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 柔らかさの足りない、薄い躰。それでもその生白い肌は俺を煽るには十分で、でも今はそこに見蕩れてはいけない。
 俺が空気に呑まれてしまっては凜の我慢だって無駄になる。どうにか理性を保ちたくて、唇を噛んで耐えた。
 すぐ下で凜は両手でシャツを握り締め、瞼もぎゅうと閉じていて、俺の情けないくらいあつくなったかおを見られずに済んでいる。
 ……かわいい。
 同じく耐えるようにきゅうと結んだ小さな唇も、まだ押し出すように涙が出ているぎゅっと瞑られた瞼も、前髪から覗くおでこも、シャツを掴むその小さな手も。
 愛おしく感じてしまって、ついキスをしてしまいそうになる。
 違う、だめだ、そういう行為じゃあない。
 今日は、……今日は、凜の躰を落ち着かせる為にするだけ。
 抑制剤が効くまで、凜が落ち着いて眠りにつくまで。
 あの時のような、さみしい思いをさせない為。

「ひあ……!」

 吐精して尚萎えない凜の下半身にそっと触れる。
 ぬと、とした感触に、潤滑油はいらないな、とぼんやり思ってしまった。

「よ、よごれ、ちゃう……っだめ、です!」
「大丈夫……凜はそのまま気持ち良くなってて」
「うう」

 すぐに俺を止めるものの、握られた自分のものを視認すると耐えられなかったのか、またぎゅっと瞼を閉じる。濡れた睫毛が揺れた。
 他人とのこういう行為はないのだろうなとわかるその反応に、頬が緩んでしまいそうだ。油断する訳にはいかないので、すぐにそんな気持ちは追いやる。
 今はただ、凜の躰のことを考えるんだ、かわいいことなんてもうわかってるんだから。

「……あッ、う」

 びく、と凜の躰が小さく震えて、軽く先端に触れただけでまた達したのに気付く。
 ……まるで薬でも使われてるかのようで、このペースで吐き出していてはすぐにおかしくなってしまうだろうな、と思う。
 肩で息をする凜に、もうちょっと頑張ろうねと声を掛けると、もう俺を止められないのはわかったんだろうな、かおを覆うようにしてこくんと頷いた。
 そのまま吐いたものを塗り込むように手を動かすと、またすぐにびゅく、と吐精する。こんなに簡単に出してしまうなんて、すぐに乾涸びてしまうのではないかと心配になってしまった。

「んぅ、う、……っう」
「辛い?大丈夫?」
「んッ、ん、こんなこと、させちゃっ、て、ごめんなさいっ……」
「俺がしたくてしてるんだからもう謝んないで」

 寧ろ謝らないといけないのはいつも俺の方なのに。
 そんなことを言っても今の凜には何も理解出来ないだろう。

「凜、足開いて」
「んぇ……」
「ナカの方がいいでしょ」
「……やら……」
「おなか、さみしいんでしょ?」
「んんう……」

 揃えられた膝を無理に割って、指を滑り込ませる。
 指じゃあ、さみしさを埋めるには足りないかもしれないけれど。
 ぐしょぐしょに濡れたそこは驚く程すんなりと俺の指を迎えてしまい、オメガという性をまた実感してしまう。
 アルファもベータも、こんなことはなかった。
 濡らして慣らしてやっと許される場所だ、そう思っていたのに。

「んう……あ、ッう、う」
「苦しい?痛くはないよね」
「ったく、ない、けどおっ……」
「うん」
「あう、れーじさんの手ぇ、おっきい……っ」
「……ッ」

 危ない、心臓がやられるところだった。いや、やられた。かわいい、くそ、こんなことで。
 無意識だろうけど、この状態で煽られるのはきつい。

「気持ちいい?」
「ん、……んっ、あ、うう、だめなのにっ……んあ、やぅ、あ、ッきもち、いいよお……」

 まだ指を挿入ただけで気持ちいいもなにも、と自分でも思ったのだけれど、それだけでも気持ちいいらしい。
 凜のいいとこを見つけたらどれ程乱れてしまうんだろう。ごくんと喉が鳴ってしまう。
 かわいい、もっと見たい、凜のかわいいところを。その欲望を抑えるのがこんなに辛いなんて。

「動かすよ、痛かったら教えて」
「んっ……」

 相変わらず瞳を閉じたまま凜は頷く。
 あまりにもぎゅっと瞑ってるものだから、そのせいで現れる眉間の皺さえ愛おしい。狡い、この子の狡いところはそういうところだと思う。

「んうう……!」

 凜のものからはぱたぱたと垂れる程度のものだった。
 でも凜の躰はびくびくと反応をしていて……これが続くのか、とぽかんとしてしまった。
 まだ指を挿入れて、ほんの少し動かしただけ。そこが凜のいいとこだったとしても。
 それでもこんな簡単に達してしまうなんて。堪える暇なんかもなかったと思う。こんなことを何回も。

「う、んあ、や、う、れいじさんっ……」
「……なあに」
「っは、もう、もっ……いい、いいですっ」
「でもまだ凜の萎えてないよ」
「や、だめ、あ、っう、ほし、ほしくなっちゃう、からあ……!」

 それはだめだ、俺が我慢出来なくなる、駄目だ。
 俺までおかしくなったら誰が止めるというんだ。どうしても理性を飛ばす訳にはいかない。
 指を増やして、どうにかそれで我慢してもらう。
 凜の華奢な指よりは少しくらい、ましな筈だ。玩具を使っていた気配もなかった、だから、どうにか指で我慢してほしい。どうにか……どうにか。


 ◇◇◇

 何度達したかわからない。最後の方はもう出すものもなくて、ただひたすらびくびく躰を震わせるだけだった。
 声も枯れて、ぜえぜえと喘鳴が混じって、最終的にはぐたりと気をやってしまった。
 躰を綺麗にしてやりたくても、どうしようもない程ぐしゃぐしゃで、風呂に入れてやりたくても今度はもう俺の精神が持ちそうになかった。
 シーツを剥ぎ、どうにか新しいものに替えて、その上に凜をそっと戻す。
 風呂は起きてからでいいし、シーツや布団は洗えばいい、最悪新しく買えばいい。
 本当ならずっと傍にいてあげたかったし、俺だってそうしたいけれど、この状況でそれは無理だ。

 寝ている凜に、聞こえないのがわかっていながら、また明日、ゆっくり寝てと呟いて、かわいそうなくらい涙の跡の残る頬を撫でて部屋を出た。
 自分の熱を持て余したまま。
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