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惨めだった。
おれはかわいそうなオメガ、ただのほんのちょっとだけ知ってる程度の、思い入れもなんもない奴。
そんな奴にこっちの方が使い勝手がいいでしょうと腕時計を送り、ひとりだと辛いでしょうと玩具を送る。
おれのことをそう考えてないからこその優しさのつもりだったのかもしれない。
嫌味だとか、馬鹿にしてるとか、そんなんじゃなくて。
でもおれは、これは使えない。余計なことしか考えないと思うから。
おれがひとりで玩具で慰めてる間、悠真さんの番はだいじに抱かれ、悠真さんの腕の中で悠真さんを挿入してもらうんでしょう、そう考えてしまって、使える訳がない。
直接悠真さんにそんなこと文句を言えもしないけれど。
パッケージのまま、おれはそれをゴミとして捨てた。
◇◇◇
その一週間後。
前回からはまだひと月と三週間くらい。
相変わらずの周期で発情期はやって来た。
悠真さんから発情期もうくるね、と連絡が来た頃にはもう既に躰は熱を持っていた。
出来るだけすぐ行くから。無理はせずに楽にしてて。鍵はあるから、和音はベッドから動かなくていいからね、と言ってくれた悠真さんに安堵した。
来てくれる。
良かった、番と周期被らなかったんだ、そうだよね、おれの方が早いもんね、普通なら。
……良かった、自分でどうにかしといて、なんて言われなくて。
「は、う……ゔ、ゔう」
悠真さんが来るならもうお役御免だ、と腕時計を外そうとして、……外せなかった。
指が止まった。
これは悠真さんが店まで行って買ったものではない。ネットで選んで、おれの家まで届けられただけで、一度たりとも悠真さんが触れたりなんかしていない。
ちゃんとそうわかってる。
……それでも悠真さんがおれの為にと買ったものだ。
悠真さんのにおいなんてしないけれど、邪魔になるのもわかるけれど、なんだか外したくないなと思ってしまったのだ。
ベッドの周りにはいつものように必要なものを準備してある。
前回悠真さんの置いていったTシャツも。
本当は洗いたくなかった、洗ったら完全ににおいは取れてしまう。でも色々なもので汚してしまったそれを数ヶ月も放置なんて出来ないから、泣く泣く洗濯するしかなかった。
お陰でそのシャツはうちの洗剤、柔軟剤のにおいだ。
おれの他の洗濯物と変わりのないにおい、どれだけ嗅いでみたって悠真さんのにおいの欠片すらなかった。
綺麗に洗って返す、そんなことは約束しなくたって当然の話だ。
だからきちんと畳んで、ヒート中に飛んでしまってもちゃんと返せるよう、わかりやすく部屋に置いておいて……そう思ってたんだけど。
つい手を伸ばしてしまった。
だってこの部屋にはなんもない。
悠真さんのにおいがするものは、なにひとつ。
「ゔ、う、ゆーまさんん……」
なんもない。安心するものなんて、なんにも。
なんにもない。
こんなんじゃなにもできない、なんも守れない、こどもなんて作れない。
違う、こどもなんて作らない、違う、そうじゃなくて。
作れない、赤ちゃん、ほしい、ほしくない、ちがう、そんなの、そんなのちがう、違うったら、おれはオメガじゃない。
ほしくない、ひとりでいい、やだ、なにかほしい、番の、悠真さんの何かが欲しい。
ひとりはいやだ、いやだ、いや、さみしい。
違う、悠真さんがほしいんじゃない、誰でもいい、よくない、オメガじゃん、お前、いやだなんて言ったってオメガにかわりはないじゃん。
アルファに抱かれたいなんて、お前はただのオメガだよ、
「ゆ、っ……ぅ、あ」
ぐるぐるぐるぐる、頭の中が滅茶苦茶で、自分でもよくわからなかった。
おかしくなってるのはわかる。
でも縋るものがない。
腕時計も、洗濯したシャツも、離せないくせに、おれの心を落ち着かせてくれない。
悠真さんのにおいがするものがほしい。
悠真さんは貰えないから。他のひとのものだから。
でも服すら貰えない、借りれない。
他の番にも貸したいからって。
狡い、狡い、狡い、ずるい、家にいっぱいあるでしょ、部屋着も仕事着もあるでしょ、たったいちにち分くらい、おれにくれたっていいじゃないか。
こんな薄いシャツ一枚じゃ足りない、なんにも守られない。
悠真さんのにおい、なんもしないよお……
不安で仕方がなかった。
来るって言ったけど、来なかったらどうしよう。
もう何時間経ったっけ。腕時計をしてる筈なのに、滲んで見えない。
もうイきたくない。もう手、疲れた、動かしたくない。なのに足りない、届かない、悠真さんじゃないと満たされない。
どうしよう、来なかったらどうしよ、どうしよう、でんわ、したら、出てくれるかな。
声、聞きたい。
優しくしてほしい。
頑張ったねって褒めてほしい。
頑張ってない、褒められるところなんて、なんにもない。
巣ひとつ作れなくて、洗ったシャツもまた汚して。
時計だって、いくら水洗い出来るとはいえ、外さないまま自身に触れ続けるものだから自分の出したもので汚れてしまっている。
貰ったばかりなのに。壊してしまったらどうしよう。怒られたら、呆れられたら。
違うもん、おれ悪くない。
悠真さんがちゃんと与えてくれないから。だからなんも上手く出来ないんだもん、おれ悪くない、悪くないから、だから怒んないで。頑張ってないけど、撫でてほしい。
おれはかわいそうなオメガ、ただのほんのちょっとだけ知ってる程度の、思い入れもなんもない奴。
そんな奴にこっちの方が使い勝手がいいでしょうと腕時計を送り、ひとりだと辛いでしょうと玩具を送る。
おれのことをそう考えてないからこその優しさのつもりだったのかもしれない。
嫌味だとか、馬鹿にしてるとか、そんなんじゃなくて。
でもおれは、これは使えない。余計なことしか考えないと思うから。
おれがひとりで玩具で慰めてる間、悠真さんの番はだいじに抱かれ、悠真さんの腕の中で悠真さんを挿入してもらうんでしょう、そう考えてしまって、使える訳がない。
直接悠真さんにそんなこと文句を言えもしないけれど。
パッケージのまま、おれはそれをゴミとして捨てた。
◇◇◇
その一週間後。
前回からはまだひと月と三週間くらい。
相変わらずの周期で発情期はやって来た。
悠真さんから発情期もうくるね、と連絡が来た頃にはもう既に躰は熱を持っていた。
出来るだけすぐ行くから。無理はせずに楽にしてて。鍵はあるから、和音はベッドから動かなくていいからね、と言ってくれた悠真さんに安堵した。
来てくれる。
良かった、番と周期被らなかったんだ、そうだよね、おれの方が早いもんね、普通なら。
……良かった、自分でどうにかしといて、なんて言われなくて。
「は、う……ゔ、ゔう」
悠真さんが来るならもうお役御免だ、と腕時計を外そうとして、……外せなかった。
指が止まった。
これは悠真さんが店まで行って買ったものではない。ネットで選んで、おれの家まで届けられただけで、一度たりとも悠真さんが触れたりなんかしていない。
ちゃんとそうわかってる。
……それでも悠真さんがおれの為にと買ったものだ。
悠真さんのにおいなんてしないけれど、邪魔になるのもわかるけれど、なんだか外したくないなと思ってしまったのだ。
ベッドの周りにはいつものように必要なものを準備してある。
前回悠真さんの置いていったTシャツも。
本当は洗いたくなかった、洗ったら完全ににおいは取れてしまう。でも色々なもので汚してしまったそれを数ヶ月も放置なんて出来ないから、泣く泣く洗濯するしかなかった。
お陰でそのシャツはうちの洗剤、柔軟剤のにおいだ。
おれの他の洗濯物と変わりのないにおい、どれだけ嗅いでみたって悠真さんのにおいの欠片すらなかった。
綺麗に洗って返す、そんなことは約束しなくたって当然の話だ。
だからきちんと畳んで、ヒート中に飛んでしまってもちゃんと返せるよう、わかりやすく部屋に置いておいて……そう思ってたんだけど。
つい手を伸ばしてしまった。
だってこの部屋にはなんもない。
悠真さんのにおいがするものは、なにひとつ。
「ゔ、う、ゆーまさんん……」
なんもない。安心するものなんて、なんにも。
なんにもない。
こんなんじゃなにもできない、なんも守れない、こどもなんて作れない。
違う、こどもなんて作らない、違う、そうじゃなくて。
作れない、赤ちゃん、ほしい、ほしくない、ちがう、そんなの、そんなのちがう、違うったら、おれはオメガじゃない。
ほしくない、ひとりでいい、やだ、なにかほしい、番の、悠真さんの何かが欲しい。
ひとりはいやだ、いやだ、いや、さみしい。
違う、悠真さんがほしいんじゃない、誰でもいい、よくない、オメガじゃん、お前、いやだなんて言ったってオメガにかわりはないじゃん。
アルファに抱かれたいなんて、お前はただのオメガだよ、
「ゆ、っ……ぅ、あ」
ぐるぐるぐるぐる、頭の中が滅茶苦茶で、自分でもよくわからなかった。
おかしくなってるのはわかる。
でも縋るものがない。
腕時計も、洗濯したシャツも、離せないくせに、おれの心を落ち着かせてくれない。
悠真さんのにおいがするものがほしい。
悠真さんは貰えないから。他のひとのものだから。
でも服すら貰えない、借りれない。
他の番にも貸したいからって。
狡い、狡い、狡い、ずるい、家にいっぱいあるでしょ、部屋着も仕事着もあるでしょ、たったいちにち分くらい、おれにくれたっていいじゃないか。
こんな薄いシャツ一枚じゃ足りない、なんにも守られない。
悠真さんのにおい、なんもしないよお……
不安で仕方がなかった。
来るって言ったけど、来なかったらどうしよう。
もう何時間経ったっけ。腕時計をしてる筈なのに、滲んで見えない。
もうイきたくない。もう手、疲れた、動かしたくない。なのに足りない、届かない、悠真さんじゃないと満たされない。
どうしよう、来なかったらどうしよ、どうしよう、でんわ、したら、出てくれるかな。
声、聞きたい。
優しくしてほしい。
頑張ったねって褒めてほしい。
頑張ってない、褒められるところなんて、なんにもない。
巣ひとつ作れなくて、洗ったシャツもまた汚して。
時計だって、いくら水洗い出来るとはいえ、外さないまま自身に触れ続けるものだから自分の出したもので汚れてしまっている。
貰ったばかりなのに。壊してしまったらどうしよう。怒られたら、呆れられたら。
違うもん、おれ悪くない。
悠真さんがちゃんと与えてくれないから。だからなんも上手く出来ないんだもん、おれ悪くない、悪くないから、だから怒んないで。頑張ってないけど、撫でてほしい。
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