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六
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「あ、アッう、はぁ……っん、は、はや、くっ」
甘ったるい声で鳴きながら、和音は自分で髪を掻き分け、その場所を見せつけてきた。
噛まれる場所、項が白く誘う。
唸ってしまった。そんな誘い方、してくると思わなかったから。
涙を零しながら、噛んで、早く、気持ちいい、噛んで、そう言う和音がかわいくて愛おしくて、かわいそうで。
ごめん、こんな狡いことして。
そう思いながら彼に触れる。
ごめん、でも逃がしたくない、食べてしまいたい。
甘いにおいの強い場所を舐める。
和音の躰が跳ねて、奥がきゅうと締まった。
噛む位置を確かめるように歯を立てた。失敗はしたくない。
軽く噛んで、それから。
「んい……ッ」
その瞬間、自分が人間じゃないように感じてしまった。
まるでそこを食いちぎってしまうかのような。
和音の、耐えるような声と、少し震えた躰、また締まった奥と、ぶわ、と強くなったように感じるにおい。
痛くない、気持ちいいから動いて。
どろどろになった和音がまたお願いを口にするのが嬉しくて、噛んでしまった事実が目の前にあるのが嬉しくて、まるで夢のように感じてしまって、何度も彼の名前を呼んで、その項に唇を落とした。
血の味がする、それが却って興奮した。
夢なんかではない、俺のものになった、と。
かわいい。
かおが見たい。
こっちを向かせてキスがしたい。
でもそれは望み過ぎのような気がして出来なかった。
和音からは十分過ぎる程貰ってしまった、これからは俺が与える番だ。
番になったのだから。もう。
暫くすると和音は眠るように落ちてしまった。
自分の、あまりにもがつがついきように少し反省する。
初めての躰にはきつかったかな。
でももう、今日無理にでも番にしなかったら次はないような気がして。
何がなんでもほしかった、嘘を吐いても、狡いことをしても。
気を失った和音の息はまだ荒い。汗でひっついてしまった前髪を避ける。
……寝てるかおは余計に幼くて、ひとつ下だとは思えない程あどけない。
その幼いかおがぐしゃぐしゃだ。
涙や唾液を拭ってやる。罪悪感がすごい。かわいい。成人してるとは思えない、高校の頃のまま、かわいい。
「……かわいい」
泣くかと思った。
わかってる、これが運命じゃないことくらい。
運命ならもっと早くに出会えてた筈だ。
ただの偶然、それだけ。
欲望のまま汚してしまった和音の躰を綺麗にしながら、つい先程までの彼を思い出してしまう。
沢山イかせた、沢山泣かせた。
……欲を言えばもう少し抱きたかった、そう思うのは俺も和音のフェロモンにあてられたから。
これから先、和音のものは俺にしか効かなくなる。それが嬉しい。
ベータが性被害にあう以上、フェロモンが効かなくたってオメガも安全な訳ではないけど、それでも。
少なくとも、和音を番にすることはもう誰も出来ないのだ、俺が死なない限りは、誰にも。俺だけのオメガになったのだ。
独占欲、執着心。
……アルファはその番に執着する、何人番を作れても、それでも。
何をしてでも、和音を、和音から、俺に縋らせたい。
◆◆◆
翌朝、ベッドの上で土下座までした和音が指輪の主に謝りに行く、と言う。
……それは困る。
慌ててそんな必要はないと伝え、これから先のルールを決めよう、と誤魔化した。
るーる、ときょとんとしたかおさえかわいい。ああ、紅い目元が痛々しくてかわいそうだ。
昨晩既に和音のスマホは弄ってしまった。中身は見てない、あくまでもホーム画面にあるアプリをひとつ、共有しただけ。
バース用の、発情期を管理するアプリだ。
遠慮するかいやだと拒否をするか、素直に共有してくれるかわからなかったので勝手にした。
だって流石に発情期がわからないのは困る。不定期だという和音のものなら尚更。
そう考えていると、ヒート中ではない和音自身は少し冷めたところもあるようで、ヒートの時だけ相手してくれればいい、それ以外はそっちの番が優先で構わない、と言う。
ヒート中や花音が居ない時はこんな子なのか、と少し衝撃を受けた。
花音の前のようなふにゃふにゃした和音を急に見せてもらえるとは思ってなかった、でも流石に、こんなドライだとは。
……いや、そんなとこもかわいいと思うよ、結果的に合鍵用意する話に頷くし、つい頭を撫でてしまった俺に瞳を細めるし。
絶対に嫌!というようには見えない……から、少し安心した。
今からだ。
俺のスタートは今から。
無理矢理噛む、番になるなんて誰でも出来る。
そこから俺に落ちてもらわないといけない。
悠真さんがいい、悠真さんじゃないとだめ、そう思わせないと。
和音の番は花音でも他のひとでもない。
俺に頼って、俺に甘えて、俺のことを想ってほしい。
その為には俺だって我慢しないといけない、辛くてもさみしくても。
数年待ったのだ、多少はまだ誤差の範囲。和音が手に入るならまだ待てる。
そうだな、半年……一年。
一年で、和音を俺の本当の番にする。
◆◆◆
「もうそろそろ発情期来そう?」
そんなメッセージを送ったのは共有したアプリが発情期が近いと知らせてきたから。
和音と番になってから一ヶ月半。
よくそこまで我慢したものだと思う。
和音に意識させる為とはいえ、俺の方が見限られてしまうのではないかとも思った。
甘ったるい声で鳴きながら、和音は自分で髪を掻き分け、その場所を見せつけてきた。
噛まれる場所、項が白く誘う。
唸ってしまった。そんな誘い方、してくると思わなかったから。
涙を零しながら、噛んで、早く、気持ちいい、噛んで、そう言う和音がかわいくて愛おしくて、かわいそうで。
ごめん、こんな狡いことして。
そう思いながら彼に触れる。
ごめん、でも逃がしたくない、食べてしまいたい。
甘いにおいの強い場所を舐める。
和音の躰が跳ねて、奥がきゅうと締まった。
噛む位置を確かめるように歯を立てた。失敗はしたくない。
軽く噛んで、それから。
「んい……ッ」
その瞬間、自分が人間じゃないように感じてしまった。
まるでそこを食いちぎってしまうかのような。
和音の、耐えるような声と、少し震えた躰、また締まった奥と、ぶわ、と強くなったように感じるにおい。
痛くない、気持ちいいから動いて。
どろどろになった和音がまたお願いを口にするのが嬉しくて、噛んでしまった事実が目の前にあるのが嬉しくて、まるで夢のように感じてしまって、何度も彼の名前を呼んで、その項に唇を落とした。
血の味がする、それが却って興奮した。
夢なんかではない、俺のものになった、と。
かわいい。
かおが見たい。
こっちを向かせてキスがしたい。
でもそれは望み過ぎのような気がして出来なかった。
和音からは十分過ぎる程貰ってしまった、これからは俺が与える番だ。
番になったのだから。もう。
暫くすると和音は眠るように落ちてしまった。
自分の、あまりにもがつがついきように少し反省する。
初めての躰にはきつかったかな。
でももう、今日無理にでも番にしなかったら次はないような気がして。
何がなんでもほしかった、嘘を吐いても、狡いことをしても。
気を失った和音の息はまだ荒い。汗でひっついてしまった前髪を避ける。
……寝てるかおは余計に幼くて、ひとつ下だとは思えない程あどけない。
その幼いかおがぐしゃぐしゃだ。
涙や唾液を拭ってやる。罪悪感がすごい。かわいい。成人してるとは思えない、高校の頃のまま、かわいい。
「……かわいい」
泣くかと思った。
わかってる、これが運命じゃないことくらい。
運命ならもっと早くに出会えてた筈だ。
ただの偶然、それだけ。
欲望のまま汚してしまった和音の躰を綺麗にしながら、つい先程までの彼を思い出してしまう。
沢山イかせた、沢山泣かせた。
……欲を言えばもう少し抱きたかった、そう思うのは俺も和音のフェロモンにあてられたから。
これから先、和音のものは俺にしか効かなくなる。それが嬉しい。
ベータが性被害にあう以上、フェロモンが効かなくたってオメガも安全な訳ではないけど、それでも。
少なくとも、和音を番にすることはもう誰も出来ないのだ、俺が死なない限りは、誰にも。俺だけのオメガになったのだ。
独占欲、執着心。
……アルファはその番に執着する、何人番を作れても、それでも。
何をしてでも、和音を、和音から、俺に縋らせたい。
◆◆◆
翌朝、ベッドの上で土下座までした和音が指輪の主に謝りに行く、と言う。
……それは困る。
慌ててそんな必要はないと伝え、これから先のルールを決めよう、と誤魔化した。
るーる、ときょとんとしたかおさえかわいい。ああ、紅い目元が痛々しくてかわいそうだ。
昨晩既に和音のスマホは弄ってしまった。中身は見てない、あくまでもホーム画面にあるアプリをひとつ、共有しただけ。
バース用の、発情期を管理するアプリだ。
遠慮するかいやだと拒否をするか、素直に共有してくれるかわからなかったので勝手にした。
だって流石に発情期がわからないのは困る。不定期だという和音のものなら尚更。
そう考えていると、ヒート中ではない和音自身は少し冷めたところもあるようで、ヒートの時だけ相手してくれればいい、それ以外はそっちの番が優先で構わない、と言う。
ヒート中や花音が居ない時はこんな子なのか、と少し衝撃を受けた。
花音の前のようなふにゃふにゃした和音を急に見せてもらえるとは思ってなかった、でも流石に、こんなドライだとは。
……いや、そんなとこもかわいいと思うよ、結果的に合鍵用意する話に頷くし、つい頭を撫でてしまった俺に瞳を細めるし。
絶対に嫌!というようには見えない……から、少し安心した。
今からだ。
俺のスタートは今から。
無理矢理噛む、番になるなんて誰でも出来る。
そこから俺に落ちてもらわないといけない。
悠真さんがいい、悠真さんじゃないとだめ、そう思わせないと。
和音の番は花音でも他のひとでもない。
俺に頼って、俺に甘えて、俺のことを想ってほしい。
その為には俺だって我慢しないといけない、辛くてもさみしくても。
数年待ったのだ、多少はまだ誤差の範囲。和音が手に入るならまだ待てる。
そうだな、半年……一年。
一年で、和音を俺の本当の番にする。
◆◆◆
「もうそろそろ発情期来そう?」
そんなメッセージを送ったのは共有したアプリが発情期が近いと知らせてきたから。
和音と番になってから一ヶ月半。
よくそこまで我慢したものだと思う。
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