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六
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「確かに番が出来たら勘違いされないように僕の話してもいいって言ったけどさあ、それさあ、勘違いされてんじゃん、なんで僕がゆうま先輩の番みたいになってんのさ、指輪はフェイクだって素直に言わないの、虫除けだって、本命には言わなきゃそりゃだめでしょ」
「……ごめん」
「佐伯グループでしょ、あんなおっきなとこに睨まれたらうちの会社なんて飛んじゃうよお」
そんなことはさせないけど、しないと思うけど、でも悪いとは思ってる。
律稀なら許してくれると思ったんだ。
同時に罪悪感もあった。
和音に似てる律稀に対して。
律稀にそのつもりはなくても、勝手に寄せてしまった想像の和音に、その指輪が偽物だと何故か言いたくなかった。
俺の番は優しい子だから、そう言いながら、和音と律稀が重なっていたのも事実。
律稀とそういう関係になんて思ったことはないけれど、律稀を切り捨てることで和音も手放してしまうような気がして。
勝手な話だけど。
「……まあ、会社やばそうになったら助けてよね、ゆうま先輩」
この指輪はもう売っちゃうからね、そう笑った律稀に頭を下げて、コーヒーショップを後にする。
ひとつ、すっきりした気がした。
◆◆◆
もうすぐ着くよ、
買い物を済ませて車に乗り、そう和音にメッセージを送った。
わかった、とだけ返ってきた簡素な返信につい口元はにやけてしまう。
運転中も、車を降りる時も、エレベーターに乗る時も、玄関の前に立った時も。
そして開けられた玄関の扉、そこで頬を紅くして、上がって、と言う和音に、また甘いにおいを感じた。
料理をする俺に、見てていい、とじいと傍で見る和音。
話し掛けてくる和音に、ついべらべらと返してしまう自分。
ついかわいいと口走ってしまった。誤魔化すように視線を逸らしてしまったけれど。
美味しい、と口元を綻ばせる和音も、ソファに沈んでテレビを見る和音も、じわじわとにおいを濃くしていく和音も、……寝室に行く和音も、かわいいパジャマ姿も、脱いだ姿も、俺の服を強請る和音も、全てが想像以上の破壊力だった。
ベッドの上で身を捩る和音も、とろとろの表情も、甘えた声も、全て。
やっぱり夢じゃないのかな、これ。
なんか急に上手く行き過ぎでは?あの数年はなんだったのかというくらい。
本当に俺、和音のことを噛んだのだろうか。
細い首筋に触れて、そのまま指を滑らせる。
指先に引っ掛かるのは確かに傷痕。
横を向かせて、その痕を確認する。
確かに噛み痕、なんだけれど。
「ここ、もっかい噛んでいい?」
「んえ……なんで……?」
もうちゃんと考えることも難しいんだろう、呂律の回らない口元から垂れた唾液を拭い、ちゃんと番になれてるかわかんないから、と言う俺に、何言ってんだこいつ、という表情を向ける。
それでも尚食い下がる俺にいーよ、と項を向けた。
自分でさせておきながらなんて無防備な子だ、と少し腹も立った。
間近で見るその痕は痛々しく、でも甘いにおいがして、美味しそうだと、優しくしたいと、本能と理性が混じる。
唇で触れて、軽く吸って、甘噛み。一々甘い反応をする和音にぞくぞくする。
軽く歯を立てると、ぎゅう、と躰が硬くなった。
かわいそうに。
かわいい。
まるで肉食動物のように噛み、じわりと滲む血を舐め取る。
そんなものでさえ甘く感じた。
舐めて、吸って、びくびくする和音を感じながら、またその血を舐め取って。
その内、我慢が出来なくなった和音が、もういいでしょ、とそう言いながら誘うような瞳になり、俺も我慢が出来なくなって、また和音のナカを蹂躙する。
「イきたいよお……」
焦らしたつもりはなかったけれど、和音にはそう捉えられたようだ。
涙声のお強請りは下半身にキた。
気持ちいい、もっと、もっと、もっと。
悠真さん、もっと。
そんな甘いお強請りに耐えられる奴なんてあるか。
暫く抽挿を続けていると、あ、トんだな、とわかる時がある。
恥ずかしい、そんな気持ちで抑えていた声がだだ漏れになって、あ、あ、きもちい、おく、そこ、きもちいい、と魘されるように欲望に素直になる。
多分これは起きても記憶にないやつだな、とわかるけれど、それを堪能しないのも勿体ない。
発情期はおかしくなってしまうものなのだ。
「和音」
「んッ、あ、あ、ん、う、ぅあ」
「和音、ね、俺の名前呼んで」
「っう、ゆ、ま、さん、ゆーま、さんっ」
「うん」
「ゆぅましゃ、う、あ、ッん、ゆうまさ、ぁう」
「はー……かわいー……」
必死に名前を呼んで、縋り付くように俺のシャツを握り締め、頬を寄せる。
和音がにおいをつける為に着ててと懇願したシャツは俺の汗と、和音の涙と唾液でべしょべしょだ。
鼻水も少し出てるかな。お腹の辺りは和音の精液まで。……和音、本当にこのシャツでいいのか。
「う、ゔ……あ、っう、ん、う、きもちい、あ、もっとお……」
「うん、和音が満足するまで付き合うからね、いっぱい気持ち良くなっていいよ」
「やらあ、アっ、お、かしく、なるうっ……」
「大丈夫、おかしくなっても抱いたげる」
いっそおかしくなってくれた方が。
そんなことを考えるのは狡いんだろうな。
「……ごめん」
「佐伯グループでしょ、あんなおっきなとこに睨まれたらうちの会社なんて飛んじゃうよお」
そんなことはさせないけど、しないと思うけど、でも悪いとは思ってる。
律稀なら許してくれると思ったんだ。
同時に罪悪感もあった。
和音に似てる律稀に対して。
律稀にそのつもりはなくても、勝手に寄せてしまった想像の和音に、その指輪が偽物だと何故か言いたくなかった。
俺の番は優しい子だから、そう言いながら、和音と律稀が重なっていたのも事実。
律稀とそういう関係になんて思ったことはないけれど、律稀を切り捨てることで和音も手放してしまうような気がして。
勝手な話だけど。
「……まあ、会社やばそうになったら助けてよね、ゆうま先輩」
この指輪はもう売っちゃうからね、そう笑った律稀に頭を下げて、コーヒーショップを後にする。
ひとつ、すっきりした気がした。
◆◆◆
もうすぐ着くよ、
買い物を済ませて車に乗り、そう和音にメッセージを送った。
わかった、とだけ返ってきた簡素な返信につい口元はにやけてしまう。
運転中も、車を降りる時も、エレベーターに乗る時も、玄関の前に立った時も。
そして開けられた玄関の扉、そこで頬を紅くして、上がって、と言う和音に、また甘いにおいを感じた。
料理をする俺に、見てていい、とじいと傍で見る和音。
話し掛けてくる和音に、ついべらべらと返してしまう自分。
ついかわいいと口走ってしまった。誤魔化すように視線を逸らしてしまったけれど。
美味しい、と口元を綻ばせる和音も、ソファに沈んでテレビを見る和音も、じわじわとにおいを濃くしていく和音も、……寝室に行く和音も、かわいいパジャマ姿も、脱いだ姿も、俺の服を強請る和音も、全てが想像以上の破壊力だった。
ベッドの上で身を捩る和音も、とろとろの表情も、甘えた声も、全て。
やっぱり夢じゃないのかな、これ。
なんか急に上手く行き過ぎでは?あの数年はなんだったのかというくらい。
本当に俺、和音のことを噛んだのだろうか。
細い首筋に触れて、そのまま指を滑らせる。
指先に引っ掛かるのは確かに傷痕。
横を向かせて、その痕を確認する。
確かに噛み痕、なんだけれど。
「ここ、もっかい噛んでいい?」
「んえ……なんで……?」
もうちゃんと考えることも難しいんだろう、呂律の回らない口元から垂れた唾液を拭い、ちゃんと番になれてるかわかんないから、と言う俺に、何言ってんだこいつ、という表情を向ける。
それでも尚食い下がる俺にいーよ、と項を向けた。
自分でさせておきながらなんて無防備な子だ、と少し腹も立った。
間近で見るその痕は痛々しく、でも甘いにおいがして、美味しそうだと、優しくしたいと、本能と理性が混じる。
唇で触れて、軽く吸って、甘噛み。一々甘い反応をする和音にぞくぞくする。
軽く歯を立てると、ぎゅう、と躰が硬くなった。
かわいそうに。
かわいい。
まるで肉食動物のように噛み、じわりと滲む血を舐め取る。
そんなものでさえ甘く感じた。
舐めて、吸って、びくびくする和音を感じながら、またその血を舐め取って。
その内、我慢が出来なくなった和音が、もういいでしょ、とそう言いながら誘うような瞳になり、俺も我慢が出来なくなって、また和音のナカを蹂躙する。
「イきたいよお……」
焦らしたつもりはなかったけれど、和音にはそう捉えられたようだ。
涙声のお強請りは下半身にキた。
気持ちいい、もっと、もっと、もっと。
悠真さん、もっと。
そんな甘いお強請りに耐えられる奴なんてあるか。
暫く抽挿を続けていると、あ、トんだな、とわかる時がある。
恥ずかしい、そんな気持ちで抑えていた声がだだ漏れになって、あ、あ、きもちい、おく、そこ、きもちいい、と魘されるように欲望に素直になる。
多分これは起きても記憶にないやつだな、とわかるけれど、それを堪能しないのも勿体ない。
発情期はおかしくなってしまうものなのだ。
「和音」
「んッ、あ、あ、ん、う、ぅあ」
「和音、ね、俺の名前呼んで」
「っう、ゆ、ま、さん、ゆーま、さんっ」
「うん」
「ゆぅましゃ、う、あ、ッん、ゆうまさ、ぁう」
「はー……かわいー……」
必死に名前を呼んで、縋り付くように俺のシャツを握り締め、頬を寄せる。
和音がにおいをつける為に着ててと懇願したシャツは俺の汗と、和音の涙と唾液でべしょべしょだ。
鼻水も少し出てるかな。お腹の辺りは和音の精液まで。……和音、本当にこのシャツでいいのか。
「う、ゔ……あ、っう、ん、う、きもちい、あ、もっとお……」
「うん、和音が満足するまで付き合うからね、いっぱい気持ち良くなっていいよ」
「やらあ、アっ、お、かしく、なるうっ……」
「大丈夫、おかしくなっても抱いたげる」
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