【完結】でも、だって運命はいちばんじゃない

ちかこ

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 ◆◆◆

「こんなとこで何してんの」

 和音の家、玄関の扉を開けてすぐのところに和音がへたりこんでいた。
 半袖シャツ……それは前回俺が置いていったものだ、それを、それだけを着て、暖房がついているとはいえ効きの弱い玄関にいるなんて。
 元気な時や暖かい季節ならそれもかわいいで済むかもしれないけれど、ただでさえ熱っぽくなってるヒート中、真冬にそんな薄着で寒い玄関にいるなんて、風邪でもひきたいのか。

「俺のこと、待ってたの、寝室で待てなかった?」
「……待てなかった、ごめんなさい……」
「もう」

 抱えた和音の背を軽く叩き、寝室まで連れていき、ベッドに下ろす。
 既に出来上がってる和音を見て、そうだろうなとは思っていたけどベッドの惨状を見るに、やはり自分で慰めた後のようだ。
 だからこそさみしくでもなったのだろうか。

 ……切羽詰まっているのだろうか、シャワーも待てないと止められてしまう。煙草のにおい、嫌そうだったのに。
 すんすんにおいを嗅いだかと思うと、次はじっと俺の腹を見て、そっと触れる。
 ……誘ってんのかな。いや、誘ってんのか。

 着ていた俺の服を脱ぎ、においをつける為にそれを着てほしいと強請る。
 所謂彼シャツの状態だ、脱がすのは惜しかった。もっとその姿を見てたい。
 けれど、この服しか借りられないとわかってる和音が涙目でお願いしてきたら、それくらい、譲るしかないじゃないか。
 律稀にも聞いて、十分自分がしてることが酷いことだとわかってる。そうわかっていて……敢えて和音に無理をさせているのだから。

 華奢な和音には合わないサイズの服を脱ぐ。その下は何も着ていない。
 白くて、でも紅く火照った躰を少しでも隠すように膝を立てて、視線を逸らしながらシャツを渡してくる。
 脱いだばかりのそれは和音の体温が移り、洗濯もしたのだろう、もう和音のにおいしかしない。
 汗のにおいもするし、また裾の辺り、和音の出したもので汚れてしまっている。
 それに今更気付いた和音は、泣きそうな情けないような、そんな声でやっぱり脱げとシャツを引いた。

「ぬいでえ……」
「俺のにおい、まだついてないでしょ」
「そうじゃないっ、う、よ、汚しちゃってんの、おれ、き、汚いから、汗とか、もっとっ、汚いからあ」
「んー、はは、ここら辺でしょ、濡れてる。いいよ、どうせまた汚れるし」
「……っでも!」
「ね、和音のにおいと俺のにおいが混じったら気持ちいいと思うよ」
「……へあ」

 興奮する。
 和音なら、和音のなら、どれだけ汚されたって構わない。
 申し訳なさそうにするかおも、泣きそうなかおも、言うことをきかない俺に怒ったかおも、全部かわいい。
 和音をそっと押し倒して、やだやだ言うところに触れて、触ってほしいという場所に触れて、何度も躰を震わせ、奥がいいと言うから奥に進む。

「奥がいいんだっけ?」
「ん、ンっ……」
「入るかな……」
「ゔ……ッ!?」

 柔らかいところの更に奥、普通ならこわくて進まない場所。
 ぐいぐいと押し付けて、少しずつ。
 ぶわ、と脂汗が浮く。本来なら受け入れない場所に入ろうとしてるのだ、躰が拒否をする。

「あ、だ、だめ、おく、あ、あ、だめ、おかっ、おかしく、なっ……あ、だめ、入っ……」
「痛い?」
「やあ、あ、こ、こわっ……こわいっ、あ、奥、や、それ以上っ……う、あ、」
「こわい?大丈夫、ね、和音のもっと奥、ちょっとだけ入らせて」
「あ、あ、あう、あッ──……」

 ぐ、と奥の方、いつもより深いところ。
 和音には過ぎたものだったのかもしれない、だらしなく舌を出したまま、びくびく躰を震わせて、また達してしまった。

「は、あ、ゔう、ん、あー……っ」

 そのまま動かずに待っていたけれど、和音のナカがきゅうきゅう絞り上げ、それにまた感じたらしい和音はひとり身を捩った。
 気持ち良いのなら良かった。
 もっと快くさせたい。
 ……前回のように汚れてしまう前にシャツ、脱いでおくか。

「ンっゔ、ゔ!あっ、あぅ、んゔ」
「大丈夫?痛くない、よね」
「はっ、あん、う、きもぢいっ、あ、こわいぃ、ぁう、や、ゆ、まさあ……ん、ッぐ」

 下半身が痙攣する。
 やはり癖になってしまったらしい潮を何度も吹いて、びしゃびしゃになった腹に触れると、また高い声を上げて達してしまう。
 譫言のように、きもちいい、こわい、ゆうまさん、を繰り返す。腕を伸ばしてぎゅうとしがみついて来るのが愛しい。
 こわい思いをさせてしまうのは少し辛い、けれどそれは知らない快感からきたものだから、止める必要はない。
 和音が満足するまで突いてあげる。
 それが俺が約束した内容だから。
 和音が眠るまでずっと、気持ち良くしてあげる。

「ア、ゔ、んっう、あ、あっ、あ、ゆ、っ……」

 視線が合った。
 ゆうまさん。
 そう小さく零して、和音は漸く気を失った。

 かわいい、
 愛しい、

 心臓がばくばくしている。
 もう嫌だ。

 この子がオメガじゃなければ、俺がアルファじゃなければ、こんな意地なんて張らないで済んだのに。
 ただ愛してるを言えばよかったのに。
 無理に手にするのがこわくて、逃げられたくなくて、我慢されるのだって嫌で、優しくしたいのに。

 俺は何の為にこの子を泣かせているのだろうか。
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