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なっ、な、なんちゅうものをひとに送りつけとんのじゃあいつは!
思わず段ボール内に叩き込み……それからもう一度手に取りまじまじと見てしまった。
パッケージからは出さない。出さないけど!
こ、これ、結構大きくない?入る?こんなもの?えっ、悠真さんとどっちが大きい?一ヶ月半前だからよく覚えてない……というかそこまでちゃんと見たことない、かも……そんな余裕、ないし。
いや馬鹿!なにを真面目に観察してるんだ、こんなのセクハラもいいとこだ。
今度はむかむかしてきて、意図を訊く為に悠真さんに電話をしてしまった。
普通に考えたらまだ仕事中だ、それを考慮せずに掛けてしまった。仕方ない、怒りが勝ったから。
『和音?どうした~?』
「どうしたじゃないよ、なんなのあれ!」
『あっ届いた?』
「届きましたけども!」
『中見た~?』
「見たよ馬鹿!」
あはは、と電話口で悠真さんが笑う。
笑いごとじゃないんだが?
『和音、最近首輪すること減ったでしょ』
「へっ、くび、首輪?」
予想外の単語に抜けた声が出てしまった。
何で首輪?確かに最近は減った、けど。
番になったばかりの頃は、何だか首輪をしないで外に行くことに慣れなくて、不安感から毎回外出の度に首輪をしてしまっていた。
それと、急に首輪をしなくなるのって、その、番が出来ましたよーってアピールしているみたいで何だか気恥ずかしくて。
それがその内、まあ知り合いに会う訳ではなし、買い物に行くだけだし、花音に会うだけだし、暑くて蒸れるし、と段々しなくなっていって、最終的にはそろそろ発情期だし、アプリの為につけておくかな、ってくらいの頻度になって……
あ、もしかして、時計って、首輪の代わりだろうか。
『そうそう。それね、防水だし、お風呂もそのままで入れるし、水洗いも出来るよ、首輪から腕時計にシフトした方が勝手が良いかなって』
「アプリ連携しろってこと」
『うん、どう、デザインとか着け心地とか』
「……格好良い」
『良かった。発情期ももうそろそろでしょ、使って、それ。設定出来る?』
「出来る……お金、今度来た時でいい?」
『いらないいらない。プレゼントだよ』
「でも誕生日とかでもないし」
プレゼントしてもらう理由なんてない、そう思ったけれど、俺が心配だから使って、なんて言われると……いや、絆されてないんだからね!
「いや時計の話じゃなくて!」
『えー、なーに』
「あっあれ、あれ!あれなに!」
『あれって何ー?』
「う」
明らかに揶揄いを含んだ声音に詰まってしまう。
わかってて言ってる、面白がっている。
「も、もういっこ、の……」
『もういっこ?俺何送ったっけ?』
「すっとぼけんなよお!」
『んー、ふふ、いやあ、俺今外にいるからさ、パソコン確認出来なくて。あれかそれか……どれを送ったんだっけ、和音に送りたいもの多くて忘れちゃったなあ』
「うゔゔ」
わざとらしい。
文句を言うだけのつもりだったのに。文句すら言わせないのか。
「お、おもちゃ……」
『そんなの送ったっけ?ゲーム?プラモ?』
「ばっ……」
『なんだっけ』
「おとなの……」
『何それ』
「え、えっちな、おもちゃ……」
最大限濁したおれに、わはは、と楽しそうな笑い声が再度響いた。
わざと言わせやがって!目の前にいたらぶん殴ってやんのに!
『和音が言ったんだよ』
「なにを!」
『指じゃ足りない~って』
「ゆっ、ゆってない!」
『えー、泣きながら何回もお強請りしてきてかわいかったのに。指じゃやだ、もっとおっきいのちょうだい、って』
「言ってないいい!」
『ひとりの時に使えるように買ったのになあ』
「使わねーよ!捨てる!」
あ、呼ばれたから行くね。じゃあね、時計も使って。
笑い声を噛み殺すように、悠真さんは怒鳴るおれに構わず電話を切った。
いっ、言ってない、そんなこと、指じゃ足りないって思ったことはあるけど、もっとおっきいの、なんて、口にしたりなんかは……もしかして飛んでて覚えてないとかかな。
いや、でも熱にやられてそんなこと言ったとしても送ってくる!?普通!
時計『も』って、玩具も使えってこと!?あれを!?おれが!?
ちら、と段ボールをまた見て、パッケージごと手にする。
す、スウィング、振動、えっ温かくもなるの……水洗いOK……へえ、衛生的。
いや何確認してんだおれ。
慌ててまた段ボールに戻し、蓋を押さえた。
確かにその、自分の指じゃ足んなくて……もどかしくて、その……こういうのを使って発情期を乗り越えるひとがいるのも知ってる。わかるよ、一応。
だって本当にしんどいの。何回イっても苦しくて、最終的には触り過ぎて痛くなっちゃったりもして。
本来なら番が治めてくれる熱は、ひとりだと辛くて。だから玩具に頼ることは悪くなんてない。
気持ちいいからこそ、こんな商品が売れてる訳で……
多分、使ったら少しくらいましになるんだと思う。
悠真さんの仕事中や、来る前、帰った後、ひとり残された時に自分ですきなだけ慰めることが出来る。わかるけど。
でも悠真さんは家に帰って番を抱くのだろう。
悠真さんを貰える番がいるのに、おれはその間、こんな玩具で耐えないといけないの?
ひとりで?
ひとりでこれを、突っ込んで満足しろって?
それを、悠真さんが言っちゃうの?
思わず段ボール内に叩き込み……それからもう一度手に取りまじまじと見てしまった。
パッケージからは出さない。出さないけど!
こ、これ、結構大きくない?入る?こんなもの?えっ、悠真さんとどっちが大きい?一ヶ月半前だからよく覚えてない……というかそこまでちゃんと見たことない、かも……そんな余裕、ないし。
いや馬鹿!なにを真面目に観察してるんだ、こんなのセクハラもいいとこだ。
今度はむかむかしてきて、意図を訊く為に悠真さんに電話をしてしまった。
普通に考えたらまだ仕事中だ、それを考慮せずに掛けてしまった。仕方ない、怒りが勝ったから。
『和音?どうした~?』
「どうしたじゃないよ、なんなのあれ!」
『あっ届いた?』
「届きましたけども!」
『中見た~?』
「見たよ馬鹿!」
あはは、と電話口で悠真さんが笑う。
笑いごとじゃないんだが?
『和音、最近首輪すること減ったでしょ』
「へっ、くび、首輪?」
予想外の単語に抜けた声が出てしまった。
何で首輪?確かに最近は減った、けど。
番になったばかりの頃は、何だか首輪をしないで外に行くことに慣れなくて、不安感から毎回外出の度に首輪をしてしまっていた。
それと、急に首輪をしなくなるのって、その、番が出来ましたよーってアピールしているみたいで何だか気恥ずかしくて。
それがその内、まあ知り合いに会う訳ではなし、買い物に行くだけだし、花音に会うだけだし、暑くて蒸れるし、と段々しなくなっていって、最終的にはそろそろ発情期だし、アプリの為につけておくかな、ってくらいの頻度になって……
あ、もしかして、時計って、首輪の代わりだろうか。
『そうそう。それね、防水だし、お風呂もそのままで入れるし、水洗いも出来るよ、首輪から腕時計にシフトした方が勝手が良いかなって』
「アプリ連携しろってこと」
『うん、どう、デザインとか着け心地とか』
「……格好良い」
『良かった。発情期ももうそろそろでしょ、使って、それ。設定出来る?』
「出来る……お金、今度来た時でいい?」
『いらないいらない。プレゼントだよ』
「でも誕生日とかでもないし」
プレゼントしてもらう理由なんてない、そう思ったけれど、俺が心配だから使って、なんて言われると……いや、絆されてないんだからね!
「いや時計の話じゃなくて!」
『えー、なーに』
「あっあれ、あれ!あれなに!」
『あれって何ー?』
「う」
明らかに揶揄いを含んだ声音に詰まってしまう。
わかってて言ってる、面白がっている。
「も、もういっこ、の……」
『もういっこ?俺何送ったっけ?』
「すっとぼけんなよお!」
『んー、ふふ、いやあ、俺今外にいるからさ、パソコン確認出来なくて。あれかそれか……どれを送ったんだっけ、和音に送りたいもの多くて忘れちゃったなあ』
「うゔゔ」
わざとらしい。
文句を言うだけのつもりだったのに。文句すら言わせないのか。
「お、おもちゃ……」
『そんなの送ったっけ?ゲーム?プラモ?』
「ばっ……」
『なんだっけ』
「おとなの……」
『何それ』
「え、えっちな、おもちゃ……」
最大限濁したおれに、わはは、と楽しそうな笑い声が再度響いた。
わざと言わせやがって!目の前にいたらぶん殴ってやんのに!
『和音が言ったんだよ』
「なにを!」
『指じゃ足りない~って』
「ゆっ、ゆってない!」
『えー、泣きながら何回もお強請りしてきてかわいかったのに。指じゃやだ、もっとおっきいのちょうだい、って』
「言ってないいい!」
『ひとりの時に使えるように買ったのになあ』
「使わねーよ!捨てる!」
あ、呼ばれたから行くね。じゃあね、時計も使って。
笑い声を噛み殺すように、悠真さんは怒鳴るおれに構わず電話を切った。
いっ、言ってない、そんなこと、指じゃ足りないって思ったことはあるけど、もっとおっきいの、なんて、口にしたりなんかは……もしかして飛んでて覚えてないとかかな。
いや、でも熱にやられてそんなこと言ったとしても送ってくる!?普通!
時計『も』って、玩具も使えってこと!?あれを!?おれが!?
ちら、と段ボールをまた見て、パッケージごと手にする。
す、スウィング、振動、えっ温かくもなるの……水洗いOK……へえ、衛生的。
いや何確認してんだおれ。
慌ててまた段ボールに戻し、蓋を押さえた。
確かにその、自分の指じゃ足んなくて……もどかしくて、その……こういうのを使って発情期を乗り越えるひとがいるのも知ってる。わかるよ、一応。
だって本当にしんどいの。何回イっても苦しくて、最終的には触り過ぎて痛くなっちゃったりもして。
本来なら番が治めてくれる熱は、ひとりだと辛くて。だから玩具に頼ることは悪くなんてない。
気持ちいいからこそ、こんな商品が売れてる訳で……
多分、使ったら少しくらいましになるんだと思う。
悠真さんの仕事中や、来る前、帰った後、ひとり残された時に自分ですきなだけ慰めることが出来る。わかるけど。
でも悠真さんは家に帰って番を抱くのだろう。
悠真さんを貰える番がいるのに、おれはその間、こんな玩具で耐えないといけないの?
ひとりで?
ひとりでこれを、突っ込んで満足しろって?
それを、悠真さんが言っちゃうの?
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