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出来たよ、とふたりしてラーメンとお茶をテーブルまで運んで、かおを紅くしながら啜って。
実は和音が寝てる間にプリン作ったんだけど、と少し心配そうに言う悠真さんに、今はお腹いっぱいだから明日のおやつにすると言うと、ぱっと笑顔になった。
道理で甘いにおいに砂糖の甘さが紛れてた訳だ。
……おれだってそんなの、口元がにやけてしまう。たまにしか食べられないと思ってた悠真さんのプリンは、これからは強請ればいつでも食べられるようになったんだと。
皿を洗う悠真さんの横で皿を拭いて棚に片付ける。
新婚みたいだなあと軽口を叩いた悠真さんに、同じようなもんだろ、と心の中でだけ返しておいた。
さっきまで寝ていたのに、食欲が満たされて、世間はまだ夢の中の夜中だというだけで眠くなってしまう。
仕方ない、今は性欲はないものの、一応まだ発情期中が終わったかどうかというところなのだ、体力を使った躰は寝て休めといっている。
それになによりここは悠真さんの家で、どこもかしこも悠真さんのにおいがして、横になったベッドも枕も、着せられた服も、隣で微笑んでおれを寝かしつけようとする悠真さん本体も、全てがおれを安心させようとしてるみたいで。
そんなの、おれだってそりゃあ、全力で安心させられてしまうってものだ。
「新しい部屋探そうか、和音、花音ちゃんたちの近くがいいでしょ、俺が今の和音の部屋に引っ越した方がいいかな」
「えっ」
「近過ぎるとちょっとあれかな」
「ここは?」
「……ここがいい?」
「だって折角悠真さんのにおいいっぱいするのに」
言ってしまってから、だからおれはなんで考えなしに口にしてしまうかな、と頭を抱えた。恥ずかし過ぎることを言った、今。こどもみたいなことを。
なんだよおれ、発情期だけじゃなくて、悠真さんといると、それだけでこどもっぽくなっちゃうんじゃないか。
「においなんてさあ……住んでればつくものだよ、だからほら、長い目でみて、和音が安心出来るところに住もうよ」
俺は車あるからさ、和音の、家族や親戚家の近く、病院とか行きやすいとこにしよう、とおれを優先する。
今のおれの部屋とこの悠真さんの家は車ならそんなに遠くないところだ。
けれどおれは免許ないし、今までよりは千晶くんたちに頼ることは少なくなるだろうけれど、それでもやはり遠くなるのはなんだか心許ない。
病院にはバスでもタクシーでも使えばいいけど。ああでもやっぱり近い方が……
「休みの日にさ、不動産屋とか、行ってみない?」
「え」
「そういうデートも楽しいよ」
今の部屋も、前の部屋も父親の持ち物だった。不動産屋なんて行ったことない。
少しわくわくしてしまった。
それ以上に惹かれたのはデートという言葉。
「おれ、デートなんてしたこと、ない……」
「……今からいっぱいいけるよ、行こうよ、ほら、ソファも新しいの、買ったげるって言ったでしょ」
「ソファ……」
「ベッドも新しいのにしない?ダブルもいいけどもっと大きいのも……それは部屋を決めてからかな」
「こたつ……」
「こたつほしいの?はは、時期はもう遅いけどこたつついてるテーブル買おうか。こたつ布団はまた寒くなってからでいいよね……部屋が決まったらカーテンも見なきゃ。あとはー……なんかほしいの、ある?」
「猫飼いたい」
「ねこ」
悠真さんがあれこれ案を出すものだからわくわくが止まらなくなってしまった。
花音の家で気に入ってしまったこたつ。
それからペット。
発情期の間は世話が出来なくなっちゃうから……自分すら碌に面倒みれないのに、他の命なんて面倒みれないから。
でもこどもの頃から実は憧れだった、母親がアレルギーで飼えなかったから。
「俺からしたら和音がもう猫ちゃんみたいなものなんだけど」
「なに?」
「いや、うん、いいよ、猫ね、うん、かわいいこ、探そうか」
猫用の食器やごはん、トイレや布団、おもちゃ、そうだ、洗剤とか消耗品に拘りはある?ない?じゃあ適当でいいか、人間用の食器も揃えなきゃね、お互いきょうだい用のばかりだもの、と夜中にこそこそ盛り上がってしまう。
新しい部屋が決まるまではこの悠真さんの部屋で一緒に住もう、明日は着替えとか、必要なものを取りに行って、それから、と悠真さんがおれの頬を撫でた。
「花音ちゃんと千晶くんにお礼をしなきゃ。和音のご両親にも挨拶に行かなきゃね、都合の良い日を確認しといてくれる?」
「ひえ……」
「どうした?」
「親に挨拶とか本物みたい……」
「本物だよ、俺は本気で和音と籍入れるつもりだけど?」
「そ、それはそうなんだけど~……」
「恥ずかしい?」
「……ウン……」
うちの家族に挨拶するということは、当然悠真さんの家族にも挨拶する訳で……
おれみたいなのが行ってがっかりされないだろうか、そう確認するおれに、喜ぶと思う、と悠真さん。
「喜ぶ……?」
「早く相手見つけろって言われてるからなあ……家柄的にも文句は言えないし、それに」
「それに?」
「……かわいいからなあ」
「かわっ……」
「反対なんかさせないけど、まあそこは心配ないかな……寧ろ気に入られそうで……うちのも全員アルファだから、触らせちゃ駄目だよ?」
「……な訳ないじゃん……」
流石にそれは買い被りすぎだ。
おれなんて今までモテたこともなければ、もう既に悠真さんにしかフェロモンも効かないというのに。
「あ、でも」
「どした」
「……式は挙げたくない」
「結婚式?」
「うん……おれ、仕事、してないし……その、ともだちも、いないし」
「別に招待するひとはどうでもいいけど」
女の子のようにドレスとか式に憧れがある訳ではない。
花音の式に出席するだけで十分だ。
そう漏らしたおれに、悠真さんは少し罰が悪そうに頭を掻いた。
実は和音が寝てる間にプリン作ったんだけど、と少し心配そうに言う悠真さんに、今はお腹いっぱいだから明日のおやつにすると言うと、ぱっと笑顔になった。
道理で甘いにおいに砂糖の甘さが紛れてた訳だ。
……おれだってそんなの、口元がにやけてしまう。たまにしか食べられないと思ってた悠真さんのプリンは、これからは強請ればいつでも食べられるようになったんだと。
皿を洗う悠真さんの横で皿を拭いて棚に片付ける。
新婚みたいだなあと軽口を叩いた悠真さんに、同じようなもんだろ、と心の中でだけ返しておいた。
さっきまで寝ていたのに、食欲が満たされて、世間はまだ夢の中の夜中だというだけで眠くなってしまう。
仕方ない、今は性欲はないものの、一応まだ発情期中が終わったかどうかというところなのだ、体力を使った躰は寝て休めといっている。
それになによりここは悠真さんの家で、どこもかしこも悠真さんのにおいがして、横になったベッドも枕も、着せられた服も、隣で微笑んでおれを寝かしつけようとする悠真さん本体も、全てがおれを安心させようとしてるみたいで。
そんなの、おれだってそりゃあ、全力で安心させられてしまうってものだ。
「新しい部屋探そうか、和音、花音ちゃんたちの近くがいいでしょ、俺が今の和音の部屋に引っ越した方がいいかな」
「えっ」
「近過ぎるとちょっとあれかな」
「ここは?」
「……ここがいい?」
「だって折角悠真さんのにおいいっぱいするのに」
言ってしまってから、だからおれはなんで考えなしに口にしてしまうかな、と頭を抱えた。恥ずかし過ぎることを言った、今。こどもみたいなことを。
なんだよおれ、発情期だけじゃなくて、悠真さんといると、それだけでこどもっぽくなっちゃうんじゃないか。
「においなんてさあ……住んでればつくものだよ、だからほら、長い目でみて、和音が安心出来るところに住もうよ」
俺は車あるからさ、和音の、家族や親戚家の近く、病院とか行きやすいとこにしよう、とおれを優先する。
今のおれの部屋とこの悠真さんの家は車ならそんなに遠くないところだ。
けれどおれは免許ないし、今までよりは千晶くんたちに頼ることは少なくなるだろうけれど、それでもやはり遠くなるのはなんだか心許ない。
病院にはバスでもタクシーでも使えばいいけど。ああでもやっぱり近い方が……
「休みの日にさ、不動産屋とか、行ってみない?」
「え」
「そういうデートも楽しいよ」
今の部屋も、前の部屋も父親の持ち物だった。不動産屋なんて行ったことない。
少しわくわくしてしまった。
それ以上に惹かれたのはデートという言葉。
「おれ、デートなんてしたこと、ない……」
「……今からいっぱいいけるよ、行こうよ、ほら、ソファも新しいの、買ったげるって言ったでしょ」
「ソファ……」
「ベッドも新しいのにしない?ダブルもいいけどもっと大きいのも……それは部屋を決めてからかな」
「こたつ……」
「こたつほしいの?はは、時期はもう遅いけどこたつついてるテーブル買おうか。こたつ布団はまた寒くなってからでいいよね……部屋が決まったらカーテンも見なきゃ。あとはー……なんかほしいの、ある?」
「猫飼いたい」
「ねこ」
悠真さんがあれこれ案を出すものだからわくわくが止まらなくなってしまった。
花音の家で気に入ってしまったこたつ。
それからペット。
発情期の間は世話が出来なくなっちゃうから……自分すら碌に面倒みれないのに、他の命なんて面倒みれないから。
でもこどもの頃から実は憧れだった、母親がアレルギーで飼えなかったから。
「俺からしたら和音がもう猫ちゃんみたいなものなんだけど」
「なに?」
「いや、うん、いいよ、猫ね、うん、かわいいこ、探そうか」
猫用の食器やごはん、トイレや布団、おもちゃ、そうだ、洗剤とか消耗品に拘りはある?ない?じゃあ適当でいいか、人間用の食器も揃えなきゃね、お互いきょうだい用のばかりだもの、と夜中にこそこそ盛り上がってしまう。
新しい部屋が決まるまではこの悠真さんの部屋で一緒に住もう、明日は着替えとか、必要なものを取りに行って、それから、と悠真さんがおれの頬を撫でた。
「花音ちゃんと千晶くんにお礼をしなきゃ。和音のご両親にも挨拶に行かなきゃね、都合の良い日を確認しといてくれる?」
「ひえ……」
「どうした?」
「親に挨拶とか本物みたい……」
「本物だよ、俺は本気で和音と籍入れるつもりだけど?」
「そ、それはそうなんだけど~……」
「恥ずかしい?」
「……ウン……」
うちの家族に挨拶するということは、当然悠真さんの家族にも挨拶する訳で……
おれみたいなのが行ってがっかりされないだろうか、そう確認するおれに、喜ぶと思う、と悠真さん。
「喜ぶ……?」
「早く相手見つけろって言われてるからなあ……家柄的にも文句は言えないし、それに」
「それに?」
「……かわいいからなあ」
「かわっ……」
「反対なんかさせないけど、まあそこは心配ないかな……寧ろ気に入られそうで……うちのも全員アルファだから、触らせちゃ駄目だよ?」
「……な訳ないじゃん……」
流石にそれは買い被りすぎだ。
おれなんて今までモテたこともなければ、もう既に悠真さんにしかフェロモンも効かないというのに。
「あ、でも」
「どした」
「……式は挙げたくない」
「結婚式?」
「うん……おれ、仕事、してないし……その、ともだちも、いないし」
「別に招待するひとはどうでもいいけど」
女の子のようにドレスとか式に憧れがある訳ではない。
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