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うう、と泣き出しそうな声に、線引きが難しいな、と思う。どこまでの意地悪ならかわいいものなんだろうか。
本気で嫌なことは勿論したくない。
どのタイミングで助け舟を出すか、どこまでなら許して貰えるか。
「脱ぎたくない、けど……ぬ、脱がなきゃ……」
正直に言うところもかわいい。こういうところは毒気が抜かれてしまう。
脱がせていい?と訊くと、今度こそ躊躇いがちだったけれどそれでも頷いてくれた。
細い腰に手を掛け、ゆっくり脱がしていく。
先日のヒートの時よりはましだったけれど、それでも濡れた下着に、遅かったな、と苦笑する。
かおを隠したままの凜は気付いてないようだったから、そのことは伏せておいた。
「ん……」
油断すると足を閉じようとする。その足の間に入ることでそれを防ごうとするけれど、立てられた膝は酷く居心地が悪そうだ。
何度見ても棒のような細い足。もう少し肉がついていた方が色気もあるってもんだけど。
「上はどうする?脱ぐ?」
「え、あ、えっと……ぬ、脱がない、で、いいですか……」
「いいよ、凜がしたい方で」
凜の彷徨う手を見てれば、何かを掴みたい様子なのはすぐにわかる。落ち着かないのだと。
シーツや枕、服のお腹の辺りや裾をぎゅうぎゅう握り締めることが多い。今だってお腹の上できゅっと握りしめてるお陰でずり上がった裾からお臍が出ているのが無意識なんだろうけれどかわいい。
薄い腹。どこをどう見ても貧相で、色気もなければ俺の好みでもない、それなのに喉が鳴るのは何でだろう。
抑制剤を飲んで、多分今はそんなにフェロモンを感じている訳ではない。それはつまり、そういうことで、安心する。
そうだ、俺は凜がオメガだからじゃなくて、凜に興奮して、凜だから愛おしくて、凜だから抱きたい。
「凜」
「は、はい……」
「……嫌だったら言ってね」
「へ……」
「別に拒否ったって追い出したり嫌いになったりしないよ、無理矢理したい訳じゃない、凜が拒否が出来ないから抱くなんてことはしたくない」
「ふあ……」
「確認だよ、凜もこれでいいの?」
下半身を剥いでおいて今更かもしれない。
でもこれ以上進んでしまったら、止めることは多分出来ないし、何より後から断れなかったなんて知りたくない。弱者だから、オメガだから断れなかったなんてなったら。
……それは俺が嫌だから、その可能性を潰したいだけ。
対等でいたいなんて綺麗事で、きっとずっと何かしらが引っ掛かったまま生きていくんだと思うけど、少しくらいは埋めたいと思う、それは俺の我儘。
いつまでも凜に俺の機嫌を伺いながら生活をして欲しくない、断るなら断るで構わない、そういう日だってある。
「は、恥ずかしい、けど、いやじゃ、ない、ないんです、ずっと……玲司さんのこと、」
「俺のこと?」
「考えて、た、から……」
「……考えてたの?」
腕でかおを隠しながら頷く。それはどういう意味、とこちらから確認する前に、凜は自らおずおずと口を開いた。
「……初めて、ヒート、来た時、どうしたらいいかわかんなくて、その、ふ、ふつうは、番に鎮めてもらうって授業で習った、から……」
「うん?」
「番って……習ったから、だから……」
「……俺のこと考えて自分で処理してたの?」
まだこれ以上紅くなることが出来るのかというくらい首まで染めて、凜は小さく頷いた。心臓が跳ねた気がする。
頭まで血が上るような、どきどきだかずくずくしたものを感じる。胸がきゅうとなって、切なくなるような、でもその話もっと聞かせてほしいと少し意地悪な気持ちにもなる。
「どう考えてたの」
流石にやって見せて、というのは呑み込んだ。初めてで怯えさせるのは止めておきたい。そういうのはまだ早い。
「……玲司さん、どんなひとになったのかな、とか、だっ……抱っこしてくれたの、あったかかったなとか、……手、ぼくより大きいのかなとか……どん、な風に、さわっ、触るのかな、とかっ……」
「凜の中の俺はどうだった?どういう風に触った?」
「どういう……ど、どうなんだろう……」
「覚えてないの?」
「……や、やさしかった……」
今は?俺、優しく触れてない?と訊いてしまいそうなのも呑み込む。どうせ優しいと返されるのは目に見えてる。それは言わせてしまったようで何だか嫌だった。
だから、同じように優しく触るねとしか言えない。
「んッ……」
「ここは?自分で触ったことは?」
「そこはっ……な、ないっ……です、」
服の中に手を入れて、凜の胸元に触れた。肌があつい。
柔らかかった尖端は触れるとすぐに硬くなる。
ぴくぴく躰が震えるのは快感というよりは、そんなところを触れられることによる羞恥なんだろう、実際気持ちいいか訊いてもわからないと返された。初めて触れるならそんなものか。
凜の腕がまだかおを隠してるのをいいことに、シャツをたくし上げる。
月明かりに白い肌が浮かんで、息を呑んだ。
色気のない躰だとは思う、それでも綺麗な躰だとも。
この躰を、誰にも触れさせることがなくて良かった、と思う。
本気で嫌なことは勿論したくない。
どのタイミングで助け舟を出すか、どこまでなら許して貰えるか。
「脱ぎたくない、けど……ぬ、脱がなきゃ……」
正直に言うところもかわいい。こういうところは毒気が抜かれてしまう。
脱がせていい?と訊くと、今度こそ躊躇いがちだったけれどそれでも頷いてくれた。
細い腰に手を掛け、ゆっくり脱がしていく。
先日のヒートの時よりはましだったけれど、それでも濡れた下着に、遅かったな、と苦笑する。
かおを隠したままの凜は気付いてないようだったから、そのことは伏せておいた。
「ん……」
油断すると足を閉じようとする。その足の間に入ることでそれを防ごうとするけれど、立てられた膝は酷く居心地が悪そうだ。
何度見ても棒のような細い足。もう少し肉がついていた方が色気もあるってもんだけど。
「上はどうする?脱ぐ?」
「え、あ、えっと……ぬ、脱がない、で、いいですか……」
「いいよ、凜がしたい方で」
凜の彷徨う手を見てれば、何かを掴みたい様子なのはすぐにわかる。落ち着かないのだと。
シーツや枕、服のお腹の辺りや裾をぎゅうぎゅう握り締めることが多い。今だってお腹の上できゅっと握りしめてるお陰でずり上がった裾からお臍が出ているのが無意識なんだろうけれどかわいい。
薄い腹。どこをどう見ても貧相で、色気もなければ俺の好みでもない、それなのに喉が鳴るのは何でだろう。
抑制剤を飲んで、多分今はそんなにフェロモンを感じている訳ではない。それはつまり、そういうことで、安心する。
そうだ、俺は凜がオメガだからじゃなくて、凜に興奮して、凜だから愛おしくて、凜だから抱きたい。
「凜」
「は、はい……」
「……嫌だったら言ってね」
「へ……」
「別に拒否ったって追い出したり嫌いになったりしないよ、無理矢理したい訳じゃない、凜が拒否が出来ないから抱くなんてことはしたくない」
「ふあ……」
「確認だよ、凜もこれでいいの?」
下半身を剥いでおいて今更かもしれない。
でもこれ以上進んでしまったら、止めることは多分出来ないし、何より後から断れなかったなんて知りたくない。弱者だから、オメガだから断れなかったなんてなったら。
……それは俺が嫌だから、その可能性を潰したいだけ。
対等でいたいなんて綺麗事で、きっとずっと何かしらが引っ掛かったまま生きていくんだと思うけど、少しくらいは埋めたいと思う、それは俺の我儘。
いつまでも凜に俺の機嫌を伺いながら生活をして欲しくない、断るなら断るで構わない、そういう日だってある。
「は、恥ずかしい、けど、いやじゃ、ない、ないんです、ずっと……玲司さんのこと、」
「俺のこと?」
「考えて、た、から……」
「……考えてたの?」
腕でかおを隠しながら頷く。それはどういう意味、とこちらから確認する前に、凜は自らおずおずと口を開いた。
「……初めて、ヒート、来た時、どうしたらいいかわかんなくて、その、ふ、ふつうは、番に鎮めてもらうって授業で習った、から……」
「うん?」
「番って……習ったから、だから……」
「……俺のこと考えて自分で処理してたの?」
まだこれ以上紅くなることが出来るのかというくらい首まで染めて、凜は小さく頷いた。心臓が跳ねた気がする。
頭まで血が上るような、どきどきだかずくずくしたものを感じる。胸がきゅうとなって、切なくなるような、でもその話もっと聞かせてほしいと少し意地悪な気持ちにもなる。
「どう考えてたの」
流石にやって見せて、というのは呑み込んだ。初めてで怯えさせるのは止めておきたい。そういうのはまだ早い。
「……玲司さん、どんなひとになったのかな、とか、だっ……抱っこしてくれたの、あったかかったなとか、……手、ぼくより大きいのかなとか……どん、な風に、さわっ、触るのかな、とかっ……」
「凜の中の俺はどうだった?どういう風に触った?」
「どういう……ど、どうなんだろう……」
「覚えてないの?」
「……や、やさしかった……」
今は?俺、優しく触れてない?と訊いてしまいそうなのも呑み込む。どうせ優しいと返されるのは目に見えてる。それは言わせてしまったようで何だか嫌だった。
だから、同じように優しく触るねとしか言えない。
「んッ……」
「ここは?自分で触ったことは?」
「そこはっ……な、ないっ……です、」
服の中に手を入れて、凜の胸元に触れた。肌があつい。
柔らかかった尖端は触れるとすぐに硬くなる。
ぴくぴく躰が震えるのは快感というよりは、そんなところを触れられることによる羞恥なんだろう、実際気持ちいいか訊いてもわからないと返された。初めて触れるならそんなものか。
凜の腕がまだかおを隠してるのをいいことに、シャツをたくし上げる。
月明かりに白い肌が浮かんで、息を呑んだ。
色気のない躰だとは思う、それでも綺麗な躰だとも。
この躰を、誰にも触れさせることがなくて良かった、と思う。
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