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5. ダンジョン・マンションの日常

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 三日目は、ヴァンと一緒にダンジョンの点検と掃除だった。
 お試しダンジョンでは、冒険者はお客様だ。
 冒険者たちは、お金を払ってやってきて、ここで自信と力をつける。それから、本番ともいえる他のダンジョンへと挑戦しにいく。
 そのお客様のためにも、なるべく心地よくダンジョンで過ごしてもらわないとね。
 まずは、お客様とモンスターとの戦闘で破壊された場所の点検。
 壁に穴が空いたり、ヒビがわれたところには、土の系統のモンスターである、ノームたちが派遣される。
 ノームは、わたしのひざ下くらいのちっちゃい小人で、ひげがもじゃもじゃしたおじいさんって感じの外見。だけど、ものすごく力持ちだ。わたしなんて、ひょいっと持ち上げられてしまった。ノームたちにかかれば、あっという間に修理が完了してしまう。
 あとは、お掃除。
 お掃除の時間は素材回収の時間でもあるんだよね。
 モンスターは冒険者に倒されると、自分の体の一部(鱗、牙、羽、爪などなど)や、お金、お宝などを残して消えちゃうんだって。
 ちなみに消えてどうなるかは、怖くてヴァンに聞けなかった。
 だって、その、たぶん、そのモンスターが死んじゃうってことだもんね。うう、気になるけど怖い。
 それで、冒険者の中には、そのモンスターの体の一部(これらは「素材」って呼ばれているよ)を拾っていく人もいれば、いかない人もいる。ってことで、わたしたちがそれを回収するのだ。
 素材は加工されて、武器や防具、アクセサリーといった、装備品になる。
 装備品っていうのは、身に着ければ、攻撃力や防御力、魔力や体力とかがアップするものだよ。
 管理人の中に、装備品を作るのが得意な人がいるから、その人に集めた素材をわたすんだ。あと、ヴァンも簡単なアクセサリーなら作れるって言ってたな。
 んで、できあがった装備品は、売店で売ったり、ダンジョン内の宝箱に入れておくんだって。そうすれば、冒険者たちがそれをゲットできるってワケ。
 あとは、冒険者たちが残すお金も回収するよ。
 冒険者たちは、モンスターにやられる前に、外に脱出しないといけない。でも、戦いで魔力を全部使ってしまった……! ってなったら、頼りになるのはお金。
 お金であるコインには少量だけど魔力が含まれているんだ。だから、お金の魔力を使って、脱出呪文を唱える。すると、お金と引きかえに、ダンジョンを脱出できるっていう風になっているんだ。
 ダンジョン内にいきなりお金が落ちてると思ったら、そういうわけがあったのね。
 そのお金も、半分はいただいたあと、あまりはダンジョン内の宝箱に入れちゃいます。お金の魔力は、一日もすればもとにもどるらしいから、また脱出の時に使えるんだって。
 ダンジョンの一階を掃除するだけでも、ものすごく時間がかかるから、お試しダンジョンが閉店している間に、管理人総出でやるのだ。
 さて、今日は四日目。何が起こるのかな?
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