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まだかまだかと訊くおれに、もう少し、もう見えてるよと何度も落ち着かせるように返してくれる。
駐車場に入って、車が止まって、着いたよ、とおれの方を向いて言う。
それから、我慢出来ないよね、一回イっとこうか、と眉を下げて笑った。
「っん、う!」
「こんなとこでごめん、でもこの時間だと駐車場、誰も来ないと思うから」
「っ、コート、に、出ちゃっ……」
「大丈夫、いいよ、汚しちゃって」
「ッあ、ぅ、あ、ん……っ」
ぎゅう、と悠真さんの手を掴んで、胸元にかおを埋めて達した。
コートはそれを吸ってしまうことはない。お陰でコートの下と内ももの辺りがぬるぬるする。
息を整えていると、悠真さんが動いて、それを視線で追ってしまう。
今度こそキスだ、と思ったのだけれど、そうはいかず、その唇は額に落とされた。また。
部屋まで連れていくね、と車から抱えて下ろされる。
自分で歩くとは色々な意味で言えなかった。
駐車場を歩きながら、エレベーターに乗りながら、出てきた時のように、誰にも会うことはないかとどきどきした。
この状態で会ってしまったら言い訳も出来ない。
大人しく悠真さんの首元にかおを埋めるけれど、それはそれで心臓が爆発してしまいそうなくらい、煩くなった。
玄関が開けられて、どうする、歩く?と訊かれたけれど……やっぱり自分では歩けそうにない。
でもここに来たのは発情期をどうにかする為じゃなくて、本当に悠真さんに他の番がいないか、痕跡がないかを探す為だ。
もう既に、車内での悠真さんの態度に、嘘は吐いてないんじゃないかって思ってる。
けど、やっぱり調べておかないのもこわかった。
色々と足りなくてこんなことになってるんだから。不安を引き摺ったままでいるのはいやだ。
ちゃんと、本当に、もっと、悠真さんをすきでいていい、すきになっていいと安心したかった。
「……靴箱、開けて」
「うん」
靴棚には革靴やスニーカー、ブーツやサンダルが並んでいて、どれもサイズは同じくらいに見えた。
でもサイズや好みがふたりとも似てるだけかもしれないし。
廊下もリビングも、悠真さんのにおいと、芳香剤か何かのにおいがするだけ。
おれからしたら悠真さんのフェロモンしか感じられない訳だけれど、あまり違和感はなかった。ただ、思い切り吸うと頭がくらくらしてしまうけど。
基本的にすっきりとした部屋だった。
小物なんかは殆どない。
抱えられたまま、ゲストルームを覗く。
言い訳のようにうちには弟妹がたまに泊まるくらい、と言う通り、そこにも違和感はない。
シャワールームにも特段怪しいところはなく、歯ブラシも出されているのは一本のみ。
棚の中には妹さん用だというシャンプー類が置いてあって、ほんの少しだけ、むっとしてしまったけど、花音や千晶くんを泊めるおれもそれは怒るとかだめとか言う権利はないし、言うつもりもなかった。
仲の良いきょうだいならそれでいいじゃないか。
寝室にはいる時は流石にいちばん緊張した。ごくんと唾を呑み込んでしまうくらい。
開けられた扉の向こうにはベッドと棚とテレビがあるくらいで、やっぱりおかしいところはない。
クローゼットも、と駄々を捏ねるように言うおれに従って開けられ、ここは冬物のコートなんかで、こっちは普段着、こっちはスーツであっちが夏物なんかを仕舞ってて……このスペースは弟妹の宿泊用のものだけど、和音がいやならもう泊まらせない、なんて説明に混ぜてとんでもないことを言う。
「いいよ、泊まったって」
「でも」
「いやじゃない、仲良しなんでしょ、おれだって、かのん、に、だめなんて言えないし……」
「……ちゃんと番がいない証拠になってる?」
「……わかんない」
そう言ったおれに、悠真さんはまた不安そうなかおになった。
やってないこと、ないものの証明は難しい。その証拠なんてほぼないようなものなんだから。
だから、本人の態度とか行動を信じるしかないんだよね。
「つけてた指輪は……?」
「あれは……詮索避けっていうか……社会人になるとフリーだと目をつけられるって言われて……でも和音に再会してからは……まああれで嘘吐いちゃったんだけど、やっぱり和音に見られたくなくて外しちゃった」
「だから最初しかつけてなかったの」
「うん」
「……汚さない為かと思ってた」
そんなに深く取られてたのか、とおれをベッドに下ろして、悠真さんは溜息を吐いた。
じゃあ背中の爪痕は、と訊くと、多分和音のだよ、と言う。
多分ってなに、と問うと、だって和音しか相手はいないし、と返された。
「でもおれ、悠真さんの背中、引っ掻いたりとか、してないもん……あんな痛そうなの」
「それはまだ記憶がある時でしょう、和音がトんだ時につけた爪痕だと思う」
「トんだ時……」
「最後の方、寝落ちする前とか、覚えてる?覚えてないでしょ?もっともっとって強請ってる時とか」
「ねだっ……!」
「その時だと思う、多分今は痕残ってないよ、見る?」
前回の発情期からひとつきと少し。
確かにおれが無意識につけていたのならもう治っていて、他の番としているのなら、まだ爪痕があってもおかしくない。
ちょっと待って、と上着を脱ぐ悠真さんを固唾を呑んで見詰めた。
悠真さんが動く度に甘いにおいが漂うのがわかる。
駐車場に入って、車が止まって、着いたよ、とおれの方を向いて言う。
それから、我慢出来ないよね、一回イっとこうか、と眉を下げて笑った。
「っん、う!」
「こんなとこでごめん、でもこの時間だと駐車場、誰も来ないと思うから」
「っ、コート、に、出ちゃっ……」
「大丈夫、いいよ、汚しちゃって」
「ッあ、ぅ、あ、ん……っ」
ぎゅう、と悠真さんの手を掴んで、胸元にかおを埋めて達した。
コートはそれを吸ってしまうことはない。お陰でコートの下と内ももの辺りがぬるぬるする。
息を整えていると、悠真さんが動いて、それを視線で追ってしまう。
今度こそキスだ、と思ったのだけれど、そうはいかず、その唇は額に落とされた。また。
部屋まで連れていくね、と車から抱えて下ろされる。
自分で歩くとは色々な意味で言えなかった。
駐車場を歩きながら、エレベーターに乗りながら、出てきた時のように、誰にも会うことはないかとどきどきした。
この状態で会ってしまったら言い訳も出来ない。
大人しく悠真さんの首元にかおを埋めるけれど、それはそれで心臓が爆発してしまいそうなくらい、煩くなった。
玄関が開けられて、どうする、歩く?と訊かれたけれど……やっぱり自分では歩けそうにない。
でもここに来たのは発情期をどうにかする為じゃなくて、本当に悠真さんに他の番がいないか、痕跡がないかを探す為だ。
もう既に、車内での悠真さんの態度に、嘘は吐いてないんじゃないかって思ってる。
けど、やっぱり調べておかないのもこわかった。
色々と足りなくてこんなことになってるんだから。不安を引き摺ったままでいるのはいやだ。
ちゃんと、本当に、もっと、悠真さんをすきでいていい、すきになっていいと安心したかった。
「……靴箱、開けて」
「うん」
靴棚には革靴やスニーカー、ブーツやサンダルが並んでいて、どれもサイズは同じくらいに見えた。
でもサイズや好みがふたりとも似てるだけかもしれないし。
廊下もリビングも、悠真さんのにおいと、芳香剤か何かのにおいがするだけ。
おれからしたら悠真さんのフェロモンしか感じられない訳だけれど、あまり違和感はなかった。ただ、思い切り吸うと頭がくらくらしてしまうけど。
基本的にすっきりとした部屋だった。
小物なんかは殆どない。
抱えられたまま、ゲストルームを覗く。
言い訳のようにうちには弟妹がたまに泊まるくらい、と言う通り、そこにも違和感はない。
シャワールームにも特段怪しいところはなく、歯ブラシも出されているのは一本のみ。
棚の中には妹さん用だというシャンプー類が置いてあって、ほんの少しだけ、むっとしてしまったけど、花音や千晶くんを泊めるおれもそれは怒るとかだめとか言う権利はないし、言うつもりもなかった。
仲の良いきょうだいならそれでいいじゃないか。
寝室にはいる時は流石にいちばん緊張した。ごくんと唾を呑み込んでしまうくらい。
開けられた扉の向こうにはベッドと棚とテレビがあるくらいで、やっぱりおかしいところはない。
クローゼットも、と駄々を捏ねるように言うおれに従って開けられ、ここは冬物のコートなんかで、こっちは普段着、こっちはスーツであっちが夏物なんかを仕舞ってて……このスペースは弟妹の宿泊用のものだけど、和音がいやならもう泊まらせない、なんて説明に混ぜてとんでもないことを言う。
「いいよ、泊まったって」
「でも」
「いやじゃない、仲良しなんでしょ、おれだって、かのん、に、だめなんて言えないし……」
「……ちゃんと番がいない証拠になってる?」
「……わかんない」
そう言ったおれに、悠真さんはまた不安そうなかおになった。
やってないこと、ないものの証明は難しい。その証拠なんてほぼないようなものなんだから。
だから、本人の態度とか行動を信じるしかないんだよね。
「つけてた指輪は……?」
「あれは……詮索避けっていうか……社会人になるとフリーだと目をつけられるって言われて……でも和音に再会してからは……まああれで嘘吐いちゃったんだけど、やっぱり和音に見られたくなくて外しちゃった」
「だから最初しかつけてなかったの」
「うん」
「……汚さない為かと思ってた」
そんなに深く取られてたのか、とおれをベッドに下ろして、悠真さんは溜息を吐いた。
じゃあ背中の爪痕は、と訊くと、多分和音のだよ、と言う。
多分ってなに、と問うと、だって和音しか相手はいないし、と返された。
「でもおれ、悠真さんの背中、引っ掻いたりとか、してないもん……あんな痛そうなの」
「それはまだ記憶がある時でしょう、和音がトんだ時につけた爪痕だと思う」
「トんだ時……」
「最後の方、寝落ちする前とか、覚えてる?覚えてないでしょ?もっともっとって強請ってる時とか」
「ねだっ……!」
「その時だと思う、多分今は痕残ってないよ、見る?」
前回の発情期からひとつきと少し。
確かにおれが無意識につけていたのならもう治っていて、他の番としているのなら、まだ爪痕があってもおかしくない。
ちょっと待って、と上着を脱ぐ悠真さんを固唾を呑んで見詰めた。
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