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「やだ寝不足?」
「いや、昨日遅くまでゲームしてただけ」
「体調きつくなったら言ってね」
土曜日。
佐倉と駅で待ち合わせてから大学へ向かう。
付属校だけど、中高と少し離れている。
だからパンフレットでは見たことあるけど、実際に入るのは初めてだからちょっと楽しみ。文化祭の規模も中高と違うだろし。
制服とは雰囲気の違う佐倉に、今日の格好かわいいねと言うと、アオくんは満点だね、と逆に褒められた。
特にお洒落でもなんでもないと思うんだけど、と考えてると、服装じゃなくてね、と突っ込まれる。
女子の服装に簡単に口を出したのは普通はナシだったんだろうか。
電車に揺られながら欠伸をすると心配された。
言えない、結構今日が楽しみであんまり寝れなかったなんて。
文化祭楽しみだよ、佐倉と回るのも楽しみだよ、でもさ、皇輝が昨日さ、やっぱ文化祭の後泊まりにおいでよなんていう連絡してくるものだから、そりゃ色々考えちゃうじゃんか。
「コーキも宜しくね、あたしたちの虫除け」
「近い」
「やだ彼女に冷たい」
「フリだろ、碧と近過ぎる」
「あっやきもちだあ」
佐倉がいきいきしている。うーん皇輝にここまで出来る女子は貴重。普通の女子なら緊張してこんなけらけら笑えない。
「心配してるの?前も言ったけど、あたしアオくんは妹だと思ってるから」
「せめて弟にしろ」
「妹?そんな話してんの?」
「だってコーキ、あたしがアオくんとふたりで話すの心配するんだもん、そんな疚しいことないのに。ねえ?」
妹とは、とも思うけど、まあ人魚姫とお姫様の関係性なら妹だな、うん、確かにかわいがってもらってはいた。
今でいえば皇輝の言う通りせめて弟、なんだけど、佐倉を見てれば妹も弟も扱いが変わらなさそうな気はする。
そんな佐倉が楽しそうだから、まあいいか、と思っちゃう。別にどっちでもいいや。
「何で文化祭?」
「言い訳になるでしょ」
「?」
「さんにんで回る言い訳」
「は?」
「あたしはアオくんとふたりでもいいんだけど、コーキは嫌でしょ?でもさんにんで水族館~とか遊園地~なんて行ったら何で?ってなるじゃん?」
「なるかな?」
「大学の文化祭なら進学の為ねって納得してもらえるでしょ、さんにんで行っても」
そうかあ?と怪訝そうな顔をする皇輝。
僕はなんとなくわかる気はする。
もし知り合いに見られたりしたら言い訳に確かに困る気がする。
友達同士が遊んでるのに突撃する空気読めない彼女か、デートをしてるのに空気読めない男友達が突撃した絵面になっちゃうもんね。
もっと前からさんにんで話してたりしてればそういう関係だと思われたかもしれないけど、今のとこ学校内では美男美女カップル爆誕としか出回ってないのだ。
「今日は何か見たいとかあるの?」
「うん、昼過ぎに先輩がバンドするっていうからそれ見たくて」
「バンド!かっこいー」
「でしょでしょ、後はぶらぶらしようかなって。結構屋台、毎年美味しいらしいよ」
「へえ」
「こういうのとかお祭りって食べるのメインになっちゃうじゃない」
「だねえ」
「太っちゃうから半分こしようね♡」
「そしたら色々食べれるよね」
女子の会話か。妹扱いでもやっぱり間違ってないな、と我ながら思った。
早速行くわよ~と近くの屋台へ物色に連れていかれる。
賑やかな会場は素直に楽しみだ。祭りのような人混みも許せる。
「皇輝、たこ焼き」
「食うのか」
「さんにんでひとつでいいわね」
「うん、青のり抜きでお願いします」
「アオくん流石女の子の気持ちわかるう」
「イケメンのお兄さん両手に花だねえ」
「いえ、食べきれない分の処理係です」
真顔でたこ焼きを受け取った皇輝は、次はクレープもいいわね~、アイスも食べたい!と盛り上がる僕たちを見て溜息を吐いた。
◇◇◇
「お腹いっぱいになっちゃった」
「それ俺の台詞なんだけど」
「男の子はたくさん食べてくれて助かる~」
「ふたりして一口二口で満足しやがって」
「口悪~い」
きゃっきゃと喜ぶ佐倉が段々子供に見えてきた。妹はどっちだ。
でもこうやって弄られてる皇輝が貴重で、僕もついにやにやしながら止めずに見ちゃう。
「もうそろそろ始まらねえの」
「んー、もうちょっとかな、ねえ、構内はいっていいみたいだし、ちょっと中みてみない?どんな感じか」
「あ、僕プール見たい!」
「言うと思った~」
途中途中で先輩らしきひとに道を訊ねながら色々見て回る。
大学って広い。
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「僕ここ入ろ~」
「決めるのはっや」
「プールだったら何でもいいのか」
「うん!」
ちゃんと泳ぐひと以外は立ち入り禁止!とかだったらどうしよ、と思ってたから、逆に緩くて助かる、これだけで今日来た価値がある。
僕の大学生活もプール三昧出来そうだ。
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