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人造能力編

謎の生物

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南北高校 校長室 a.m.9:30

「やぁ、よく来てくれたね」

「いきなり呼び出しなんて、何なんですか?」

とある高校の校長室。そこには中年男性で太った校長にその他2人の男がいた。

「いやぁね。君達にいい知らせがあってね。これからの事について話し合おうかと」

「それは一体……」

赤いジャージを着た1人の男が言うと、校長はニヤリと笑みを浮かべこう言った。

「……『正義の盾』の総帥、ケリー・マキリアスが死んだ」

「「!!」」

男2人は驚いた顔で校長を見た。校長は変わらずニヤニヤしている。

「校長……それは本当なのですか?」

「ああ、本当だ。奴が死んだことでついに我々が行動できるようになったということだ」

「おお!遂に俺達が動くんですね!」

「そう慌てるな赤松。それで、ようやく計画の準備ができるのですね?」

「ああそうだよ木嶋君。これで儂の計画は心置き無く進めることが可能になった」

赤ジャージ姿の男性、--赤松 誠一--。
勤務時間に着ているスーツの男性、--木嶋 義明--。
そしてこの学校の校長--佐原 晴信--。
校長が考えている計画を成し遂げるために、赤松と木嶋はそのサポートをしていた。

「さぁ2人とも。これからの事について、色々話そうじゃないか……」

(儂の計画の為にも……な)


一方その頃。

「……暇だ」

今日は5月中旬頃の日曜日。特にやることもなく俺--黒田和斗は自分の部屋でゴロゴロしていた。
宿題も一通り終わったし、隼人は用事があるらしいし、妹の楓は部活だし、昼飯までまだ時間あるし……

「はぁ……」

「昼飯ついでに街に出かけるか……買い物もしないといけないし」

そして俺は色々と支度をし、家の戸締りをして外へ出た。


-----


a.m.11:30

俺は徒歩15分くらいで着く近くの市街地に来ていた。最初に古本屋に寄って2時間近く漫画の立ち読みをしていた。そして腹が減った頃だからそろそろ昼食をとろうと思い、俺は古本屋を出て今日はどこの店で食べようかと飲食店を探しながらテキトーにぶらぶらと歩いていた。

すると俺の目にオロオロとしている1人の女性が写った。
身長は普通くらいで整った顔立ち、長くて綺麗な金髪を三つ編みにしている。服装は群青色のトップスで亜麻色のロングスカートを着用していた。外国人なのか?

「……!」

「あっ……」

あきらかに困っていた女性外国人と目が合ってしまう。そしてその外国人が小走りでこちらへと向かってきた。
やばいやばいどうしよう!俺英語話せねぇよ!

「あの……すみません。道に迷ってしまって……」

「……へ?」

その外国人は普通に日本語で話しかけて、持っていた地図を俺に見せる。

「ここのマンションに行くにはどうしたらいいでしょうか?」

「……えっと」

「……もしかして、分からないんですか?すみません、無駄な時間を取らせてしまって……」

「い、いえ!分かります!分かりますとも!えっとですね……」

驚いた。この外国人は英語で道を訪ねてくるかと思えば、日本語を普通にペラペラ喋っていた。外国から来たにしては普通の日本人並みに日本語がうまかった。

「まずは北に進んでこの市街地を出て、そこから少し真っ直ぐ進むと2つの曲がり角が見えます。そこへ左へ曲がって後はひたすら真っ直ぐ進めば着きますよ」

「わぁー、随分とお詳しいんですね」

「まぁ、地元ですから……」

「そうだったんですか~。助かりました、ありがとうございます」

そしてその女性は深々と頭を下げた。

「い、いえ。どういたしまして」

するとグゥ~……と情けない音が鳴る。ちょうどその時に車はあまり通っていなかったから少しざわついてても聞こえた。

「……///」

「……えっと……」

彼女の顔がみるみると赤くなっていくのが分かる。犯人はこの人か……

「……その……できれば、ここらで美味しい飲食店も教えていただけませんか……?」

そしてその女性は恥ずかしそうに言った。ちょうど腹が減ったことだし、俺はそのお願いをいいですよと承諾した。

「ありがとうございます!」

「いえいえ。えっと……何かこれが食べたいというのはありますか?」

俺は彼女が今何が食べたいのかを聞いた。彼女の気分で行く店が変わるからである。

「そうですね……。’’ラーメン’’というものを食べてみたいです」

「ラーメンですか?」

てっきり俺はイタリア料理店やフランス料理店など高そうな所に行くのかと思っていた。

「ええ。私はフランスから日本に帰ってきたばかりで、この際にまだ食べたことの無いラーメンを食べようと思いまして」

「貴女、フランス人なんですか?」

「はい。生まれはフランスですが小学生の頃までは日本で育って、急に親の故郷であるフランスに帰ることになりました。ですがまたこうやって日本に戻ってくることができたんです」

なんと。彼女はフランス人だったのか。

「あっ、自己紹介が遅れましたね。私は、--茅野 アリス--といいます。よろしくお願いします」

「えっと、黒田和斗です。こちらこそよろしくお願いします」

お互いにペコリと頭を下げる。

「えっと……。それじゃあ行きましょうか。旨いラーメン屋さん知ってるんですよ」

「ええ、行きましょう。和斗さん♪」

そして俺はこの茅野アリスというフランス人の美人とラーメン屋へと歩き始めた。


-----


ガラガラ

「ラッシャーい。お、和斗じゃねぇか!」

「久しぶり、店長」

ラーメン屋、『一郎』。俺が小学生の頃から隼人とよく行っていた店だ。

「ここが……」

アリスはキョロキョロと興味津々に見回していた。

「なっ……和斗、ついに女ができたか!」

「えっ!?いや、違うよ店長!」

「違いますよ!そもそも会ったのは今回が初めてで……」

「またまた~。和斗もやるようになったなぁ~」

店長はニヤニヤしながら俺をからかってくる。
店長のいじりがひと段落したところで空いてる席に座り、メニューを見る。

「おぉ……どれも美味しそうですね……」

アリスはメニューをじっくり眺める。俺はこの店に来ていつも食べていたチャーシュー麺と餃子を頼む予定だ。
アリスが決まりましたと言って店員を呼ぶ。俺はいつものを頼むとアリスは

「このジャンボラーメンでお願いします」

「……ん?」

ジャンボラーメン……だって?

「店長ー!久々にチャレンジメニューの注文を頂きましたー!」

「はいよぉ!待ってました!」

周りの盛り上がった雰囲気にアリスは不思議な顔をして

「いったい、何をそんなに盛り上がってるんでしょうか?」

と言った。

ラーメン屋『一郎』に存在するあるチャレンジ。それは『一郎』オリジナルのジャンボラーメンを完食することである。
ジャンボラーメンとは、麺7玉にそこから野菜炒めをドンと乗せて、おまけに器の周りにはチャーシューがズラリと8枚で約8キロの重さはある超ビッグなラーメンなのだ。

一回俺もそのチャレンジに挑んだことがある。朝食、昼食を抜いて超空腹なときに挑んだが、半分食べたところで限界がきて、チャレンジは失敗した。ちなみにこのチャレンジに成功するとチケットが貰えて、次店に来た時にそのチケットを使うと一品だけ無料で食べられるというものだ。

「へいおまち!こちらジャンボラーメンでい!」

アリスの目の前にただならぬ存在感を放つラーメンが置かれる。

「わぁー!美味しそうです!」

そしてアリスは割り箸を手に取って、

「いただきます」

ジャンボラーメン完食に挑戦した。


-----


「ここのラーメン、本当に美味しいですね!あ、その餃子1個貰っていいですか?」

食事を開始してから10分が経った。ジャンボラーメンは既に半分食べており、さらにそこから俺が頼んだ餃子を貰っていいかと聞かれた。

「別にいいけど、お腹大丈夫なのか?」

「大丈夫です。これくらいなら余裕で食べれますよ」

それマジで言っているのか?あのジャンボラーメンを余裕で食べれるだと?どんな胃袋してるんだ……

「♪~」

そしてアリスは、早いペースでどんどんラーメンを食べた。



30分後……

「ふぅ……ご馳走様でした」

「マジで完食しやがった……」

あのジャンボラーメンをアリスは見事に完食した。チャレンジは成功してチケットを貰い、お会計を済ませて俺達は店を出た。

「あそこのラーメン凄く美味しかったですね。もうお腹いっぱいです」

「そりゃそうだろうよ……」

「チケットも貰ったし、また今度行くとしましょう……また挑戦するのもいいかもしれません……」

店長涙目だな……

「あー!やっと見つけたわ、アリス!」

すると1人の女性が声を上げて近づいてきた。

「あ、姉さん」

「もう、いつまでたっても家に来ないから心配したのよ?」

「ごめんなさい。道に迷ってしまった挙句お腹がすいちゃって……」

「全くもう……」

銀髪でツインテールの女性は呆れた様子だった。

「ごめんなさいね、この娘が迷惑かけなかった?」

「い、いえ。全然大丈夫ですよ」

「ちなみにアナタはアリスとどんな関係で?」

そう言うとその銀髪の女性はジト目で俺に問いかけた。

「アリスさんに道を聞かれたからそれに答えると今度はお腹が空いたと言ってたから美味しい店を紹介しただけですよ」

「……そう」

「あはは……」

アリスは申し訳なさそうな苦笑いをした。

「迷惑をかけてしまいましたね。色々とありがとうございました」

そう言って銀髪の女性がペコリと頭を下げた。それに続いてアリスも頭を下げる。

「いえいえ、どういたしまして」

「ふふふっ。それじゃあ行きましょうか、アリス」

「ええ。またお会いしましょう、和斗さん」

そう言い残して2人は去って行った。また会えるといいなと思いながら俺はスーパーマーケットへと足を運んだ。


-----


p.m.16:40

「ふぅ~……買った買った」

俺は一通り買い物を済ませて、両腕に買い物袋をぶら下げながら歩いていた。
市街地と住宅地を繋ぐ大橋を歩いているとそこである人物と出会う。

「あ、和斗君!」

「おー、セリカじゃん」

その白髪の美人は俺の同級生であり、友達でもあるセリカ・マキリアスだ。
セリカとは1週間前に発現能力がきっかけで知り合い、今では大切な友達の1人だ。

「和斗君、買い物してたの?」

「まぁな。夕食の買出しってところ。そういうセリカはなんでこんな所にいるんだよ?」

「ちょっと暇だったから本屋行ってたんだ。そこで何冊か買ってきたところ」

「なるほどな。セリカって本読むんだな」

「うん、結構好きだよ!あ、そうだ。そういえばこの前ね---」

そして俺達は時間を忘れてここで色々と話をしていた。


20分後……

「おっと、もうこんな時間か。日が暮れちまう前に帰ろうぜ」

「うん、一緒に帰ろ!荷物片方持つよ」

そう言うとセリカは右腕にぶら下げてた荷物を取った。

「いや、いいよそんな。重いだろ?」

「これくらい大丈夫!家まで持つの手伝うよ!」

「……じゃあお願いしようかな」

「えへへ、まっかせて!」

結構セリカは強引なところがあるなぁと思いながら家に向かって歩き始めようとすると






ウアアァ……


突然後ろからうめき声がした。俺はその声が気になり、後ろを振り返ると……


アアアア……


「……え?」


そこには赤黒くて身体に寄生虫を付けている得体の知れない化物が、そこにいた。

その化物を口を大きく開けて首を長くし、俺達を喰らおうと襲ってくる。

「セリカ!!」

「えっ、どうし--キャッ!」

俺は荷物を投げ捨てて襲われそうになったセリカを突き飛ばして回避させ、俺もその攻撃をギリギリで避けた。

「ごめんセリカ!大丈夫か!?」

「ちょっと、いったい何……えっ……」

セリカもその化物の姿を見て固まる。こいつは一体何なんだ?能力者なのか?

「……うそ……」

セリカが怯えた目で化物を見ている。

「なんで……なんで……アナタが……生きてるの……?」

「おい、セリカ!あれの正体を知っているのか!?」

「やだ……嫌だ……もうあんなことは……やめて……」

セリカは腰を抜かしてビクビク震えていた。

「くっ……!」

「《InFinite》!」

ゴオッ!

俺はセリカの前に立ち、能力を発動させた。

(まずは相手が何なのかを調べないと……なら発動するのは……)

「《phantom》!」

ズズズ……

そして俺の体から剣を持った紫色の偽騎士が現れる。

「行け!」

「□□□□□ー!!」

偽騎士は化物に接近し、化物の体を剣で斬りつける。体は真っ二つになって上半身がボトっと落ちた。

「……もう終わりか?」

あっけなくその勝負は決したかに見えた。だが……



グチュグチュ……



「なっ……」

先程斬った上半身から無数の蟲が下半身へと繋がり、上半身ごとくっつけてしまった。

そしてのろのろと遅い動きでこちらに近づいてくる。

「こいつ……再生するのか!?」

「再生……やっぱり、あの人なの……?」

セリカは未だに恐怖して動けそうにない。ここは何としても食い止めなければ……!

「それなら……!」

偽騎士は化物と距離を置き、周りに複数の剣を複製する。そしてその剣を化物に向けて飛ばした。それは全て命中して、化物の身体に複数の剣が突き刺さる。
動きは止まったものの、再生してまたすぐに行動を再開した。

「くそっ!なんなんだこいつは!」

するとまた化物の首が伸びて、俺に襲いかかってくる。

「□□□□□ー!!」

偽騎士は化物が大きく開いた口の中に持っていた剣を突き刺すと同時に複製した残りの剣を口の中に飛ばした。

また動きは止まったものの、グチュグチュと嫌な肉の音をしながら再生する。

「くそっ!これじゃあキリがない……」

(こうなったら……)

俺は《phantom》を解除して、体の自由を取り戻す。そしてセリカをグイッと横抱きの形で抱き上げた。

「え……わっ!」

(戦略的撤退!)

「《beast》!」

魔力回路のリミッターを解除し、オーラを纏う。

「セリカ、しっかり捕まってろ」

「う、うん……」

セリカがしっかりと捕まっているのを確認する。俺は全力で地面を蹴ってジャンプし、近くの建物の屋根に着地。そして次の近くの建物の屋根にジャンプする。

そうして次々と移動しながら俺達はあの化物から逃げた。
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