今日から異能者になりました

ネム男

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『特異点』編

《InFinite》

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p.m.16:20

俺は開いた口が塞がらなかった。まさか舞までもが異能者だとは思いもしなかったからだ。自然に俺は鳥肌が立っていて、空気がピリピリしている。

「さぁ、行きなさい!私の部下達よ!奴をバラバラにするのデス!」

ジギルは部下達に命令を下す。そして修道服の人達は剣を取り出して、一斉に舞に襲いかかる。

「フゥー……」

舞は息を吐くと思いっきり地面を蹴って、目に止まらぬスピードで修道服の1人を片手で突き飛ばした。舞が蹴った地面はヒビどころか少し崩れていた。

ドゴッ!バギッ!

舞は次々へと修道服の男達を撃退している。凄い……まさか舞がここまで強いとは……

「いい!いいデスネ!わだじ興奮してぎまじだ!」

ジギルは身体を震わせて興奮していた。

「あの小娘がここまでやるとは!やはり人生何が起こるかわからない!!」

全くもってその通りだ。人生本当に何があるかわからない。
そう思っていると舞が修道服の4人に囲まれ同時に襲いかかる。

が、舞は拳を地面に叩きつけて風圧を起こし、4人同時に怯ませる。その隙に1人の頭を鷲掴みして、隣のもう1人に投げつける。続いて1人を地面にめり込む勢いで踏みつけて、襲いかかるもう1人を片手で弾き飛ばした。
もう戦い方がめちゃくちゃで、まさに獣のように見えた。

「……」

数分もしないうちに、20人いた修道服の人達は全員倒されていた。

「ケケケケッ!凄いデスネェ~。まさしく獣!その力を使いこなすのには相当苦労したのでしょう」

「えぇ……本当に苦労したわ」

「では、私も見せるとしますか……」

ジギルはそう言うと背後から黒い影が集まってくる。

「発現……《デス・ハンド》」

そう言うとジギルの背中から黒い手がうねうねと5本現れる。

「さぁ……素敵な宴をハジメマショウ!」

ジギルの黒い手が一斉に舞に襲いかかる。舞は黒い手を躱しながら徐々に距離を詰めてきている。黒い手は休むことなく次々へと襲いかかる。舞も凄いがジギルもあいつのスピードについて行って攻撃しているから相当腕の立つやつだ。

「フフフ、イイですねぇ。よく避ける……」

「ちっ……しつこいわね……」

「ほらほら逃げるがいい!さもなければ捕まっちゃいますよぉー!」

「ちっ……」

(このままじゃ埒が明かない。私の魔力が切れるのも時間の問題……こうなったら……)

舞はジギルから距離を取って動きをストップさせる。

「おや?わざわざ止まるとは……諦めました?」

「そう思うなら勝手にそう思ってなさい」

そして舞はクラウチングスタートの構えに入る。

「まぁいいでしょう……楽に殺してあげますよ!」

そうしてジギルは5本の黒い手を舞に向けて伸ばした。

(まだよ……まだ我慢……)

「舞!!」

何やってるんだ!早くしないと殺られてしまうぞ!

(まだ……まだ……)

黒い手が舞に近づく。その距離は僅か1mになると--

バシュッ!

「消えた!?」

舞は一瞬のうちに姿を消した。俺はどこに行ったと必死に周りを見渡す。

「なっ……!?」

気がつくと舞はジギルのすぐ近くまでジャンプしていた。そしてそのまま殴りかかろうとする。

ガッ!

「はい!ご苦労様です!」

「なっ……!」

しかし舞は黒い手に首を掴まれてしまった。

「なん……で」

「んフフフ。確かにアナタの作戦は立派なものでした。5本の手をギリギリまで引き寄せて私本体への守りを薄くするためでしょう?しかし!私はこれでも慎重な性格でしてねぇ……1本隠しておいたんデスよ」

そう。ジギルは最初に5本の手を出していた。しかし今見たら1本増えている。ジギルの《デス・ハンド》は6本だったのだ。

「こ、こい……つ……」

ギリギリと舞の首を絞める。伸びた残りの腕も舞の身体を拘束し、抵抗できないようにした。

「あっ……がっ……」

「んフフフフフフフフフフ!たまりません!その悶える顔!!死に逆らうその必死な顔!!」

「かず……と……」

もう我慢出来なかった。

「やめろぉぉぉぉぉぉ!!」

俺は走った。無我夢中で舞を助けようと走った。

「ふん……」

ガッ!

「ぐえっ!」

しかし俺はあっけなくもう一つ残っていた黒い手に捕まってしまう。

「か……ずと……にげ……」

舞の意識が段々と薄くなり、赤いオーラが薄くなっていく。

「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!ここで2人とも殺してあげます!!」


ギリギリと首を絞める力が強くなっていく
まずい……俺も息が……










俺は……死ぬのか?






何も分からぬまま……死んでしまうのか……?







結局……俺の発現能力は……なんだったんだろう……





俺が……自分の能力を……分かっていれば……







あんなキチガイみたいなヤツ……倒せるかもしれないのに……








嫌だ……嫌だ……イヤダ……いやだ……






死ぬのが怖い……死ぬのは嫌だ……







隼人……楓……セリカ……舞……!







独りは……もう……嫌だ……!










オレが……………守らなきゃ…………








『特異点』であル………オレガ………









マモラナイト















      発現----《InFinite》





---------------

「しまった!!何でこんな……!」

私はバカだ。何でもっと早く気付かなかったんだろう。ちょうど担任の先生に舞が居ないから変わりに生徒会の道具の整理を手伝ってくれと言われて、私は先生と仕事をしていた。
数分経つと私は異変を感じた。和斗君に渡したお守りから発現能力の攻撃を防ごうと魔力が働いていたことに気がついた。渡したお守りの力が働くと私に力が働いてたことを知らせてくれる。最初は小さな物だったからあまり気にしなかったが、急に反応が大きくなり、和斗君の身に何かあったのだと知ってしまう。
先生の手伝いを投げて急いで学校を出た。

学校から私の姿が見えない所まで走ると私は戦闘服へと変身して、透明なシールドを足場代わりにして空中歩行で現場へと急ぐ。
お願いだから間に合って……!

「はあっ……はあっ……」

和斗君の無事を祈りながら私はひたすら空中を走る。

「……!見つけた」

やはり結界が貼られており、戦闘になっていた。和斗君と、もう1人誰かが黒い手で首を絞められていた。早く助けないと!

「今行くよ!!和斗君!!」

そして私が剣で光の刃を飛ばそうとすると--



ズズズ……

「何です?」

和斗君の身体がどんどん紫のオーラで包まれていくのが見えた。一体彼の身体に何が?そう疑問に思っていると


      発現……《InFinite》


ドオッ!!

「!?」

魔力のエネルギーが全方位に放出した。スーツの男は吹き飛ばされ、和斗君ともう1人の拘束が解除され、和斗君はそのまま着地、もう1人はエネルギーの放出の風圧で飛ばされた。私は飛ばされた方の救出へ向かう。

「ゴホッゴホッ!」

「舞ちゃん!?どうしてアナタがここに!?」

「ゴホッ……そう言うセリカこそ……その格好は何……?」

「……説明は後。今はここから離れましょ」

そう言って私は舞ちゃんを担いで2人から距離をとる。

「……和斗……和斗は!?」

「和斗君は……」

私達は振り返って、彼の姿を見る。


「……………」

「……ナンデスカ?一体ナニガ起こっているのデス?」


和斗君が立っている紫の炎みたいな物がサークル状に囲んでいた。そこから禍々しいオーラが漂っている。身体の所々に回路のような刻印が浮かび上がっていた。

「まさか……目覚めましたか……遂に!『特異点』の力が!!ジギル感動!!」

ジギルという男は手をパンと合わせて興奮している。まさか本当に彼が目覚めたとでも言うの?

「ふむ……目標は正義の盾のお方にとられちゃいましたし……任務失敗ですねぇ……まぁ目標よりもより価値ある物で許して貰いましょう……!」

そしてジギルは6本の黒い手を再び出す。
あれがあの男の発現能力……

「予定とは違いますが、遅かれ早かれ貴方には死んでもらう予定でしたので……ここで死んでいただきます!!」

そしてジギルの6本の黒い手が勢いよく和斗君に襲いかかる。

「和斗君!!」

私が助けようと、あの場に飛び込もうとすると---


 ……《death・hand》


ゴオッ!!

「「!?」」

ガシッ! ガシッ!

「そ、そんな馬鹿な!!」

「……嘘……」

和斗君が立っているサークル状の中から6本の紫色の手がジギルの黒い手を全て受け止める。

「馬鹿な!馬鹿な!そんな馬鹿な!貴方の発現能力は私と同じ《デス・ハンド》だったのですか!」

お互いの発現能力で出した腕はお互い繋いだままだ。そして和斗君の(デス・ハンド?)腕が黒い手を弾き返した。

「ぐぬぬ……同じ能力同士!負けられません!!」

そして再び6本の腕が和斗君に襲いかかる。


……《beast》


すると今度は和斗君が出した6本の腕が消えて、オーラが包み込む。そして和斗君は地面を砕いて勢いよくジギルに接近した。細くて赤い残像をだしながら一瞬でジギルの懐に入る。

「なに……

ドゴッ!

「ぐえっ!!」

和斗君はジギルの腹に拳を叩き込み、吹き飛ばした。

「あれは……私の能力……」

「えっ……」

あれが貴方の能力?と私は舞ちゃんに聞いた。

「……ええ。発現能力《ビースト》。全身の魔力回路のリミッターを外して、極限まで身体能力を高める能力よ」

「まさか、アナタも異能者だったなんて……」

「いつかはバレると思ってたけどね……それにしても、アンタが正義の盾の1員だったとはね……」

「……ええ」

お互いに話すことはいっぱいあるだろう。しかし……

「でも舞ちゃん。今、私の能力って……」

「ええ……和斗は今魔力のオーラで包まれて、身体能力が飛躍的に高くなった……。私の能力《ビースト》よ……」

「でもさっき、和斗君はジギルの6本の手を出す能力使ってたよ……?」

訳がわからない。和斗君はたまたまあの2人と能力が被っていたのか?

「ふひ、ふひひ、ふひひひひひひ……アヒゃひゃひゃひゃ!!」

ジギルが起き上がり、頭がおかしくなったように大笑いした。

「なるほど!それが君の『特異点』の力か!」

ジギルはパチンと指を鳴らすと突然地面に影が広がり、剣を持った修道服の人達がゾロゾロと影から出てくる。

「いくらお嬢さんと私の能力が使えても、この人数は骨がおれるでしょう!!」

影の中から次から次へと姿を現す。

「マジ?さっきより全然多いじゃない……」

「80……90……100人は居る……」

私達は唖然とした。さすがに1対100は無理がある。私があそこに行っても状況は変わるのだろうか……

「さぁ!行きなさい、貴方達!!」

そして修道服の軍団が襲いかかってくる--



……《limited・hole》



包み込んでいたオーラが収まり、今度は和斗君の周りに亜空間のような丸い穴が囲むように現れた。

ドドドドド!

そしてその穴から無数の剣が修道服の軍団に向けて発射される。グサリ、グサリと勢いが止まることなく発射し続けた。

「あれは、あの男の……!」

あの能力は天災の掟の黒コートの短髪が使っていた能力だ。なんで、和斗君が使えるの……?

「なにぃぃ!まさかこんなこともできるとは!!」

あれだけ居た修道服の軍団が早いペースで減っていく。

約1分後、100人近く居た修道服の軍団は全滅していた。

「……アナタは……一体……」



……《limited・weapon》



和斗君の手に突然現れた2本の禍々しいオーラをまとっている剣が握られる。



……《axel・gear-third》



そして和斗君の両足に紫色の刻印が浮かぶ。



「き、きえええええええ!」

ジギルは再び黒い手を6本出して、和斗君に襲いかかる。
和斗君は速いスピードでジギルに接近しに行く。黒い手での攻撃が当たりそうになると両手に持っていた剣で斬りつけて、その攻撃を対処する。
次々と避けては斬りつけて、背後から攻撃が来ても宙返りをして、攻撃してきた腕を空中で斬り落とす。
どれだけ斬っても黒い手はどんどん復活して襲いかかるが、ジギルは和斗君の圧倒的なスピードと全ての攻撃を軽々と避ける反射神経でジリジリと押されていた。

「くっ!何故当たらないのデス!何故!何故!何故!?」

焦っていたジギルは6本の手で同時に和斗君を押さえ込もうと地面に叩きつける。が、その攻撃は外れ、大きな隙を見せてしまった。

「しまった!」

和斗君がジギルの懐に入ろうとする。ジギルは黒い手をすぐさま消滅させ、後ろに飛んだが、和斗君の剣での斬りつけられる。

ザシュッ!!

「ぐっ……!」

斬りつけた後、その傷口に思いっきり蹴りを入れて吹っ飛ばした。

「がはぁっ!!」

ドシャッと崩れ落ちるジギル。

「は、早く……がはっ!……逃げないと……」

ジギルは自分が倒れている場所に影を出す。

「あっ!待ちなさい!」

「いて!」

肩を支えていた舞ちゃんをサッと下ろして、ジギルの所に向かう。しかしジギルはすぐに影に身を落とし、行方をくらませる。

「ちっ、逃げられた……」

私は舌打ちをして、逃がしてしまったことを悔やむ。

「ごめんね、舞ちゃん。大丈夫?」

「あんたねぇ~……」

「あはは……」

雑に下ろしてしまったため、痛がっている舞ちゃん。私は舞ちゃんに手を差し出す。

「立てる?」

「ええ……もう大丈夫……」

舞ちゃんはフラフラしながらも何とか立ち上がった。



「……………」


「和斗君……」


和斗君は禍々しいオーラを漂っていながらそのまま立ち尽くしていた。



(これが……『特異点』……和斗君の発現能力なの?)



和斗君のその眼はまるで、発現能力に目覚めたての自分と同じ、禍々しい眼をしていた。
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