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熱々のドリアは無事に完食した。させられた。
デザートにいちご付き。たっぷりの練乳がけ。どうにもカロリーを摂らせたいらしい。
冷蔵庫にいちごなんてなかった、来る時に買ってきたのか訊くと、ネットスーパーだと返ってくる。
成程、自炊と呼べるような自炊をしないおれには余り必要なのないものだった。
プリンは?そう訊くと、少し考えて、賞味期限切れそうだったから食べちゃった、と申し訳なさそうに笑う。
違う、そっちじゃない。お店の、買ってきたやつじゃなくて。
「悠真さんの、作ったやつ……」
また作るって言ったでしょ、リベンジするんでしょ、練習するって言ったじゃん。柔らかいやつ。
「お店の方が美味しいじゃん」
「……面倒ならいい」
「面倒じゃないよ」
慌てたように、明日作る、と言う。
別に急ぎで作れって訳じゃ……いや、出来れば早く食べたい。うん、明日、食べる、食べたい。発情期が終わってしまう。
三日目にして、ヒートは落ち着いてる、気がする。
気を抜いたらどっときてしまいそうな熱ではあるのだけれど、いつもより大分楽な気がする。
いっぱい寝れるし、ヒートはましだし、すごい、これが番の力ってやつか。
いつも初日だけだったから知らなかった、ちゃんと、それなりに回数重ねて落ち着かせてもらえれば、発情期の最中でもここまで違うもんなんだなあ。
そりゃあ皆必死になって運命の番を探すってものだ。
「和音、躰大丈夫?」
「ん、まだ痛いけど」
「そっちじゃなくて……いやそれも心配だけど。ヒートの方は?」
「おれフェロモン出てる?いつもより辛くないよ」
「出てるよ……朝よりは落ち着いてるけど」
「この調子だと明日には終わるかも」
おれの発情期は四、五日。一日違うだけでも大分違う。
苦しくて辛い日は一日でも少ない方がいいに決まっている。
嬉しい。
番が出来ても苦しいばっかりじゃんって思ってたけど、やっとこういうことかあ、って実感出来た。
「ご機嫌だね」
「うん、ほんとにいつもより全然いい、ありがとね、悠真さん」
ご飯も美味しい、いっぱい寝れる、お風呂も入れてもらえるし、服だってもらえた。
発情期は誰にも頼れない。それが普通だった。
番がいるだけで、それがこんなに快適……いや快適とは全然違うけど。こんなに楽だなんて思わなかった。
智子先生も早く番を作れと言う訳だ。
体調が悪いとメンタルにも響く。
それはまた逆も然り。
「ふへ」
「……まあいいや、和音がご機嫌なら。どう、このまま眠れそう?」
「このまま?」
「うん、子守唄でも歌う?」
「ん、ふふ、そんなのなくても寝れちゃう」
だって無意識かな、悠真さん、こどもにするようにとんとんしてんだもん、おれのこと。
それが妙に心地好くて、瞳を閉じてしまいそうになる。
発情期は自分で慰めるか寝ているかの二択。ずっとそうだった。
寝れるなら寝た方がいい、今までは気を失うために無理に躰を疲れさせてたくらいだ。そうわかってるのに。
今のおれは、違う意味で頭がおかしくなってるんだ。
折角悠真さんがいるのに、もう寝るのは勿体ない。
「シないの?」
「……躰が動かないくらい疲れてるでしょ、しないで眠れるならその方がいい」
「おれまだ発情期だよ」
痛みや怠さで動けないとはいえ、少しも、という訳ではない。
躰を起こしたり、ほら、今は手も震えてない。着せられた寝巻きの釦を外すことくらい、出来る。
「抱いてくれる約束でしょ」
「和音」
「悠真さんは疲れちゃった?そうだよね、色々してくれるもんね、ごはんも作ってくれたし、洗濯も掃除も、おれの世話も」
多分、明日で最後なんだ、だから、多少躰はきつくても、出来る内に。
どうせ終わったらまた寝落ちしてしまうんだ。
それならちょっとでも、悠真さんを感じたかった。
「ごめんね、おれがする」
「和音?」
「おれ、いま、できること……こんなことしかないから」
悠真さんの足の間に割って入る。ゆっくりしてる暇はなかった、止められる前に、やる。
「かずっ」
「ン……」
「……どしたの、急に」
悠真さんの下着に手をかける。
出したものに躊躇う時間もおかずに舌を這わせると、悠真さんは一瞬驚いた声を出し、すぐに諦めたように少し呆れたように問うてくる。
でも大きな手は撫でるように、頭や頬を擽ってくるものだから、嫌だという訳ではないと見なす。
「ん、ぅン……こうしたら、悦ぶって、見た」
「和音もそういうの見るんだ」
「……そりゃ、ん、おれも、男、だし」
無駄にはなったけど、一応。だって最初の頃、発情期がどういうものかよくわかってなかったし。番を作る気もなかったし。
それなら発情期を迎える為にオカズとか、必要かなって……思っ……
「口止まってる……」
「んう、あ、おっき、」
もう見慣れたような、まだそうでもないような。
おれのナカにはもう何度も挿入ったものだけれど、いつもしてもらうばかりで、おれが悠真さんを気持ちよくさせようなんて、そんな余裕はなかった。
正直やり方なんてよくわかってないし、口ん中、入りきらなくてぺろぺろしてるだけ。
それでも悠真さんが息を呑むのが、言葉を詰まらせるのが、喉を鳴らすのが、嬉しかった。
気持ちよくしてもらってばかりのおれでも、悠真さんを気持ちよくさせられるんだ、って。
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