っても居られない。
もう、キヨコに会えなくなっちゃうの? そんなの、嫌だ。
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ええと、脱出魔法は、空間魔法の一種。本来なら、使うのは超難しい。
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「そういうことだ」
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「……ただし、階段をのぼって、地上に戻った場合は、すべての持ち物は冒険者のものになるという決まりがある。キヨコを取り戻せるのは、犯人がダンジョン内にいる間だけだな」
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静かな声の中にも、キヨコを救いたいっていう熱い心が伝わってくる。
さすがは管理人長。緊急時には、こんな風に支持を出してくれるんだね。
他の管理人たちの意見も取り入れながら、次々と持ち場を決めていく。
うん、これなら、大丈夫。
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