【完結】でも、だって運命はいちばんじゃない

ちかこ

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 次は俺が触る番ね、と達してしまったことに謝る和音の肩を押し、ベッドに倒した。
 腹に飛ばされた和音の体液を舐めると、そんなものをと驚く和音に、番のものは何だって甘いと言い、だってほら、キスだって甘いでしょと伝えたつもりだった。
 快感を追うものより軽めの、少し舌先が触れるようなもの。
 それでも十分に和音の口の中は甘い。

 においも、体液も、全部甘くなる。
 でも涙は別だ、感覚的にそう感じるのかな、やはりしょっぱい。唇を離すと、声も出さずに涙を零す和音がいた。
 泣かれると胸が痛くなる。
 気持ちよくて生理的に出てしまうものなら良かった、けれどこの涙は違うことくらい、表情をみればわかる。
 内心焦りながら、目元を拭い、キスが嫌だったか確認する。
 和音の体液を舐めたから?その口でキスするなって?

「ち、ちが、そう、いや、それもちょっとは、び、びっくりした、けど」
「今日はもうキス止めとく?元々したいのは俺だけだったもんね」

 それは別に意地悪で言ったんじゃない。ただ反省しただけ。
 自分の出したものを舐めた後のキスなんてそりゃ嫌なひとは嫌か、と。
 口を濯ぎにいくのも、今このタイミングで中断するよりは自分にキス禁止令を出す方がこの場ではいいかと思っただけだった。

「やだ!」

 それなのに和音の大きな声が部屋に響く。
 先程まではふにゃふにゃした頼りない声しか出せなかった子が、自分でもその大きな声にびっくりしたように、また口元をもごもごさせる。

「ちゃ、ちゃんと甘い、から、泣いた、の、も……その、きゅう、で、びっくりして、く、苦し、息、出来なかった、から」

 だから、と俺の手を取って、自分の頬に置き、震える声で小さく口を開く。

「おれも、したい……」

 驚いた。
 そんなのは、トんだ時の和音くらいかと思ってたのに、そんなことを言うなんて。
 いや、甘えることは多々あったけれど。
 かわいい、狡い、そんなのもう、我慢する必要なんてないじゃないか。

「もっとして、口、甘いの……」
「……うん」

 こどものような幼い口調で誘う。
 その言葉通りの甘ったるいキス。
 一方的なものではなく、和音からも求められるものだった。
 唇を吸い、舌を吸い、それを味わう。

 そのままあつくなった躰に触れ、我慢が出来なくなった和音が早く挿入れてと強請る。
 初々しい和音もかわいらしいけれど、すぐにぐずぐずになって性に素直になる和音もかわいい。
 自分で足を開かせて、準備をしたという彼のナカに指を挿入する。
 準備した、指じゃなくていいと和音は言うが、まあ正直準備をしたというよりは俺が来る前にひとりでシていただけだろうとわかっている。
 大体そうだもんな。
 本当は俺が慣らしてあげたい。
 最初から、全部。
 でもそんなのは無理だとわかってもいる。
 発情期、始まる前から一緒にいれたら、俺がしてあげるのに。

「やだあ、や、奥、ほし、ね、指じゃ届かない、からあ……」

 かわいくて素直なお強請りに、これ以上焦らすのもかわいそうかと、仕方ないなあ、と、かわいく言えたから和音に譲ったげる、と指を引き抜こうとしたら、その指をぎゅう、と締め付けて呆気なく達してしまった。
 今のは俺の声でイったような気がする。
 ……なんて俺を興奮させるのが上手い子なんだろう。

 和音の頬を撫で、自身を宛てがい、ゆっくりと奥に進む。
 発情期の、更に自分で慰めていたそこは十分に柔らかい。
 でも傷付けたくないから、少しの痛みも感じてほしくないから、ゆっくり。
 それはきっと和音にはもどかしいんだと思う、腰を揺らしているから。
 それでも。
 焦らしてるんじゃない、だいじにしてんの。
 ただでさえ受け入れる方には負担がかかる、それを発情期の間は何度も求めるのだから、こっちが気にしてあげなきゃ。

「んうー……」
「……っ、和音、気持ちよさそ」
「きもちい、よお……」

 素直に答える彼が愛しい。
 柔らかい髪を撫で、今日は和音が満足するまで何回でも抱いてあげる、そう言うと、不安そうに、でも期待した和音の瞳が揺れて、うん、と頷いた。

 その言葉通り、和音がまた意識を飛ばすまで何度も抱いた。
 対面から、後ろから、和音が求めるならまたかおを見て、奥に何度も。
 甘ったるい声が段々と枯れてきて、咳き込むようになって、体力がついていかなくなる。
 がくん、と首が揺れて、力が抜ける。
 そうなったら終わり。
 ……今日はね。

 いつもの通り躰を綺麗にして、折角だから洗いたてのシーツに替えて。
 寝巻きを整えて暖房を調節して、また風邪をひかないようにしっかりと布団を掛けてやる。
 つい先程まで色っぽく喘いでいたとは思えない程幼い寝顔に少し安堵して、おやすみ、と返事のこない挨拶を口にした。


 ◆◆◆

 昼過ぎ、置いてあった食パンを、消費期限が切れる前にと焼き、卵とベーコンも。そんな朝食のような昼食を食べ終えた頃、電話が鳴った。
 仕事の確認か何かかな、そう思い手に取ると、そこには和音の名前が出ている。
 どういうことだとその着信に出ると、ゆーまさん、と少し硬い声が耳に入ってきた。

 和音は電話に慣れていないようで、最初はいつもそうだった。
 話してる内に少しずつ、柔らかくなっていく。
 それが何だか特別感があって、すきだったんだ。電話に慣れてない子が俺と必死に話してるんだと思うとかわいくて。
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