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ぐう、と悠真さんが少し唸ったような、そんな気がした。
正直、もう自分に与えられる快感を追うことに必死で、悠真さんの言動を細かくチェックなんて出来やしない。
気持ちいいこと、噛んでもらうこと。それだけで頭がいっぱいだった。
「っは、あ、ッん、う、あ、あっ、ァう、んうう」
「かずねっ……」
「ん、ん、っう、噛んでえ、はやっ、はやく、ぅ」
噛んで。噛んで、噛んで。噛んで。早く。番にして。助けて。もうこんなの、終わりにして。噛んで。楽にして。もうやだ、オメガなんてやだ、いや、こんな気持ちよくなっちゃうのやだ、苦しい、噛んで。もっとして、動いて。
気持ちい、気持ちいい。噛んで。なんでおれだけ。花音と一緒が良かった。情けない。悠真さん、悠真さん、悠真さん、足りない、もっと、もっと気持ちよくして。
「……ッう、う!」
奥まで挿入され、下腹部を撫でられ、首筋、項を舐められる。
お腹の奥がきゅうきゅうして、満足そうに、でももっと、なんて欲望が尽きなくて、首元はあつい。
噛まれる。噛まれる為の準備をしている。
あ、あ、歯ァ、当たってる。甘噛み。それから……あ、噛まれる。噛まれ、
「んい……ッ」
食われる、と思った。
でもそこにこわいなんて感情は一切なくて、痛みだって覚悟していたのに感じなくて、噛まれる感触と一緒に訪れたのはあつい、という単純な感覚と、気持ちいいという満足感、そして胸の奥から湧く……なんだろうこれは、多幸感なのだろうか、じんわりとしたような、満たされるような、そんな気持ち。
ただの契約だと割り切っているというのに、それでも番になるって、そういうことなんだろうか。
ただでさえ安心すると思っていた体温が、においが、もっとずっと確実に、おれのものだと思うくらい、もう手放せないと思うくらい、段違いに安心する。
気持ちいい、しあわせ、もっとほしい、もっと、もっと、もっと。
「ぅあ、ゆ、ゆぅまさ、ぁ、ゆーま、さんっ」
「ごめん、痛い?」
「い、たくないっ、あ、いっ、いたくない、からあっ」
「気持ちいい?」
「んッ、ん、気持ちい、い、からっ、その、」
キスしてほしい。
ぎゅうってして、それから、いっぱい。
そう思ってしまって、少しだけ理性が戻った。
何を甘えてるんだろう。
そんな、優しくされて当然、甘やかされて当然なんて考え。
番になっただけで、恋人だってなんでもないのに。空気に流されるんじゃあない。
「そ、あ、あっ、あの、う、動い、てっ」
「……?」
「奥、き、もちいい……から、」
「……和音、えっちでかわいいね」
「んう……」
噛み跡を舐め、唇を押し当て、また舐め、まるでそこが愛おしいかのように、柔らかい声で名前を呼んで、溶けるように優しく話し、甘噛みして、再度唇を落とす。
本当は口にほしかった。でも言えない。なんでだろう、動いて、なんてことは言えるくせに、キスだって別に特別だなんて思ってないくせに。
そりゃあ初めてだったけど、それでも、おれのキスに特別なものなんてなにもないのに。
それでもだめだと思ってしまった。
だっておれには特別じゃなくても、本物には特別かもしれないし。
「ッあ、あ!」
ぐぐ、とまだ奥に来るものだから驚いてしまった。まだ入るの、と。おれが奥、なんて言うから。
もしかして手加減していたのだろうか、そうか、オメガといえど一応初めてなんて言うから。
「大丈夫?ほんとにどこも痛くない?……痛かったら言って、気をつけるから」
「ん、う、気、つける、ってえ……」
「気をつけるよ、他に傷や痕をつけたら大変だし……和音、白いから痕残りやすいし、ちゃんと食べてる?ほっそいんだもん」
「ッあ、ん!」
背中を指先がなぞる。そんなことにぞくぞくしてしまい、弓なりに背を反らし、高い声を出してしまった。
慌てて口を押さえようとすると、空いていた方の手も掴まれて動かせない。
耳元で、声は出してて、と甘い声がして、ん、と声を漏らしてしまう。
「声を我慢しようとしたり、まだ余裕あるね?でもまだ躰、あついでしょ」
「ん、う、うう」
「ほら、枕噛まないで、ちゃんと全部気持ちよくなんなきゃ。ヒート治まんないよ」
「っあ、あ、う、アっ、は、あ……っ、あぅ」
急に激しくなった抽挿に、揺さぶられるまま声が押し出される。
目の前の枕は唾液と涙でぐしゃぐしゃで、きっとおれのかおは更に酷くなっているんだろう。
良かった、悠真さんは背後で。こんな汚れたかおで萎えさせずにすんだ。
綺麗だとかかわいいだとか言ったって、ほぼ初対面の相手のかおがそんなんじゃやっぱり嫌だろう。
すきな子なら、だいじな子なら、そんなかおでも愛おしいのかもしれないけれど。
「あっ、や、だめ、い、ッ……出ちゃ、あっ、い、イっちゃ……」
「いいよ、いっぱいイって」
「んぐ、う、あ、ッ……あ、あっ、ん、うう、あぁ……っ」
達しても悠真さんは止まらない。
苦しい筈なのに、それすら気持ちよくて、あ、今、今イったばっかりなのに、嘘、また……
何度も何度も、汚した枕やお腹なんて比じゃないくらい、シーツを汚すことになってしまった。
おれの躰が治まるまで、いや、いつ治まったのかもわからない、多分先に気を失った。
それくらい、何度も。
正直、もう自分に与えられる快感を追うことに必死で、悠真さんの言動を細かくチェックなんて出来やしない。
気持ちいいこと、噛んでもらうこと。それだけで頭がいっぱいだった。
「っは、あ、ッん、う、あ、あっ、ァう、んうう」
「かずねっ……」
「ん、ん、っう、噛んでえ、はやっ、はやく、ぅ」
噛んで。噛んで、噛んで。噛んで。早く。番にして。助けて。もうこんなの、終わりにして。噛んで。楽にして。もうやだ、オメガなんてやだ、いや、こんな気持ちよくなっちゃうのやだ、苦しい、噛んで。もっとして、動いて。
気持ちい、気持ちいい。噛んで。なんでおれだけ。花音と一緒が良かった。情けない。悠真さん、悠真さん、悠真さん、足りない、もっと、もっと気持ちよくして。
「……ッう、う!」
奥まで挿入され、下腹部を撫でられ、首筋、項を舐められる。
お腹の奥がきゅうきゅうして、満足そうに、でももっと、なんて欲望が尽きなくて、首元はあつい。
噛まれる。噛まれる為の準備をしている。
あ、あ、歯ァ、当たってる。甘噛み。それから……あ、噛まれる。噛まれ、
「んい……ッ」
食われる、と思った。
でもそこにこわいなんて感情は一切なくて、痛みだって覚悟していたのに感じなくて、噛まれる感触と一緒に訪れたのはあつい、という単純な感覚と、気持ちいいという満足感、そして胸の奥から湧く……なんだろうこれは、多幸感なのだろうか、じんわりとしたような、満たされるような、そんな気持ち。
ただの契約だと割り切っているというのに、それでも番になるって、そういうことなんだろうか。
ただでさえ安心すると思っていた体温が、においが、もっとずっと確実に、おれのものだと思うくらい、もう手放せないと思うくらい、段違いに安心する。
気持ちいい、しあわせ、もっとほしい、もっと、もっと、もっと。
「ぅあ、ゆ、ゆぅまさ、ぁ、ゆーま、さんっ」
「ごめん、痛い?」
「い、たくないっ、あ、いっ、いたくない、からあっ」
「気持ちいい?」
「んッ、ん、気持ちい、い、からっ、その、」
キスしてほしい。
ぎゅうってして、それから、いっぱい。
そう思ってしまって、少しだけ理性が戻った。
何を甘えてるんだろう。
そんな、優しくされて当然、甘やかされて当然なんて考え。
番になっただけで、恋人だってなんでもないのに。空気に流されるんじゃあない。
「そ、あ、あっ、あの、う、動い、てっ」
「……?」
「奥、き、もちいい……から、」
「……和音、えっちでかわいいね」
「んう……」
噛み跡を舐め、唇を押し当て、また舐め、まるでそこが愛おしいかのように、柔らかい声で名前を呼んで、溶けるように優しく話し、甘噛みして、再度唇を落とす。
本当は口にほしかった。でも言えない。なんでだろう、動いて、なんてことは言えるくせに、キスだって別に特別だなんて思ってないくせに。
そりゃあ初めてだったけど、それでも、おれのキスに特別なものなんてなにもないのに。
それでもだめだと思ってしまった。
だっておれには特別じゃなくても、本物には特別かもしれないし。
「ッあ、あ!」
ぐぐ、とまだ奥に来るものだから驚いてしまった。まだ入るの、と。おれが奥、なんて言うから。
もしかして手加減していたのだろうか、そうか、オメガといえど一応初めてなんて言うから。
「大丈夫?ほんとにどこも痛くない?……痛かったら言って、気をつけるから」
「ん、う、気、つける、ってえ……」
「気をつけるよ、他に傷や痕をつけたら大変だし……和音、白いから痕残りやすいし、ちゃんと食べてる?ほっそいんだもん」
「ッあ、ん!」
背中を指先がなぞる。そんなことにぞくぞくしてしまい、弓なりに背を反らし、高い声を出してしまった。
慌てて口を押さえようとすると、空いていた方の手も掴まれて動かせない。
耳元で、声は出してて、と甘い声がして、ん、と声を漏らしてしまう。
「声を我慢しようとしたり、まだ余裕あるね?でもまだ躰、あついでしょ」
「ん、う、うう」
「ほら、枕噛まないで、ちゃんと全部気持ちよくなんなきゃ。ヒート治まんないよ」
「っあ、あ、う、アっ、は、あ……っ、あぅ」
急に激しくなった抽挿に、揺さぶられるまま声が押し出される。
目の前の枕は唾液と涙でぐしゃぐしゃで、きっとおれのかおは更に酷くなっているんだろう。
良かった、悠真さんは背後で。こんな汚れたかおで萎えさせずにすんだ。
綺麗だとかかわいいだとか言ったって、ほぼ初対面の相手のかおがそんなんじゃやっぱり嫌だろう。
すきな子なら、だいじな子なら、そんなかおでも愛おしいのかもしれないけれど。
「あっ、や、だめ、い、ッ……出ちゃ、あっ、い、イっちゃ……」
「いいよ、いっぱいイって」
「んぐ、う、あ、ッ……あ、あっ、ん、うう、あぁ……っ」
達しても悠真さんは止まらない。
苦しい筈なのに、それすら気持ちよくて、あ、今、今イったばっかりなのに、嘘、また……
何度も何度も、汚した枕やお腹なんて比じゃないくらい、シーツを汚すことになってしまった。
おれの躰が治まるまで、いや、いつ治まったのかもわからない、多分先に気を失った。
それくらい、何度も。
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