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5.生きた宝石
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その日の夜。
夕飯を食べた、午後七時。おれはこっそりと瞬間移動で部屋を抜け出した。
ウチ、門限夕方六時なんだよな。
おれとしてはもうちょいのばしてほしいんだけど、
父さんと母さんいわく、「危ないからダメ」だそうだ。
いや、おれ、エスパーなんだけど?
母さんは普通に「リキくんに何かあったらたいへん!」って考え。
父さんは、「リキヤが不審者相手に何かしたらたいへん!」って考えだった。
うん、父さんが圧倒的に正しいな。
移動してついたのは、学校の上。
そう、空中です。
防犯カメラとかに映ると面倒だからな。
「おーい、待ったか?」
マナトは、ホウキにのってやってきた。
ノワールもいっしょだ。
「うぃーす。
今来たとこだ」
「お、よかった。
じゃあ、ドラゴン見学ツアー、するか」
マナトはにかっと笑った。「ドラゴン」という言葉に、
おれのテンションがどんどん上がっていく。
でも、それを悟られるのはなんだか恥ずかしくて、「おう」とだけ返した。
マナトはそれを聞いて、今度はチェシャ猫みたいに、にま~っと笑った。
「オマエ、そうとう楽しみにしてるだろ?」
くそう、お見通しってワケか。
「……ああ! そうだよ! 悪いか!
生で幻獣を見れるなんて、わくわくすんに決まってんだろ!」
やけくそで言うと、
マナトは「ごめんごめん、ちょっとからかっただけだって」
と手を合わせて謝った。
両手をはなしてもホウキから落ちないのはさすがだ。
「さて、魔法界と人間界の話はしたよな?
で、この絵空市には、ゲートがあきやすいって話も」
マナトの問いに、こくりとうなずく。
「そのゲートから、最近ジュエルドラゴンが人間界に来たって話を父さんがしててさ。
しかも、なぜかずっとおれらの学校の周りにいるらしいんだ」
「ジュエルドラゴン?」
「ああ。『生きた宝石』って言われるほど、
めちゃくちゃきれーなドラゴンなんだ」
「生きた宝石」かぁ。
く~っ、どんなドラゴンなんだ⁉
そこで、ふと思う。
「そのジュエルドラゴンだっけ?
ソイツはこっちに来て、おれたち人間に見つかったりしないのか?」
「ああ、そこらへんは大丈夫。
いったん魔法界の幻獣が人間界に出たら、
人間が見えるようになるまでしばらく時間がかかるんだよ。
幻獣は生き物というより、精霊に近いから。
いわゆる、グーラの法則な。
だから、その幻獣が人間界の物体に影響をおよぼすまでにも、
しばらく時間がかかって……」
マナトは、
「人間界での幻獣物体化は~」とか、
「精霊学によると認識の重要性が~」とか、難しい話をしだ。
やっぱ飛び級してるだけあって、頭がいいんだろうな。
でも、おれには魔法界の法則なんて、サッパリだ。
早くドラゴンが見たい。
「ストップ、ストップ!
とりあえず、今は見えなくなってるってことでOK?」
「あ、ごめん。それでいい。だから、ほい」
マナトからわたされたのは、メガネ。そういえば、マナトはメガネ姿だ。
「これをかければいいのか?」
おれはワクワクしつつ、かけてみた。
瞬間。
「くおおおぉぉぉ!」
と、獣のような巨大なおたけび。耳がキーンとする。
なんだ⁉ と思って、声のした方を向くと……。
そこにいたのは、トカゲの体に、コウモリのような翼をもち、
額には角のある生き物……、
まさしく、想像していたドラゴンが空をとんでいた。
いや、想像通りじゃないな……。
想像より、ずっと、ずっとキレイだ。
体は細身で、しなやか。
でもめちゃくちゃ大きい。
ゾウを二頭並べたくらいか?
ウロコの一枚一枚が、角度によって、虹のように様々な色合いに変化していく。
サファイアのように青くなったと思ったら、ルビーのように真っ赤にもなる。
二本の角は、ダイアモンドのように透き通って、ギラギラと輝いていた。
まさに、「生きた宝石」の名前がふさわしい。
「すげえ……」
ため息まじりの声に、「だろ?」とマナト。
「おれさ、ずっと人間界のヤツにも、こういうの見せたかったんだ。
すげーだろ、おれの世界の生き物!」
そう言ったマナトの瞳はきらきらと輝いていた。
そっか。
ドラゴンがいる、なんてヒミツ、他のやつには言えないもんな。
「ああ、めちゃくちゃすげーよ!
ありがとな、見せてくれて!」
そう言うと、マナトは誇らしげ胸をドンドンッとたたいたあと、
びしっとグーサインをした。
ははっ、カッコつけめ!
「もっと近くに行ってみよう」
「ええ⁉ 大丈夫なのかよ」
「大丈夫だって。
ジュエルドラゴンはおとなしいから」
マナトはホウキをあやつり、どんどんジュエルドラゴンに近づいていく。
おれも、おそるおそるあとに続いた。
「くおおおぉぉぉん!」
うお、また鳴いた! マジで大丈夫か⁉
てか、この声も、メガネをしてない限り人間界のやつらには聞こえないんだな。
魔法って、やっぱすげえ。
とうとうマナトは、ジュエルドラゴンの顔のすぐそばに並んだ。
そのまま、顔をなでてやっている。
すると、「きゅるるるっ!」とジュエルドラゴンが目を閉じ、
うれしそうな声を出した。
おお、なんかかわいいな……。
「ほれ、リキもやってみ?」
「お、おう……」
おれは緊張しながら、ジュエルドラゴンに近づいた。
「よ、よろしく」
そのまま、そっと顔のほほのあたりをなでてやる。
思ったよりも表面はすべすべしていて、ちょっとひやっとしていた。
「きゅるるるんっ!」
……! ははは、すげえ! おれ、ドラゴン触っちまった!
思わず、ぎゅーんっと急上昇して、空中で宙返りをする。
「あー、もう、サイコー!」
おれの叫びは、空にとけていった。
それからしばし、おれとマナト、そしてジュエルドラゴンは、
夜空の散歩を楽しんだ。
きらきらと輝く星に、遠い下に見える、街の灯りたち。
おれはきっと、この空中散歩を一生忘れないだろう。
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