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六
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それから、まだかな、もうそろそろだろうとそわそわした頃、漸くアプリの通知が届いて、……やっとだ、これで言い訳なしで和音に会える、と電話を掛けた。
うん、体調はもう、全然……元気、多分明日にはもう発情期入ると思う、けど……別になんもいらないよ、うん、わかった、ん、じゃあ、明日。
少し硬くなった声だった。
和音だってあんなこと、きっと言いたくて言ったんじゃない。そうじゃなきゃ、あんな不安そうな、後悔したような表情はしない。
俺がこどもの話を振ったから、思わず口にしてしまったんだと思う。
……そっちの方が俺にはクるんだけど。
クリスマスも正月も、会いたくても会う理由が見つけられなかった。
あんなことを言われて、言わせてしまった直後で会う勇気もなかった。
クリスマスプレゼントすら買うことも出来なかった。俺からなんて貰ったら困っちゃうかな。
ケーキくらいなら形も残らないし贈っても……いや、必要ならとっくに予約してるか。
クリスマスは花音たちと過ごしたのだろうか。
そうであってほしい。
ひとりで過ごしてほしくなかったし、勿論、花音たち以外の誰かとはやはり嫌だった。
正月は?親戚と集まったりしたのかな、また芽依ともかおを合わせたのだろう。
俺の話はした?四歳じゃもう忘れてるかな。
俺はあの柔らかさを忘れることは出来ない。一瞬でも、親子になれたような感覚だった。
……発情期中にしか和音には会わない。
それならその会えた時は優しくしようと決めていた。
今回はもっと。
諦められないなら、もっとだ、もっともっと優しく甘やかして、名誉挽回するしかない。
挽回する名誉が元々あったかはわからないけど。
◆◆◆
当日は夕方にウェブ上でのミーティングがあるくらいだった。在宅での仕事だったのをいいことに、その時間まで、和音から貰った服を着て過ごす。
クリスマスプレゼントは洋服だった。
確認をした時に、和音の意図はすぐにわかった。
いつもシャツ一枚しか残して帰らなかったから。あわよくば、と思ったのだろう。
もうこの段階で、それでも一枚しか残さないなんて意地悪は……いや、意地悪のつもりではなかったのだけど、出来なかった。
地獄だなんて思われたくない。和音の思う通りにしたい、……気を惹きたいのだ。
十分ににおいはついただろうか、自分ではわからない。着替えずにそのまま和音の家まで車を走らせた。
途中で色々と買い込んで。
今回からはちゃんと、一緒に発情期を乗り越えるつもりだった。
発情期は風邪なんかより辛い、と言う和音に、それでも残ると体調不良の面倒をみた。
そこまで伝えたのに、まだ発情期の方を優先してもらえない、と思われたくなかった。
しんと静かな廊下を歩き、玄関の扉を開ける。
何度か経験した甘いにおいに迎えられ、すぐにでも寝室に行きたいところを抑え、先に買い込んだものを冷蔵庫に仕舞い、そうして漸く彼の元に行く。
扉の先で、また俺の名前を呼んでるのが聞こえた。
胸がぎゅうぎゅうとなる。
まだ名前を呼んでくれている。
和音にとってはただの都合の良い番のつもりだったのかもしれない。こどもは作りたくないくらいの。
それでも発情期に、ひとりでいる時に、俺の名前を呼んで慰めるくらいには俺のこと、考えてくれてるんだよね?
じゃあまだ、俺、挽回出来ると思って大丈夫だよな?
「ゆうまさんっ……」
名前をまた呼ばれた瞬間の入室だった。
ぼおっとしたかおで、でも潤んだ瞳でじっと俺を見上げて、困惑したように眉を下げた後、少しだけ笑った。
服がクリスマスにプレゼントしたものだと気付いたらしい、似合ってると荒い息で口にした。
蕩けたかおのまま、ちょうだい、とかわいく服をお強請り出来た和音に、いいよと了承すると、驚いたかおをして、すぐに泣きそうになった。
……そんなに嬉しいの、こんなことが。たった数枚の服が。
巣作りというものを見たことがない。
個人差がある、それでも、これくらいじゃ少ないということくらいは知っていた。その上で一枚しか渡してなかったことも。
意地悪だと思う。それでも貰えないよりはましだったんだろう、もっとほしいとは言いつつも、最終的にはその一枚で我慢していた。するしかなかった。
それと比べたら、和音からしたら、クリスマスプレゼントが思惑通りに進んで嬉しかったのかもしれない。
その服を、汚さないように、後の為に取っておく、我慢する、と唇を結んだ和音に、じゃあ汚れないように取っておこうか、と手の届かないところに置くと、あ、と残念そうに声を漏らした。
……そんなに服がいい?今は俺本体がここにいるんだから、においは十分でしょ。
「……ん、ゆうまさんがいるから、いい……」
甘えたように鼻を鳴らし、腕を伸ばす。
小さな頭を俺の胸元に寄せるものだから、ついその頭を撫でてしまう。
それで正解だったようで、俺を見上げた表情はもうとろとろになっていた。少し、安堵する。和音に気まずさが感じられないことに。
背中をなぞると細い腰が揺れる。
発情期の躰は少しの刺激でも簡単に拾って快感に繋げていく。
自慰行為をするように、自分のものを俺の腹に擦り付けて、時折俺のにおいを吸い、肌に頬を押し付ける。
撫でてやると、イきそう、と言いながら、俺の許可を待つように腰を揺らした。
その汚された腹に、マーキングされてるみたい、と呟いてしまった。
別に犬のようと蔑んだ訳ではない。
和音のものだと主張されたようで、……嬉しかったのだ、単純に。
うん、体調はもう、全然……元気、多分明日にはもう発情期入ると思う、けど……別になんもいらないよ、うん、わかった、ん、じゃあ、明日。
少し硬くなった声だった。
和音だってあんなこと、きっと言いたくて言ったんじゃない。そうじゃなきゃ、あんな不安そうな、後悔したような表情はしない。
俺がこどもの話を振ったから、思わず口にしてしまったんだと思う。
……そっちの方が俺にはクるんだけど。
クリスマスも正月も、会いたくても会う理由が見つけられなかった。
あんなことを言われて、言わせてしまった直後で会う勇気もなかった。
クリスマスプレゼントすら買うことも出来なかった。俺からなんて貰ったら困っちゃうかな。
ケーキくらいなら形も残らないし贈っても……いや、必要ならとっくに予約してるか。
クリスマスは花音たちと過ごしたのだろうか。
そうであってほしい。
ひとりで過ごしてほしくなかったし、勿論、花音たち以外の誰かとはやはり嫌だった。
正月は?親戚と集まったりしたのかな、また芽依ともかおを合わせたのだろう。
俺の話はした?四歳じゃもう忘れてるかな。
俺はあの柔らかさを忘れることは出来ない。一瞬でも、親子になれたような感覚だった。
……発情期中にしか和音には会わない。
それならその会えた時は優しくしようと決めていた。
今回はもっと。
諦められないなら、もっとだ、もっともっと優しく甘やかして、名誉挽回するしかない。
挽回する名誉が元々あったかはわからないけど。
◆◆◆
当日は夕方にウェブ上でのミーティングがあるくらいだった。在宅での仕事だったのをいいことに、その時間まで、和音から貰った服を着て過ごす。
クリスマスプレゼントは洋服だった。
確認をした時に、和音の意図はすぐにわかった。
いつもシャツ一枚しか残して帰らなかったから。あわよくば、と思ったのだろう。
もうこの段階で、それでも一枚しか残さないなんて意地悪は……いや、意地悪のつもりではなかったのだけど、出来なかった。
地獄だなんて思われたくない。和音の思う通りにしたい、……気を惹きたいのだ。
十分ににおいはついただろうか、自分ではわからない。着替えずにそのまま和音の家まで車を走らせた。
途中で色々と買い込んで。
今回からはちゃんと、一緒に発情期を乗り越えるつもりだった。
発情期は風邪なんかより辛い、と言う和音に、それでも残ると体調不良の面倒をみた。
そこまで伝えたのに、まだ発情期の方を優先してもらえない、と思われたくなかった。
しんと静かな廊下を歩き、玄関の扉を開ける。
何度か経験した甘いにおいに迎えられ、すぐにでも寝室に行きたいところを抑え、先に買い込んだものを冷蔵庫に仕舞い、そうして漸く彼の元に行く。
扉の先で、また俺の名前を呼んでるのが聞こえた。
胸がぎゅうぎゅうとなる。
まだ名前を呼んでくれている。
和音にとってはただの都合の良い番のつもりだったのかもしれない。こどもは作りたくないくらいの。
それでも発情期に、ひとりでいる時に、俺の名前を呼んで慰めるくらいには俺のこと、考えてくれてるんだよね?
じゃあまだ、俺、挽回出来ると思って大丈夫だよな?
「ゆうまさんっ……」
名前をまた呼ばれた瞬間の入室だった。
ぼおっとしたかおで、でも潤んだ瞳でじっと俺を見上げて、困惑したように眉を下げた後、少しだけ笑った。
服がクリスマスにプレゼントしたものだと気付いたらしい、似合ってると荒い息で口にした。
蕩けたかおのまま、ちょうだい、とかわいく服をお強請り出来た和音に、いいよと了承すると、驚いたかおをして、すぐに泣きそうになった。
……そんなに嬉しいの、こんなことが。たった数枚の服が。
巣作りというものを見たことがない。
個人差がある、それでも、これくらいじゃ少ないということくらいは知っていた。その上で一枚しか渡してなかったことも。
意地悪だと思う。それでも貰えないよりはましだったんだろう、もっとほしいとは言いつつも、最終的にはその一枚で我慢していた。するしかなかった。
それと比べたら、和音からしたら、クリスマスプレゼントが思惑通りに進んで嬉しかったのかもしれない。
その服を、汚さないように、後の為に取っておく、我慢する、と唇を結んだ和音に、じゃあ汚れないように取っておこうか、と手の届かないところに置くと、あ、と残念そうに声を漏らした。
……そんなに服がいい?今は俺本体がここにいるんだから、においは十分でしょ。
「……ん、ゆうまさんがいるから、いい……」
甘えたように鼻を鳴らし、腕を伸ばす。
小さな頭を俺の胸元に寄せるものだから、ついその頭を撫でてしまう。
それで正解だったようで、俺を見上げた表情はもうとろとろになっていた。少し、安堵する。和音に気まずさが感じられないことに。
背中をなぞると細い腰が揺れる。
発情期の躰は少しの刺激でも簡単に拾って快感に繋げていく。
自慰行為をするように、自分のものを俺の腹に擦り付けて、時折俺のにおいを吸い、肌に頬を押し付ける。
撫でてやると、イきそう、と言いながら、俺の許可を待つように腰を揺らした。
その汚された腹に、マーキングされてるみたい、と呟いてしまった。
別に犬のようと蔑んだ訳ではない。
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