上 下
35 / 55
2

35*

しおりを挟む
「なんでそんな不満そうなの、気持ち良かったんだろ?」
「……だって、僕ばっかり」
「嫌なの?」
「……な、何回もするし」
「今日はまだ一回目でしょ」
「……はやい、し」
「いいじゃん早漏でも。女子は嫌かもしんないけど、俺はすき。いっぱいイけてお得じゃん」
「お得じゃない……そうじゃなくて、皇輝、だって」
「また俺の触りたいって?」
「そっ……そうゆーわけ、じゃなくてっ」
「いんだよ、俺は碧が気持ち良さそうにしてるのを見てる方が楽しいし嬉しい」

 だからかわいい顔たくさん見せて、そう言って、皇輝は達したばかりの僕のものをまた握った。

「ぅあ……!」

 まだ触らないでほしい。そう視線で言っても伝わらない。
 にっと笑って、何回イってもいいから、と意地悪く言う。背中がぞくっとした。
 逃げたくなるような、そんな笑顔。

「だ、だめ、何回も、だめ、ちょっとでいっ、いいっ」
「俺は碧が何回もイくとこ見たいのに見せてくんないの?」
「みっ見せないっ、やだ、なんでそこばっかっ」
「さっきもここでイったもんな?」
「だからっ、あ、ッだめ、そこ、よわいっ、や……っ、あ」
「だからだよ」

 執拗に先端ばかりを弄ってくる。一番敏感なとこ。まだ躰が震えてるのに、そこばかり触られたらすぐに達してしまいそう。辛い、何回も連続は辛い、だからもうちょっと間を置いて欲しい。
 でも舌は回らないし、皇輝の手を押し退ける力も出ない。
 辛いのに止められない。

「我慢したいならしてもいいけど」
「むりっ、あ、むりぃっ……」
「だよなあ」
「むり、だからっ、やあ、はなし、てっんん!」
「もう泣いちゃうの、かわい」
「かゎ、いぐなっ……んぐ」

 皇輝の指が口に入ってきた。その指を避けようと舌を動かしても、捕まえようとするように咥内を自由にされる。
 やだ、これやだ、ほしいのはこっちじゃない。でもその指のせいで話すことが出来ない。

「んヴ、んんふっ……ん、ん!」
「口周りべっとべと」
「んんんう……ぅえ……ッ」

 嘔吐く僕に、やっと指を引き抜いて、ごめん、大丈夫、と聞いてくれた。
 震える声で、指、やだ、と言うのが精一杯だった。
 指は、なんか怖い。喉の奥までいっちゃいそうで。

「口、より頭がいいっ……」
「……撫でろってこと?」
「んっ、ん、ぁ、そ、あたまっ……」

 手は頭を撫でてほしいし、口を塞ぐのは皇輝の口がいい。
 皇輝の手を取って頭に持っていく。長い指が髪を梳く。

「こっちは?」
「んっ、ん、すき……」
「今日も素直だねえ」

 頬を撫でる指先が優しい。そっと撫でて、唇には触れるだけ。ぽつりと柔らかい、とか言うものだから、僕も皇輝の唇を思い出してしまう。
 やっぱり口にもほしい。
 薄く唇を開くと、皇輝ははっとした顔をして、それからすぐに笑う。
 その笑い方が、僕の願望なのかな、大事なものを見るような瞳で、心臓が掴まれたようにぎゅうっとなる。
 ずるい、ずるいずるいずるい、なんで笑うだけでこんなにさせちゃうの。そんなにいっぱいもらっちゃっていいの。僕なんてあげられるものないのに。ほしいものばっかりで。

「キスしながらがいい?」
「ぅん……」

 腕を伸ばして、皇輝の首に巻き付ける。
 距離がずっと近くなって、そしてすぐに唇が重なった。
 食べられちゃうんじゃないかってキスだった。食べられてたのかもしれない。
 噛んで、吸って、舌先でなぞって、また噛んで。零れそうになる唾液を飲み込んで、自分から舌を出す。
 もっとほしい、もっと。

「んう、ぅ、う!?」

 溶けるようなキスが気持ちよくて、そっちに集中していたかった。でもそれは赦さないとばかりに、また皇輝の手が動き出す。
 さっきの続きだから?先ばかりぐるぐると弄られて、なんだか変な気分になってくる。なんかその、出てしまいそうな。
 ……このままだと大惨事になる、どうしよう、離れて貰わなきゃ。
 そうわかってるのに、僕の腰はキスで砕けてしまったように動かない。腕だってしっかり皇輝に巻かれたまま。

「ふ、ぅあ、んん……こぉ、んッ」

 唇が離れた一瞬で言おうと思っても、すぐにまた唇が落ちてくるから、何も話すことが出来ない。
 気持ち良くて、ふわふわして、もっとしてほしくて、でもどうしよう、トイレに行きたい。
 こういう時って言っていいもの?雰囲気壊れる?でも黙ってたらその内我慢出来なくなった時どうするの?

 ぐるぐるする、ただでさえ訳がわからなくて、皇輝にされることについてくだけで必死なのに、新しい要素が入ってしまったら、どんな顔をしたらいいかわからない。
 指先に力が籠って、あ、むり、本当に出ちゃう、そう思った時、やっと、顔を横に避けることで唇が塞がれることを免れる。
 また正面に戻されそうになって慌てて、だめ、トイレ行きたい!と伝えられた。やはり情緒も何もない。でもそんなことより、己のプライドと、恥ずかしいところを見せて嫌われたくない気持ちの方が当然ながら強かった。

 皇輝は一瞬きょとんとして、それからふ、と笑って、タオル敷いてるから大丈夫だよ、と言う。
 ……何も大丈夫ではない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『番外編』イケメン彼氏は警察官!初めてのお酒に私の記憶はどこに!?

すずなり。
恋愛
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の身は持たない!?の番外編です。 ある日、美都の元に届いた『同窓会』のご案内。もう目が治ってる美都は参加することに決めた。 要「これ・・・酒が出ると思うけど飲むなよ?」 そう要に言われてたけど、渡されたグラスに口をつける美都。それが『酒』だと気づいたころにはもうだいぶ廻っていて・・・。 要「今日はやたら素直だな・・・。」 美都「早くっ・・入れて欲しいっ・・!あぁっ・・!」 いつもとは違う、乱れた夜に・・・・・。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんら関係ありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

屋烏の愛

あこ
BL
「お前が十になった祝いだよ、何が欲しい?」 父親にそう言われた当時十歳の少年兵馬は、それから七年後人目を引く色男に成長していた。 どれだけの器量好しに秋波を送られたって一切気にかけない兵馬と、訳ありの船宿吉村のお嬢様が出会った時、兵馬は烏にさえ恋をする。 ✔︎ 攻めは色男で男色な呉服屋三男坊 ✔︎ 受けは船宿自慢の可愛いお嬢様(訳あり) ✔︎ 受けは常時女装 ✔︎ 江戸時代でお江戸風味 ✔︎ 本編は完結済み ➡︎ 番外編は時系列順に並んでいません。 ➡︎ 章『さまよう、からす』は本編以前の話になっており、本編中のネタバレ(というほどではありませんが)もありますので、本編読了後をお勧めしています。 ➡︎ 章『船宿吉村』は船宿吉村が舞台の「ゆづかや兵馬の登場しない」お話が入っています。BLもそうではないものも一緒になっていますが、BLではないものにはタイトルの前に『❢』がついています。 ➡︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。 ➡︎ 作品や章タイトルの頭に『!』があるものは、R指定(暴力・性表現など)描写が入ります。とても微々たるものですが、個人サイトと同じ基準で設定しております。多少でもその様な描写が苦手な方はご注意ください。 🔺ATTENTION🔺 時代背景を『江戸時代』で舞台を『江戸』としておりますが、時代考証は僅かばかりしかしておりません。 多大な捏造と都合のいい独自設定が有りますので、ご不快に思われる方はご遠慮下さい。

森光くんのおっぱい

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
「下手な女子より大きくない?」 そう囁かれていたのは、柔道部・森光の胸だった。 僕はそれが気になりながらも、一度も同じクラスになることなく中学校を卒業し、高校も違う学校に進学。結局、義務教育では彼の胸を手に入れることはできなかった。 しかし大学生になってから彼と意外な接点ができ、意欲が再燃。攻略を神に誓う。

僕の兄は◯◯です。

山猫
BL
容姿端麗、才色兼備で周囲に愛される兄と、両親に出来損ない扱いされ、疫病除けだと存在を消された弟。 兄の監視役兼影のお守りとして両親に無理やり決定づけられた有名男子校でも、異性同性関係なく堕としていく兄を遠目から見守って(鼻ほじりながら)いた弟に、急な転機が。 「僕の弟を知らないか?」 「はい?」 これは王道BL街道を爆走中の兄を躱しつつ、時には巻き込まれ、時にはシリアス(?)になる弟の観察ストーリーである。 文章力ゼロの思いつきで更新しまくっているので、誤字脱字多し。広い心で閲覧推奨。 ちゃんとした小説を望まれる方は辞めた方が良いかも。 ちょっとした笑い、息抜きにBLを好む方向けです! ーーーーーーーー✂︎ この作品は以前、エブリスタで連載していたものです。エブリスタの投稿システムに慣れることが出来ず、此方に移行しました。 今後、こちらで更新再開致しますのでエブリスタで見たことあるよ!って方は、今後ともよろしくお願い致します。

当たって砕けていたら彼氏ができました

ちとせあき
BL
毎月24日は覚悟の日だ。 学校で少し浮いてる三倉莉緒は王子様のような同級生、寺田紘に恋をしている。 教室で意図せず公開告白をしてしまって以来、欠かさずしている月に1度の告白だが、19回目の告白でやっと心が砕けた。 諦めようとする莉緒に突っかかってくるのはあれ程告白を拒否してきた紘で…。 寺田絋 自分と同じくらいモテる莉緒がムカついたのでちょっかいをかけたら好かれた残念男子 × 三倉莉緒 クールイケメン男子と思われているただの陰キャ そういうシーンはありませんが一応R15にしておきました。 お気に入り登録ありがとうございます。なんだか嬉しいので載せるか迷った紘視点を追加で投稿します。ただ紘は残念な子過ぎるので莉緒視点と印象が変わると思います。ご注意ください。 お気に入り登録100ありがとうございます。お付き合いに浮かれている二人の小話投稿しました。

可愛い男の子が実はタチだった件について。

桜子あんこ
BL
イケメンで女にモテる男、裕也(ゆうや)と可愛くて男にモテる、凛(りん)が付き合い始め、裕也は自分が抱く側かと思っていた。 可愛いS攻め×快楽に弱い男前受け

君が好き過ぎてレイプした

眠りん
BL
 ぼくは大柄で力は強いけれど、かなりの小心者です。好きな人に告白なんて絶対出来ません。  放課後の教室で……ぼくの好きな湊也君が一人、席に座って眠っていました。  これはチャンスです。  目隠しをして、体を押え付ければ小柄な湊也君は抵抗出来ません。  どうせ恋人同士になんてなれません。  この先の長い人生、君の隣にいられないのなら、たった一度少しの時間でいい。君とセックスがしたいのです。  それで君への恋心は忘れます。  でも、翌日湊也君がぼくを呼び出しました。犯人がぼくだとバレてしまったのでしょうか?  不安に思いましたが、そんな事はありませんでした。 「犯人が誰か分からないんだ。ねぇ、柚月。しばらく俺と一緒にいて。俺の事守ってよ」  ぼくはガタイが良いだけで弱い人間です。小心者だし、人を守るなんて出来ません。  その時、湊也君が衝撃発言をしました。 「柚月の事……本当はずっと好きだったから」  なんと告白されたのです。  ぼくと湊也君は両思いだったのです。  このままレイプ事件の事はなかった事にしたいと思います。 ※誤字脱字があったらすみません

この愛のすべて

高嗣水清太
BL
 「妊娠しています」  そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。  俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。 ※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。  両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。

処理中です...