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3.職業判明!
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「王は何よりも強く、たくましい、まさに火の象徴であります。そんな王が、薬が苦すぎてイヤなどと……。たいへん失礼いたしました」
わたしは深々と礼をする。
「ふむ。まあ、許してやろう」
「ありがとうございます。そうですよね、お薬が苦くて飲めないなんて、街の子どもでもあるまいし……。王にはそんな心配、無用でございました。きっと、攻撃をするようになったのも、うちのヴァンが王に失礼な態度をとっていたからでしょう」
「ああ、その通りだ。その小僧はいつも失礼で困っている」
ヴァンがものすごい顔をしてこっちを見ている。しかし、わたしにまかせると言った手前、何も言ってこないのが救いだ。
「どうか、ヴァンの失礼な言動を許してはくれないでしょうか?」
「ふむ、まあ、いいだろう。わしは寛大だからな」
「ありがたき幸せにございます。……では、薬を、わたくしの方で毒味させていただきますね」
「えっ」
サラマンダーも、ヴァンも、声を上げた。
わたしはガラス瓶を開けると、ぐっとその中身を飲みこんだ。
……ぐえええ! ナニコレ苦いっ! そのあとしぶみとわずかなえぐみがくる!
あと、思ったよりとろみがあって、飲みこみづらいことこの上ない!
なんてこと顔に出さずに、ごっくんと飲みこむ。
「さあ、毒味もすませました。これでも、薬を飲まないなどとはおっしゃりませんよね?」
ね? と、わたしの持てる最大限の圧力を目にこめて、サラマンダーを見つめる。
しばしにらみあいが続き……。
サラマンダーはぐぬぬぬとうなっていたが、しばらくすると、わははと笑い出した。
「小娘め、やりおったな。まんまとのせられたわ。毒味までされてはな。よし、その薬、飲もうじゃないか!」
やった! さすがは王、のせられたと分かっても、器が大きい!
と思ったら、すかさずヴァンがわたしから薬をうばい、口を開けているサラマンダーにむかって薬を流しこんだ。
ぎゃー、そんな、いきなり!
サラマンダーはわたわたと体をもだえさせ、ごっくんと薬を飲みこむと、怒り出した。
「ぬぬぬ、何をするかぁっ! やはり許せん、小僧!」
「あ? おまえが飲むって言ったんだろ?」
「こ、心の準備があるじゃろうが! めちゃくちゃ苦かったぞ!」
「苦いのはほんの数秒だろーが!」
「後味が引くんじゃ! 舌がしびれるようにしぶみがきとるわ!」
ぎゃんぎゃんとヴァンとサラマンダーが言い合いをしているが、わたしはへたりこんでしまった。
こ、怖かった~! 精神的に、もうボロボロだよぅ……。
すると、頭をなでられる感触。
「よくやったな、エート。これで、きみは晴れてこの『ダンジョン・マンション』の管理人だ」
いつの間にか、マオが姿をあらわして、わたしの頭をなでていた。
わ、優しい顔……。いつもはキツイ目が細められて、口元にも笑みが浮かんでいる。
無表情で無愛想だと思ってたけど、こんな顔もできるんだ。
「このマンションの管理人となったからには、おれも、ヴァンもきみの家族になったと言っていい。きみをできる限りのものから守ってやるし、きみもおれたちの力になってくれ」
家族……。その言葉に、胸がじんとする。
よかった、わたし、ここにいてもいいんだ。
自分で、その権利を勝ち取ったんだ。
マオはまだわたしの頭を優しくなでている。
達成感とくすぐったさと恥ずかしさ。
でも、無性にだれかに甘えたい気持ちもあって、わたしはしばらくなでられるままになっていた。
わたしは深々と礼をする。
「ふむ。まあ、許してやろう」
「ありがとうございます。そうですよね、お薬が苦くて飲めないなんて、街の子どもでもあるまいし……。王にはそんな心配、無用でございました。きっと、攻撃をするようになったのも、うちのヴァンが王に失礼な態度をとっていたからでしょう」
「ああ、その通りだ。その小僧はいつも失礼で困っている」
ヴァンがものすごい顔をしてこっちを見ている。しかし、わたしにまかせると言った手前、何も言ってこないのが救いだ。
「どうか、ヴァンの失礼な言動を許してはくれないでしょうか?」
「ふむ、まあ、いいだろう。わしは寛大だからな」
「ありがたき幸せにございます。……では、薬を、わたくしの方で毒味させていただきますね」
「えっ」
サラマンダーも、ヴァンも、声を上げた。
わたしはガラス瓶を開けると、ぐっとその中身を飲みこんだ。
……ぐえええ! ナニコレ苦いっ! そのあとしぶみとわずかなえぐみがくる!
あと、思ったよりとろみがあって、飲みこみづらいことこの上ない!
なんてこと顔に出さずに、ごっくんと飲みこむ。
「さあ、毒味もすませました。これでも、薬を飲まないなどとはおっしゃりませんよね?」
ね? と、わたしの持てる最大限の圧力を目にこめて、サラマンダーを見つめる。
しばしにらみあいが続き……。
サラマンダーはぐぬぬぬとうなっていたが、しばらくすると、わははと笑い出した。
「小娘め、やりおったな。まんまとのせられたわ。毒味までされてはな。よし、その薬、飲もうじゃないか!」
やった! さすがは王、のせられたと分かっても、器が大きい!
と思ったら、すかさずヴァンがわたしから薬をうばい、口を開けているサラマンダーにむかって薬を流しこんだ。
ぎゃー、そんな、いきなり!
サラマンダーはわたわたと体をもだえさせ、ごっくんと薬を飲みこむと、怒り出した。
「ぬぬぬ、何をするかぁっ! やはり許せん、小僧!」
「あ? おまえが飲むって言ったんだろ?」
「こ、心の準備があるじゃろうが! めちゃくちゃ苦かったぞ!」
「苦いのはほんの数秒だろーが!」
「後味が引くんじゃ! 舌がしびれるようにしぶみがきとるわ!」
ぎゃんぎゃんとヴァンとサラマンダーが言い合いをしているが、わたしはへたりこんでしまった。
こ、怖かった~! 精神的に、もうボロボロだよぅ……。
すると、頭をなでられる感触。
「よくやったな、エート。これで、きみは晴れてこの『ダンジョン・マンション』の管理人だ」
いつの間にか、マオが姿をあらわして、わたしの頭をなでていた。
わ、優しい顔……。いつもはキツイ目が細められて、口元にも笑みが浮かんでいる。
無表情で無愛想だと思ってたけど、こんな顔もできるんだ。
「このマンションの管理人となったからには、おれも、ヴァンもきみの家族になったと言っていい。きみをできる限りのものから守ってやるし、きみもおれたちの力になってくれ」
家族……。その言葉に、胸がじんとする。
よかった、わたし、ここにいてもいいんだ。
自分で、その権利を勝ち取ったんだ。
マオはまだわたしの頭を優しくなでている。
達成感とくすぐったさと恥ずかしさ。
でも、無性にだれかに甘えたい気持ちもあって、わたしはしばらくなでられるままになっていた。
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