【完結】でも、だって運命はいちばんじゃない

ちかこ

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「熱くない?」
「だ、いじょぶ」

 優しく髪を洗われて、その次は躰まで。
 自分で洗うと止めたけど、今更恥ずかしいもないでしょ、動けないでしょ、としっかり洗われてしまった。足の先まで。
 その通りなんだけど!散々見られた躰だけど!
 でも恥ずかしいは恥ずかしいに決まってる。

「……ッゔ、」

 泡に塗れた指先がきゅうと胸の突起を掴む。その泡のせいでにゅる、と逃げてしまい、思わず腰が揺れた。
 ほら、そうやってえっちなこと、すんじゃん……!
 悠真さんを睨みつけたつもりだった。
 でも嬉しそうな、少し意地悪なその笑顔は、面白い玩具を見つけた時のような、そんな表情にも見える。

「躰洗ってるだけなのに、気持ちよくなっちゃった?」
「洗ってる、だけっ、じゃ、ない、だろ……!」
「ええ?俺は隅々まで綺麗にしてるだけだよ、ここもここも、ほら、舐めちゃったり汚しちゃったりしたから綺麗にしないと。和音が硬くしてくれてるから洗いやすいなあ」

 わざとらしい。やっぱり意地悪だ。
 ここも、と言いながら下半身に触れる手はやらしい。
 綺麗にしてるだけなのに汚しちゃうの、とか、そんな、耳元で言うから。

「ン……っあ……!」

 びくんと躰毎揺らしてしまう。高い声が響いてしまって、口を抑えたいのに泡だらけの手ではそれが出来ない。

「ねえ、ずっとぬるぬるしてんだけど」
「ひっ、う、あわ、それ、泡っ……」
「そうなの?じゃあ別に気持ちよくなってないんだね?」
「んッ……」
「じゃあもうちょっと綺麗にしよ」
「んうう……!」

 強くなる指先の動きに我慢出来ない。
 風呂場に籠った甘いにおいが、すぐ背中に触れる体温が、響く声と音が、全部が追いやってくるみたい。
 悠真さんの腕に手を伸ばしても、泡のせいでぬるぬると掴みどころがない。
 爪先だってタイルの上を滑ってしまって、快感を逃がす場所がない。

「ぅ、あ、ッう、や、出っう、あ、ゆうまさっ、あ、イっ……んぅ……!」

 早朝、眩しい光、そんな中素直に気持ちいいと言えずに、達する前に悠真さんの腕に唇を押し当てた。
 風呂場ってのは音が、声が響く。
 うちの階にはもう一部屋しかないから、近所に聞こえるとかはないと思うけど、それでも隣人ひとりにでも聞かせる訳にはいかない。

「ッは……ぁ、う」

 ずる、と悠真さんに背中を預けてしまう。悠真さんの腕はしっかりと抱いたまま。
 ……風呂場じゃなければここまで我慢はしなかったんだけど。
 そう思うとつい、膝を擦り合わせてしまった。
 もう触れるだけじゃ満足出来ない、発情期はナカまでほしくなる。
 でもここじゃやだ。絶対声、我慢出来ない、し、そもそも力も抜けてしまって、立つことすら出来ない。

「ゆぅまさんっ……」
「……我慢出来ない?」
「できないぃ……」
「じゃあ寝室、戻ろうか」

 首が千切れるんじゃないかってくらい、その言葉に頷いた。
 良かった、ここでしようなんて意地悪言われなくて。
 全身の泡を流され、それから悠真さんは思い出したように、ここ、と後孔に触れた。
 あっ、とまた声が漏れて、慌ててその口を塞ぐ。

「ナカ、出さなくて大丈夫……?」
「っン……!」

 この数日ずっと何回も悠真さんを咥えたそこはずっと濡れてて、柔らかくなってて、その触れた悠真さんの指先をすぐに呑み込んでしまう。
 たら、とナカから何か出た感覚。何かって……そりや悠真さんの何か、だ。

 ぶわ、と頭が真っ赤になった気がした。
 そんなの、今まで散々やってきてわかってた筈だ。
 その為に避妊薬だってちゃんと飲んでる。
 なのにその、ナカに出される行為を思い出して、奥の方がきゅう、となる。悠真さんの指先も締め付けてしまう。

「まだ薬、飲んでる?」
「ん、ンっ……」
「じゃあこれ、無駄になったね」
「うあ」
「……和音、まだ」
「ッあう、や、またっ……イっちゃ、指っ、あ、そこ……っ」

 悠真さんが何か言っているけど、その掻き出すような指の動きに耐えられなくて、ぎゅう、と悠真さんの指を締め付けるようにして達してしまった。
 指、気持ちいい。悠真さんの。でももっと、ナカ、いっぱいにしてほしい。
 綺麗にしてもらったばかりで悪いんだけど。
 でも。

「はや、く、お腹、ほしい……っ」

 そう悠真さんを見上げて言うと、何かを呑み込んだように、でも悠真さんだってかおをあつくして、うん、と頷く。
 軽く躰を拭かれて、髪を乾かす間もなく寝室へ運ばれる。
 散々汚したシーツを濡らしてしまう罪悪感はもうない。綺麗にしたばかりのその場所を使うことにも。

「……ッあ!」

 ベッドに下ろされるが早いが、性急に悠真さんのものが捩じ込まれる。
 圧迫感。
 その圧迫感が気持ちいい。気持ちのいいとこ全部、当たる、擦れる。

「んゔ……!」

 和音、と呼ぶ声が甘ったるい。
 においも、声も、指先も、体温も全部。
 なのに足りない、もっと、もっとほしいのに、何かが足りない。
 悠真さん、悠真さん、悠真さん、優しいの嬉しい。
 もっとぎゅうってしたい。ちゅうも。もっと。

 だめだ、悠真さん、おれ、悠真さんのこと、

 悠真さん、悠真さん、だめだってわかってるのに。
 悠真さん、おれ、悠真さんがほしい。
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